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第1821回 平家物語に現れる鳥 トラツグミ

①https://intojapanwaraku.com/culture/9579/より引用の平家物語に現れる妖怪鵺

   「平家物語」の一の谷の決戦の『鵯越えの逆落とし』は直接ヒヨドリが現れて、物語に関わり、どうこうしようというものではありませんが、なるほどと納得するような物語の内容でした。同じ「平家物語」でも今回のトラツグミは妖怪に化身した『鵺(ぬえ)』なる妖怪が物語の本体であります。『鵺』は「平家物語」だけではなく「源平盛衰記」にも現れる妖怪です。①のタイトル画のように猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇で、胴体は虎の場合もあります。虎が焦点です。

②https://ec.tagboat.com/eccube_jp/html/products/detail.php?product_id=54853より引用の顔が猫の鵺

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   また、②の日本画のように『源平盛衰記』では背が虎で足が狸、尾は狐になっています。更には室町時代には頭が猫で胴は鶏のものが出現したと書かれた資料もあるようです。描写される容姿は、北東の寅(虎)、南東の巳(蛇)、南西の申(猿)、北西の乾(犬と猪)といった干支を表す獣の合成という考えもあります。「ヒョーヒョー」という鳥のトラツグミの声に似た大変に気味の悪い声で鳴いたとされます。平安時代後期に出現ですが平安時代でも二条天皇の時代、近衛天皇の時代、後白河天皇の時代、鳥羽天皇の時代等諸説伝わっています。

③https://japanmystery.com/hyogo/nisiwaki.htmlより引用の長明寺に祀られる鵺の像

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   平安時代末期、近衛天皇の住む御所の清涼殿に、毎晩のように黒煙と共に不気味な鳴き声が響き渡り、二条天皇がこれに恐怖し、遂に天皇は病の身となってしまいました。弓の達人である源頼政に怪物退治を命じ、頼政が山鳥の尾で作った尖り矢を射ると、悲鳴と共に鵺が二条城の北方あたりに落下し、すかさず猪早太が取り押さえてとどめを差しました。その時宮廷の上空には、郭公の鳴き声が二声三声聞こえ、静けさが戻り、天皇の体調も忽ちにして回復し、頼政は天皇から褒美に獅子王という刀を承り、鵺は船鴨川に流されました。

④https://www.birdfan.net/2020/01/17/76406/より引用のトラツグミ(体長約30㌢)

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   実の名前もトラツグミと漢字表記にしても「虎鶫」と『虎』が付くので非常に怖い姿の野鳥と思いきや、ただ単に虎模様の⑤の写真のような可愛らしい顔で、ツグミの仲間故に尾羽を振りながら歩く姿がなんとも言えません。たださえずりが夜行性なので、夜に笛の音のような声で「ヒー、ヒョー」と鳴くのが、この鳥を知らない人にとっては不気味な鳴き声かも知れません。鳴き声から「平家物語」だけではなく、現代でも横溝正史原作の映画『悪霊島』でのキャッチフレーズの「鵺の鳴く夜は恐ろしい」とはこのことなのです。

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