「これ以上、早くならないでくれ」
しまむら(最寄りのスーパー)のレジ。
どんどんと追い抜かれていく。他のレジに並んでいたのは2,3人。1人しか並んでいなかった場所を選んだはずなのに、このレジだけが時空を彷徨っている。待たなくても良いはずの時間を、ただじっと堪えている。
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昨日、マッチングアプリで知り合った人の誘いで読書会に行った。
普段なら行かないイベントでも、新しい出会いのワクワク感。なんだか楽しそうに映る。
誰かが「未来予測」に関する本を紹介したことを皮切りに、2030年どうなって欲しい?というトピックを話した。
どうやら一部の予測では夢のような世界が実現されていることになっている。空飛ぶ車が空を飛んでる、とか、東京からパリまで30分で到着するとか、映画の内容がカスタマイズされて人それぞれに沿った展開になるんだとか。
未来の話は想像力を掻き立てられる話題だ。
そんな夢のある話をしている最中、僕の口から出た言葉は
「これ以上、早くならないで欲しい」
という言葉だった。自分でもその言葉に体重が乗っていたことが感じられるくらい、強く放った言葉だった。
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その翌日に出会ったのが、しまむらのレジ。
還暦を迎えそうなTさんがレジを打つ。なぜか何度も、ことあるごとに品数を数えている。
ほかのレジは、後から並んだ人すらも、レジを終えている。他に移ろうかと迷うけれど、自分のレジ番はすぐそこ。でも、Tさんは繰り返しバーコードを読みとる、品数を数える、を繰り返す。品数が増えるに従い、その時間も増えていく。
それを見て、僕は苛立つ。
移動しようか、いや待っておこう、でもやっぱり、いやいや一度決めたら貫こうじゃないか。
ようやく自分の番が来た。
Tさんは手際がすこぶる悪い。遅いのに丁寧に、お肉にはポリ袋をセットしようとする。
「袋は自分でするので、先にレジ打ってください」
その瞬間、Tさんは途端に機敏になって、かごに中へポリ袋を雑に入れられた。ピキリ。ストレスがぐんぐんと膨らみ、脳みその血管が膨張していく。
「そのスピードが出せるなら、レジ打ちで発揮しなさいよ。」とは到底言えず、念力で飛ばす。そして、待ちに待った会計。
ここまで来ると、達成感すらある。
Tさん「お待たせして、ごめんなさいね。」
その言葉を待っていた。一気に自分の中で膨らんでいたストレスが萎んでいくのを感じた。ぷしゅう、気が抜けた。
そうか、気の抜ける友だちって、溜め込まなくて良いから「気の抜ける」友だちなんだな。そんなことに気づいたのは、しまむらのレジ物語。
でもさ、もう少し早くても良いんじゃないかな。
平成の人間はそう思ったよ。
「これ以上、早くならないでくれ。」
昭和の人たちは平成になったとき、同じことを思ったのかもしれない。
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