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第519回 イスカ(3回目)からイスカ継なぎ工法

①http://www.kenchikuyogo.com/101-i/001-isuka.htmより引用の「イスカ継なぎ」

   イスカといえば、クチバシがぐいちについているクチバシが特徴的な野鳥です。漢字表記も「交喙」「鶍」「交嘴鳥」いずれもクチバシが交差している漢字があてがわれています。私たちには何か違う感覚を受けるけど、当のイスカにとっては、自分たちの生活に合わせて、クチバシがこうなったのだから、ほっておいて欲しいってなるけど、人間にとっては木になる存在です。

②クチバシがぐいちなイスカ(体長約17㌢)

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   建築の世界では、この野鳥イスカの食い違ったクチバシからヒントを得て①のような「イスカ継なぎ」の工法が出来上がり、今でも木造住宅の手法の一つとされています。左右互い違いに切ることを「イスカに切る」と言いますが、昔の人は鳥をよく見ていたのだということがわかります。この継ぎ方は見え掛かりが綺麗なので、主に竿縁などの造作材に使われます。日本ならではの工法です。

③http://bulbulmt.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-7e30.htmlより引用のイスカのつがい(左が♀右が♂)

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   野鳥のイスカは冬鳥として飛来し、針葉樹林の樹木に生息します。非繁殖期は、数羽から10数羽の群れで行動します。群れの中には、まれにナキイスカが混じっていることがあります。イスカは③のようにオスが赤っぽい体色をして、メスはほかの野鳥と同じように地味な体色です。でもやっぱり、イスカのメスも、④のナキイスカもクチバシはぐい違って生えています。

④よく似ているナキイスカ(体長約15㌢)

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   ナキイスカは稀ですが、イスカが十数羽の小群で群れてやっとくるときに、混じってやってきます。イスカ自体がムクドリみたいに集団性の高い野鳥です。ムクドリのような大群ではないにしろ、群れて行動するので外に出て仕事をする大工さんたちにとって、昔はもっと多くの群れできていてイスカのクチバシを見たのでしょう。昔の人はよくこれだけの野鳥を観ていたことです。

イスカの幼鳥はクチバシはハスになってない(左が幼鳥)

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   イスカのクチバシの形には訳があります。人間がイスカのクチバシを見て、大工仕事の工法を見いだしたように、イスカのクチバシにも理由があり、松の実を主食とするイスカにとって、松ぼっくりから実を取り出すには打って付けの工具のようなものです。また⑤のように、親から口移しで餌を受け取る幼鳥のクチバシは歪んでいません。

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