ひー

どこにでもいる成人女性です

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    わたしの書いた記事のなかで、投稿コンテストで賞をいただいたもの、「note公式マガジン」や「今日の注目記事」に選んでいただいたもの、サポートを贈っていただいたものをまとめています。

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    ライブレポや感想など。大宮セブン多め。

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故郷にJリーグのクラブチームがあって、本当によかった

二十四歳の春、わたしは突然帰省した。 新卒で三年働いた職場の、いろいろなハラスメントのストレスから、かちかちに強張り、思うように動かなくなってしまった身体と、心をかかえて、逃げ延びるように、東京から佐賀へと帰ってきた。 飛行機を降りて、空港の建物を出た瞬間に、暗がりにへたりこんで、わんわん泣いた。 無職になってしまったし、結婚を考えていた同い年の恋人も、ひとり暮らしのアパートの部屋も、そのまま置いてきてしまった。 これからわたしは、どうなるんだろう。 目の前に広がる夜の佐賀平

    • 小さなことでくよくよしたい

      くよくよしている。 本当に小さなことで、くよくよしている。 詳しい事情は割愛するけれど、小学三年生の息子が、悔し泣きしながら下校してきた。 話を聞くと、同級生から紙製の棒で頭をペシペシと叩かれることが頻繁にあり、やめて、と言ってもやめてもらえず、もういやだ、という気持ちが爆発したようだった。 かといって、相手の子のことが大嫌いかといえば、そういうわけでもないらしく、ペシペシ叩かれないときは、いっしょに話していて楽しくもあるんだという。 その話を聞いて考える。 わたしは、ど

      • 気づくひと、気づかないひと

        先日、草むしりをした。 子どもの通う小学校の保護者活動で、各学年のクラス役員と協力者が集まり、総勢二十人ほどで、にぎやかに校庭の草をむしった。 子どもが入学するまでは、保護者の集まりは、上辺だけの関係で、陰険で、派閥やいじめがあり、ギスギスしたものにちがいないと怯えていたけれど、いざ飛び込んでみると、あっけないほどに杞憂だった。 上辺だけの関係であることには変わりないけれど「今日も暑いですね」とか「給食の青椒肉絲は美味しいらしいですよ」とか、適当な日常会話を楽しんで、深入り

        • 「演じる」という読書体験を

          学校図書館でボランティアをしています。 普段は、読み聞かせや、貸出返却のお手伝いをしているのですが、ボランティア仲間との雑談のなかで「なんか劇とかやってみたくない?」からの「おっ、やってみちゃう?」という話になり、どういうわけか学校側からも許可が下り、あれよあれよという間に、劇を「やってみちゃう」ことになりました。 子どもたちのいない時間帯の図書室を、即席の会議室にして話し合った結果、宮沢賢治の「やまなし」という作品を、ペープサートにして上演することにしました。 学校司書の

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          アラフォー、のびしろしかないわ

          三十六歳。アラフォーである。 年齢の近い友だちと、もうアラサーだから、とか、アラサーになって体力落ちたわ、とか自虐混じりにキャッキャとしているうちに、あっという間にアラフォーである。 親戚のちびっこには、こないだまで赤ちゃんだったのに、もう小学生なんだね、子どもの成長は早いね、なんて話をするけれど、そんなことはなかった。子どもに限ったことではなく、大人だって早かったのだ。 こないだ、ゆるキャン△の劇場版を観た。 (ここからちょっとだけ映画内容に触れます) テレビアニメ本編で

          アラフォー、のびしろしかないわ

          冷や汗をかくほどの贈りもの

          35×2のちいさな黒い粒。 教室にみっしりと並んだそれは、初夏のデラウェアみたいに瑞々しくて、まんまるで、そして、何を考えているのかわからない。 本の表紙を抱いて、黒板を背にして立つと、いつだって、どんどん舌が乾いていくのに、脇の下はじっとりと湿っていく。しまった、またグレーのシャツを着てきてしまった。 それでもニッと笑って、今日はこの本を読みます、とはりきった声を出すと、なになに、とか、あっ、それ読んだことあるー、という声になって返ってくる。 左手を軸にして、視線の重みを支

          冷や汗をかくほどの贈りもの

          芸能人が羨ましくなるとき

          芸能人が羨ましくなるときがある。 彼や彼女が、くちびるからぽろりと落とした何気ない日常の言葉ひとつでも、ファンの子たちは、きらめく宝石粒のように拾い上げ、そっと手のひらから胸ポケットへとうつし、明日を生きるお守りにしてくれるのだ。 存在するだけで愛され、称賛され、そして、誰かの力になることができる。 いいなあ、いいなあ、羨ましいなあ。 でも、大人だから、本当は知っている。 彼らを覆っている愛は、ときに気まぐれで、ときに脆く、儚くもあること。 愛されるためには、愛され続ける

          芸能人が羨ましくなるとき

          夏の日の「平和集会」という学校行事から学んだこと

          わたしは、九州の出身です。 わたしが通っていた地域の小学校では、毎年夏休みのまっただなかに「平和集会」という集会が開かれる特別な登校日があり、いつもこんがりと日焼けした顔で通っていました。 その日は、ひさしぶりにクラスメイトたちに会えるわくわくした気持ちと、もうひとつ、ちょっと憂うつな気持ちもありました。 平和集会の日は、毎年、児童玄関のホールの壁に、写真パネルが掲示されていました。 心への配慮の進んだいまでは、考えられないことかもしれませんが、二十年前の当時は、空襲の炎で

