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第1865回 鶯一文字を解く

①http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-a8d5.htmlより引用のウグイスの漢字とイラスト

   私はウグイスは世界的にも有名な野鳥だと思います。やっぱり「ホーホケキョ」の鳴き声だけで誰もがウグイスだとわかるなんて素晴らしいことだと思います。その『鶯』の漢字は中国でコウライウグイスを指していた漢字をウグイスに当てたと言います。また漢字表記も『鶯』と難しい漢字です。ほとんどの人が読むことが出来ます。それだけウグイスが有名であることが伺えます。この『鶯』の漢字にも色んな話があり、よく似た漢字に『栄』『営』『労』『螢』があります。これらの漢字の基になっている感じがあります。それは【熒】です。読みは松明(たいまつ)で囲む光の環を表す形声文字といいます。『栄(エイ)』は、花が木いっぱいに華やかに咲いている様子を表す形声文字。『営(エイ)』は、周囲を松明でとりまいた陣屋を表す形声文字。『労(ロウ)』は、炎のように力を出し尽くして働く様子を表す形声文字。『螢(ケイ)』は、光の環を出す螢を表す形声文字というように考えれは、春を告げる『鶯(オウ)』は、首の周りが明るい色の鶯を表す形声文字となり、鶯がさえずることを鶯囀(オウテン)、鶯の鳴き声や美しい歌を鶯語や鶯歌といいます。つまり『鶯』は今まで寒くて暗かった冬から暖かくて明るい印象の春を告げるまさに季節の代名詞の野鳥と言えます。

②-1.https://blog.goo.ne.jp/kimy0729/e/5ac640e7aed8e5c4f188d1debbad2ed8より引用の日本画の「梅に鶯」

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②-2.https://ganref.jp/m/jata925/portfolios/photo_detail/2646792より引用の竹にウグイス

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②-3.https://blog.goo.ne.jp/kimy0729/e/5ac640e7aed8e5c4f188d1debbad2ed8より引用の梅にウグイス(体長約16㌢ オス)

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   ②-1.の日本画のように『梅に鶯』という言葉が古くから日本に浸透していました。しかし『梅に鶯』という言葉が日本の文献に現れる前に、中国の文献には使われていました。その梅は飛鳥時代に中国から来ました。それ以前は②-2.のように『竹に鶯』だったようです。ウグイスは藪の鳥なので、梅の木に止まることは少ないですし、梅の花が咲く頃、葉はまだ茂ってはいません。葉のない木にウグイスが止まることは少ないですし、ウグイスの主食たる虫も現れていません。梅の咲き始めとウグイスの初音が一致する地域は、中部地方の山間部と東北地方北部のみです。梅の咲き始めの方が二週間ほど早い地域が多いそうです。

②-4.https://fukusaisin.com/3842.htmlより引用の本当は梅にメジロ(体長約12㌢)

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   梅の開花時期は長いので、梅が散らないうちにウグイスの初音が聞ける地域は多いです。しかし一般的にいって、梅の花を求めてやってくるのは②-3.のウグイスではなく、甘いもの好きの②-4.のメジロだと思います。ウグイスメジロを取り間違える要素は、大きく通る声で鳴くウグイスは、いつもは藪中です。それに対して、梅の花が綻ぶ頃に民家の庭にやって来るメジロ。春先はまだまだ寒く、家の中で遠くでさえずるウグイスの声が、庭先の梅の花の蜜を吸っていますメジロと間違えても無理はありません。昔は今のように双眼鏡やカメラもなく、肉眼だけが頼りでしたから。

③-1.http://www.hegurinosato.sakura.ne.jp/tori_htm/uguisu_hanafuda.htmより引用の花札の「梅に鶯」

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③-2.http://blog.livedoor.jp/rh1-manyo/archives/56403811.htmlより引用の梅にコウライウグイス(体長約26㌢)

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   事実とは違いますのになぜ「梅に鶯」なのか色んな説が今も昔もあるようなので紹介致します。     ⑴  風情説(②-1.参照)→どちらも春を告げる代表的なもので、風情がある取り合わせだから。
⑵  メジロ説→いわゆる鶯色の鳥で、梅の花にも良く来るメジロと間違えた。
⑶  花札説(③-1.参照)→花札の「梅に鶯」で描かれた札から。                                                                    ⑷  コウライウグイス説→日本の文献で『梅に鶯』が登場する前に、中国の文献に登場しているので
中国の文献を引用した。
(中国では『鶯』とはコウライウグイスのこと)
中国から『梅に鶯』という言葉が来て、風情もあり貴族の間に広まり、花札で一般市民にも広まった。黄鸝、黄鶯、黄鳥、などの別名があり、日本ではウグイスと区別して言う場合に過去にはチョウセンウグイス、カラウグイスの名もありましたが今は使われません。同じ『鶯』でも違います。

④-1.https://www.sozailab.jp/sozai/detail/29094/より引用のつがいのウグイスのイラスト

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④-2.https://www.google.co.jp/amp/s/musashi60.exblog.jp/amp/20918195/より引用のウグイスの子育て

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   冒頭にもご紹介致しましたように、ウグイスは公の場でさえずることは珍しく、殆どが藪中でさえずるという習性があります。その為、つがいの視野がネットにはありません。④-1.は残念ながらつがいのイラストです。ウグイスがさえずるのは、縄張り確保と同時に求愛です。ウグイスは何故か、一夫多妻と言われています。繁殖は巣作り、子育てなどすべてメスが単独で行います。当初オスが近づくとメスは追い払います。しかし今度は別のオスの縄張りで行わうといいます。それがつまり、オスは同時に一夫多妻となり、メスは連続的な一妻多夫という繁殖形態になります。自分の縄張り内に複数のメスに営巣させるということですが、一番沢山のメスを構えたウグイスは六羽という記録があるようです。卵の重さは1.6g、産卵数は五個くらいです。オスのウグイスは、繁殖期になると、冬より20%体重が増加させます。鳴管の肥大、首回りの皮膚の肥厚などによります。来る春の繁殖期に備えての体力確保だと思います。

⑤-1.https://gimon-sukkiri.jp/warbler-lessercuckoo/より引用のホトトギス(体長約28㌢)

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⑤-2.Twitterより引用のウグイスに托卵したホトトギス

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   さえずりも日本ではオオルリコマドリと並んで三鳴鳥に定められている世界的にも有名で、また繁殖に於いては一夫多妻とされるウグイス。そんなウグイスに天敵はいるのでしょうか。鷹やカラスに襲われないために藪中に隠遁するウグイス。それでも天敵はいるのです。その天敵は初夏5月になれば飛来する、同じく藪中に生息する⑤-1.のホトトギスです。このホトトギスウグイス同様に有名な野鳥です。ききなしの「特許許可局」はやはりどなたもご存知だと思いますし「目には青葉山ほととぎす初鰹」という江戸中期の俳人山口素堂の俳句は余りにも有名で、また俳人正岡子規の名前にもなり文学の面からしても有名です。そんなホトトギスウグイスの天敵です。同じ生息地にウグイスがいるので、その営巣に⑤-2.のように托卵するのです。これはウグイスにとってたまったものではありません。いくら五個卵を産んでもホトトギスに排除され、挙げ句の果てにはウグイスホトトギスのヒナを育てて、自分の子孫は残せないのです。この托卵はウグイスホトトギスの古くからの歴史から、始まっているのです。

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