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競争しない生き方

街中を歩いていれば、たくさんの飲食店を見かけるが、たまにすごいマニアックなお店がある。

この前、中華、イタリアン、和食、タイ料理、インド料理などのお店がひしめく中で、パクチー専門店なるものを見つけた。

看板を見ると、すべての料理にパクチーが入っているとのこと。

あまりにも範囲を狭め過ぎではないか、やっていけるのかと思ったが、むしろこれは正しい戦略なのかもしれない。


昔『植物はなぜ動かないのか』(稲垣栄洋)という本を読んだことがあった。この本は植物の生存戦略について述べたものだ。

タイトル通り、植物は動けないので、自身の環境を受けいれて、そこで工夫を重ねるしかない。

例えば、被子植物は、昆虫を呼び寄せるために美しい花を咲かせる。昆虫は、花粉を食べにやってくる、いわば植物にとっては害虫だったが、花粉をほかの花に運んでくれるありがたい存在でもある。

そこで、植物は花を魅力的に発達させ、甘い蜜を用意し、昆虫をおびき寄せるようになった。昆虫は甘い蜜を手に入れ、植物は確実かつ効率よく昆虫に花粉を運ばせる。まさにWinWinの関係。

植物はほかにも、自分の子孫を残すたまにさまざまな戦略を取っているのだが、特に面白かったのは、植物の基本戦略である。

すべての生物はナンバー1である。そしてすべての生物がオンリー1なのである。

すべての生物はすこしずつ居場所をずらして、ナンバー1になれる場所を探している。ほかの生物とはげしく競争して、居場所を勝ち取るより、争わずに居場所を探したほうがいいというのが植物のやり方なのだ。

例としてあげられるのが、日本タンポポと西洋タンポポの違い。

日本タンポポは「春にしか咲かない」が、西洋タンポポは「一年中咲き誇る」。これだけ見ると、西洋タンポポのほうが優勢のように見えるが、これは日本タンポポの戦略なのだ。

日本タンポポは春に咲いて、さっさと種子を飛ばすと、種だけ残して地面から上は自ら枯れてしまう。(中略)夏が近づくと、ほかの植物が枝葉を伸ばし、生い茂る。そんなところで、ちいさなタンポポが頑張っても、光は当たらず生きていくことができない。そこで、強い植物との無駄な争いを避けて、地面の下でやり過ごすのである。

日本タンポポは、ライバルが多い夏場を避けて、春に咲くことによって種を残す戦略を取っている。

一方、西洋タンポポは、ライバルが多い夏の間も花を咲かそうとさせるため、競争に勝てずに枯れてしまい、生き延びることができない。そこで、ほかの植物が生えないような都会の道端で花を咲かせるようになったということらしい。


このように、下手に競争しないことが植物の基本戦略だ。その方が生き延びる可能性が断然高いし、無用なストレスを受けないで済みそう。

冒頭の話に戻るけど、タイ料理で勝負するとライバルが多く、お店を経営していくのは難しい。けど、タイ料理の中でもパクチーという素材に絞れば、ライバルは少なくなる(たぶん)。

お店を続けるというのは、ほかにもいろいろな要素が必要になると思うけど、パクチー専門店はそこまで激しい競争に巻き込まれる心配はなさそうだ(あくまで想像)。そこで一番になれば、生き残れる。

この本にも書いてあったけど、条件を細かく絞り込めば、ナンバー1になれるチャンスは誰にでもある。

日本一おいしいタイ料理屋になるのは至難の業だけど、パクチー専門店なら全国ナンバー1の可能性はグッと広がる。たとえ全国で1位になれなくても、東京で1位とか台東区で1位とか範囲を狭めていけば、ナンバー1になりやすい。

これだけ多くの生物が自然界で共存しているのは、それぞれの狭い居場所を見つけて、1番になっているから。

この法則は、人にもそのままあてはまりそう。

それにしても、パクチーが好きな人って結構いるのだろうか。ぼくはかなり苦手だ。



#エッセイ #コラム #日記 #植物 #コンテンツ会議

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