          夏の日の「平和集会」という学校行事から学んだこと

          「ちいかわ」が好きなんです

          ちいかわ、ご存知でしょうか。 ナガノさんという方が描かれた、ネット連載のまんがのタイトルです。 ちなみに「ちいかわ」とは「なんか小さくてかわいいやつ」の略だったりします。 そのまんがでは、 まっしろいクマのような「ちいかわ」、ねこの「ハチワレ」、破天荒な「うさぎ」という、なんかちいさくてかわいいキャラクターたちの日常が描かれているのですが、決して、かわいいだけじゃない。 ときにブラックで、ときにホラー。 そしてときには鬱展開のようなテイストさえ垣間見せてくることがあります。

          「ちいかわ」が好きなんです

          踏んだり蹴ったり祝われたり

          もうすぐ日付が変わる。 日付が変わったら、お誕生日だな。 と、思いながら、子どもたちと布団を並べた和室でぼんやりしていると、家が、地面ごとぐわんぐわん揺れた。なんだこれ。 おおきな円を描くような揺れ。 なにもない部屋なので、なにかが倒れてくることはないけれど、子どもたちの身体に覆いかぶさるようにして、収束を待つ。 家族が流行り病になって、わたしたちは濃厚接触者になって、さらに地震まで来るか。 不安になるとか心配をするとか、そういうの全部通り越してイライラしてしまった。 こ

          踏んだり蹴ったり祝われたり

          病める時も健やかなる時も

          突然、濃厚接触者になりまして。 ひとつの病気が、流行り病と呼ばれるようになってから、いつかはこんな日がやってくるかもしれないと、頭の片隅で、うっすら考え続けてはいたけれど。 まさか、本当にやってくるなんて。 同居家族のひとりが感染。 家庭内隔離での療養は骨が折れた。 骨だけじゃない。心も折れた。 スプレーボトルを片手に、共用のドアノブやトイレは、一日に何度も消毒した。 体調にあわせた食事を用意して、マスクをつけてドアの前まで配膳。ひきあげてはトレイごと丸洗い。それが朝と

          病める時も健やかなる時も

          啓蟄にまつわるエトセトラ

          虫がうんうん飛び回っている。 玄関の引き戸を開けるなり、ちっちゃな羽虫が、うんうん、うんうん、うんうん。 こうなるのが嫌で、玄関にちいさなフックを取り付けて、市販の虫よけアイテムを吊るしているのに、まるでイヤミのようにその周りをうんうんしている。うんうんすな。 夫とドライブをしているとき、近頃、本当ににあったかくなったよね、という流れから、なんとなく、ごきぶりの話になった。 もし、家のなかにごきぶりが出たら、それを倒した人に対して、一匹につき千円の賞金を出してはどうだろう、

          啓蟄にまつわるエトセトラ

          ちいさな暮らしを脅かすもの

          わたしの暮らしはちいさい。 ほとんど、ひとつの町の中で完結していて、一日に関わる人の数も、少ない。 十人、十五人いくか、いかないかぐらい。 関心事も、今日の晩ごはんとか、家族の健康状態とか、週末に行きたいところとか、春になって急激に増えてきた庭の雑草対策とか、SnowManがおそ松さんの実写映画をやって、十四松が佐久間くんでトド松がラウールくんなのハマり役すぎるな、ということとか。 わたしの世界は、わたしの両手が届く範囲で時を進めていて、いまのところ、何事もなく平和で、た

          ちいさな暮らしを脅かすもの

          息子の歯抜け顔に思うこと

          息子の歯がぽろぽろと抜けている。 最初の一本目がぐらつきはじめたときには、てんやわんやだった。 息子は、泣いたり、おびえたり。 わたしたちは、様子をみたり、説明したり、体験談を語ったり、なだめすかしたり。 そのうち、いつまで経っても抜けないので、歯医者に行ってきれいに抜いてもらったほうがいいのではないかと悩んだりしたけれど、そうこうしているうちに、なにかの拍子に、ぽろりと抜けた。 ティッシュペーパーの上に転がった乳歯は、驚くほどちいさかった。 このちいさな歯が、何日も、何年も

          息子の歯抜け顔に思うこと

          僕たちはきっと本の中に還る

          ひさしぶりに本を読みました。 一ヶ月、だいたい十冊前後読んでいるのですが、毎日毎日ちょっとずつ読んでいるわけではなく、読むときには連続して、何冊も並行して、身体をずぶずぶと沈めるように読む。 読まないときは、ぱったりと読まない。 そんなペースになることが多いです。 最近は、ぱったりと読まない周期に入っていたので、活字を目で追うこと、紙のページをめくること、そして、そこから湧き出てくる感覚を味わうことが、とても新鮮でした。 本の中は、いつも、しんとしている。 それは、どんな

          僕たちはきっと本の中に還る

          わたしは勝手に救われている

          集合住宅の共用スペースを掃く。 うちの前の廊下から、階段、エントランス。 埃、誰かの髪の毛、ちいさな虫の死骸。 掃除はいいよなあ、と思う。 (志村けんさんのいいよなおじさんの口調で) 手を動かせば動かしただけ、世界が変わる。足元がワントーン明るい。自己有用感。 最近は、ままならないことばかり。 泣きっ面にハチからさらに、9、10、11。 そのたびに、大丈夫、大丈夫って、なんとかバランスを保ってはいるけれど、そのうち、ころりと落っこちてしまいそうで。 落っこちたら落っこちた

          わたしは勝手に救われている