見出し画像

エビングハウスの忘却曲線、知ってる?ほんとに?


エビングハウスの忘却曲線とは

こんにちは、塾講師をしていますひいろです。

記憶のために復習の効率性を語るときに「エビングハウスの忘却曲線」というものが引き合いに出されがちです。

エビングハウスの忘却曲線についてご存じでしょうか。

ヘルマン・エビングハウスはドイツの心理学者。150年ほど前に活躍した人物で、記憶や認知について大きな貢献を残した学者です。

彼の功績の中で一番有名なのが下のグラフ「エビングハウスの忘却曲線」です。


オリジナルのアップロード者は英語版ウィキペディアのIcezさん - Originally from en.wikipedia; description page is/was here., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2214107による

横軸が時間(日数)を、縦軸が記憶を表すこのグラフ。
「復習しないと、一日で半分以上忘れちゃうよ」
みたいな論調で語られるときに使われがちです。

学校の先生が生徒たちに復習をさせるために「覚えたことを忘れたくなかったら毎日復習してね。一日で50%も忘れちゃうんだから」なんてことを言っているのを聞いたことはありますか?

ですがそれは正確な表現ではないのです。

特徴その① 記憶量を表していない

20分後には、節約率が58%であった。
1時間後には、節約率が44%であった。
約9時間後には、節約率は35%であった。
1日後には、節約率が34%であった。
2日後には、節約率が27%であった。
6日後には、節約率が25%であった。
1ヶ月後には、節約率が21%であった。

Wikipedia - 忘却曲線 の頁より

20分後には58%に? え、そんなに記憶って消えるの速いの?
と思うのは早合点。
節約率」という言葉をご覧ください。
これは「一度完璧に覚えた言葉を、再び覚えなおすのにどれだけの時間(回数)を節約できたか」を表す数値です。

例えば、ある単語を10分かけて完全に覚えたとします。
20分後に再び覚えなおすと約4.2分で覚えられた場合、もともと10分かかっていたところを5.8分短縮できたということになります。
この場合の節約率は5.8÷10で0.58、すなわち58%ということになります。

つまりこの曲線は記憶がどれくらい消えてしまうのかをあらわしているのではなく、時間がたつと覚えなおすのにコストがかかるよということを表しているのです。

特徴その② 無意味つづりを覚える実験

エビングハウスは実験に際して、既存の単語を使用するとすでにある知識の多寡によって記憶の速度に差が出ると考えたようです。
そのため実験は無意味つづりの暗記によって行われました。
「子音+母音+子音」の三文字。たとえばhic,lor,fegといった実在しない言葉です。

意味のないものを覚えるとなると基本的には丸暗記が主体になるでしょう。リズムや語呂合わせ、既存の単語との類似を見つけるなどの暗記法もあるかもしれません。
が、「意味を覚える」という暗記において一番大切な部分をそぎ落としているのです。
これが実際の暗記や学習にどれほど意味のあるものなのかは議論の余地があると思います。

まとめ

エビングハウスの実験の特徴は
・忘れるのではなく覚えなおすのに必要な時間が長くなる
・無意味つづりの単語を覚える実験だった

ということです。

もちろん、学習において復習は大事であることは間違いありません。
ですが「一日で半分忘れちゃう」なんて言葉をうのみにするのも考え物です。

何かを覚えるのならば「なるべく忘れにくい」「忘れたときに思い出せる」ような覚え方をするのが良いと思います。
意味ある記憶を心がけていきたいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?