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初めて恋した創作物のキャラクターは『空色勾玉』の稚羽矢かもしれない

幼少期、運動神経が悪く、人付き合いも下手くそだった私は、家にこもって本を読み続けていた。

お気に入りの本に関しては、何度も何度も読み返していたので、一度読んだら再読しない派の姉から「そんなに何回も読んで、面白いの?」と不思議がられたものだ。

そんな読み返しまくった本の一つが、荻原規子さんの記念すべきデビュー作『空色勾玉』だ。

思い返せば、あれは恋だったのかもしれない。

この作品は、本当にたくさんの人に愛されている名作なので、いまさら私が作品について解説する必要はないと思う。

ただ、全く作品についてご存じない方のため、Amazonから引用してきたあらすじだけ掲載しておきたい。

〈輝 (かぐ)〉の大御神の御子と、
〈闇 (くら)〉の氏族とが激しく争う戦乱の世。
〈輝〉の御子に憧れる十五歳の村娘狭也(さや)は、
訪れた〈闇〉の氏族に、空色の勾玉を手渡される。
それは鎮めの玉、
狭也が〈闇〉の巫女姫であるしるし…。
自分の運命を受け入れられず、
〈輝の宮〉に身を寄せた狭也を待っていたのは、
深い絶望と、不思議な出会いだった。
宮の奥深くに縛められていた少年稚羽矢(ちはや)は
すべてのものを滅ぼすという
〈大蛇の剣 (おろちのつるぎ)〉の主だったのだ…。

当時の私にこの設定と物語が、ザクーーーーっと刺さった。

特に、主人公の一人である少年「稚羽矢(ちはや)」が刺さりまくった。

初めて主人公の少女と出会う時に巫女の姿をしているところも、
純真無垢で天然キャラなところも、
そのくせトンデモナイ力を秘めているところも、
一族の中で一人だけ異端な存在という設定も、

全部、当時の私にグサグサ刺さりまくったのだ。

結果、私は何度も何度も本を読み返すだけでは飽き足らず、頭の中で物語のシーンを勝手にアニメ化して想像したり、授業中にノートの片隅に稚羽矢のルックスを想像して落書きしたりしていた。

こうやって当時の自分の行動や感情を思い返すと、これって今でいう創作上の人物にガチ恋してる状態だったのかも。と、ふと思い至ったのだ。

もし、あの時代にSNSやpixivが存在していたとしたら・・・
もっと歯止めのきかない状態になっていたかもしれない。

「許し」について考えるたび思い出す物語

そんな『空色勾玉』の中に、忘れられない設定(?)がある。

物語中に登場する輝の一族には「許す」という概念がない。
そのため「あやまる」ということが通じない。

輝の一族に仕える巫女はミスをすると、自らの命を絶ってしまう。
なぜなら「すいませんでした」が通用しないからだ。


大人になって、折に触れてこの設定を思い出してしまう。


謝罪を受け入れ、許すことが出来ない。
贖罪のために命を絶つ世界。


私自身、他人を上手に許すことが出来ないタイプだ。なんなら、自分自身を許すことも出来ない時がある。

どうすれば許すことが出来るんだろう、と考える時、いつも『空色勾玉』のことが脳裏をよぎるのだ。

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