【インタビュー】メキシコ在住の織物作家 村井由美子さんにお聞きしました

メキシコのサン・ミゲル・デ・アジェンデに住んで12年。現地の伝統的な織物の素材と織り方を受け継ぎつつ、更に自由な発想から生み出される村井さんの作品には、いろいろな文化が混ざり合ったような、独特の魅力があります。

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ー 元々織物を作ることが好きだったんですか?

いえ。元々旅行が好きで、メキシコに行った時も、3ヶ月時間があったので、転々とするよりはどこかで長期間滞在して何かしようと思っていたんです。そこにたまたま織物教室があったのでやってみました。

ー メキシコは織物が盛んなのですか?

先住民の民族衣装といった織物や刺繍は有名なのですが、私が織っているものはスペインの植民地となった後に使われるようになった、「高機(たかはた)」という織り機を使うものなんです。

羊毛は比較的新しい...と言っても500年ぐらい前にメキシコにやってきた、植民地時代以降の文化なんです。

織物は、機械が大きく重労働なので、基本的には男性の仕事だったんです。でも、今は後継者があまりいなかったり、ここ(サン・ミゲル・デ・アジェンデ)は「外国人に対しても教えるよ」という自由な雰囲気もあったりして、私も教えてもらうことができました。

元々は男性が馬に乗る時に使うポンチョや、大事な時に着る一張羅のための織物だったのですが、今はそういったものを着る人があまりいないので、tapete(タペテ)という、敷物など実用的なものが多く作られています。

ちなみに私の織物は、毛織物を意味する「tapete」と羊毛を意味する「lana」を合わせてTapetelana(タペテラナ)と名付けました。

アノニム・ギャラリー(長野県茅野市)にて展示されていた村井さんの作品

ー メキシコに行く前は、日本で何をしていたんですか?

東京にあるシェアハウスを運営している会社で働いてました。住むところも探していて、住み込みで働けるというのもあって。

2年ぐらい働いてお金を貯めてから、会社を辞めてメキシコに行きました。

ー その時はもう海外に住みたいと思っていたんですか?

いえいえ。最初は1年間旅行をする予定で、色々な国に行きたいと思っていたのですが、都合で3ヶ月しか時間がなくなってしまったので、3ヶ月だったら1つの国 に長くいようと思ったんです。

メキシコは以前行ったことがあって、良い所だったのでもう一度行きたいなと思って。

ー そこで織物に出会ったんですね!会社を辞めて、旅行の後はどうしようか考えていたんですか?

いえ、全然考えていなかったです。でも、現地で織物に出会ったとき、ビビっと来たんですよね。3ヶ月の滞在期間が終わって、織物教室の先生に「また戻ってきます!」と言いました。

その後2年くらいかかってしまったのですが、またお金を貯めて、再び織物を勉強するためにメキシコに行きました。

ー その時はもう、長く住もうと思っていたんですか?

いえ、その時は1年滞在できるぐらいの金額しか持っていなかったので、長く住むとも思っていなかったし、先のことは何も考えていなかったんです。

でも、そこで過ごしているうちに、自分で探していたわけでもないのに機織り機を譲ってくれる人が現れたり、それを置く場所が見つかったりと、1週間ぐらいの間に突然色々なことが決まって、そのまま...早12年が経ちました。笑

ー そうなんですね!!村井さんの織物には、いろいろなモチーフが描かれていますが、元々絵を描くのが好きだったとか...?

そうですね。メキシコに初めて旅行した時に、太陽の光がすごく強くて、風景がすべて色鮮やかに見えて、ここで絵を描きたいなと思ったんです。街中がとてもカラフルで、色使いもすごく印象的でした。

メキシコはスペインの植民地だったので、その面影が残っているんです。石畳の道に、石の建物が建っていて、その点はヨーロッパと似ているのですが、実際のヨーロッパの街にはそんなに色がないんです。

メキシコではみんな、建物を色とりどにに塗っていて、それも職人がやっているわけじゃなくて、自分たちで自分の家を塗っているんです。マスキングテープも養生テープも貼ったりしないし、すごく自由な感じで。

ここが私の住んでいるサン・ミゲル・デ・アジェンデです。

ー わあ、素敵ですね!メキシコの生活についてもお聞きしたいのですが、普段どんなものを食べているんですか?

主食はトウモロコシの粉をひいて作ったトルティージャで、香辛料とトマトなどを使ったサルサソースを塗って、卵やお肉やお魚や豆などを挟んで毎食食べます。

サボテンも茹でたり焼いたりしてよく食べます。ウチワサボテンというのですが、すんごく美味しいですよ!酸味がちょっとあってコリコリしててネバネバしています。

メキシコは、午後3時~4時ぐらいに家族が皆集まって、その日一番のご飯として、メインをバーンと食べるんですが、それ以外はあまり食べないんです。

甘いパンやフルーツを間食で食べたり、若者は夜タコスの屋台に行ったりするけど、日本のように朝昼晩ちゃんと定食みたいな食事はしないんです。

ー 和食も食べるんですか?物価や家賃なんかは日本と比べてどうですか?

米とかは向こうでも手に入るので、ご飯を炊いて味噌汁も作りますね。鮭とかは日本の方が美味しいですけど。

家賃は日本と同じでピンキリですが、食料品はすごく安いですね。

ー 季節はどんな感じなんですか?

春夏秋冬プラス、雨季と乾季があります。乾季は11月から5月で、雨が殆ど降りません。5月が1年で一番暑いですね。6月から雨が降って、ちょっと涼しくなります。

5月は日差しが強すぎて外に出れないほどですが、空気が乾燥しているので、カラっとしていて日本より過ごしやすいです。

気温は33~34度くらいになりますが、扇風機はこの夏2回しか使わなかったですね。洗濯物は、干し終わる頃に、最初に干したものが乾いているんですよ!

ー メキシコの中でも、サン・ミゲル・デ・アジェンデに行ってみようと思ったのはなぜですか?

初めてのメキシコ旅行では南の方に行ったので、2回目は違うところに行こうかなと思って。

サン・ミゲル・デ・アジェンデは、どちらかと言うと小さい街ですが、ガイドブックには載っていて、メキシコシティからもそんなに遠くないし、行ったことがなかったので気になっていたんです。

ー たとえば、ご両親が旅行好きとか、そういうことが影響したりしていますか?

そういうわけではないですね 。両親も、メキシコに再び行く時は、「また行くの?」みたいな感じだったけど、やめろと言われたことはないですね。

一度、母と姉がメキシコに遊びに来たことがあって、その時に結構いいところだという印象を受けたみたいで、それからは特に何も言われることはないですね。

ー オリジナルのキャラクターを、織物で表現していますよね。このキャラクターのイラストを描いたり、織物以外のグッズを作ったりとかもするんですか?

織物でしか作らないんです。織る時は縦糸に下書きをするのですが、絵よりも織って出来上がったもののほうが可愛いんですよ!自分で言うけど。笑

キャラクターや模様の表現は、私の織っている糸の太さや縦糸の幅、隙間や角度によって、ある程度制限されるんです。

この糸でこの幅でだとこの角度にしかならないとか、糸と糸の間が5ミリだったら5ミリより細かい模様はできないし......そういう細かい制限の中で描いたキャラクターは、手書きなどで描く絵よりもほっこりした感じのもになるんです。

ー どの作品が特に人気とかありますか?

見てくれる人それぞれですけど、生き物系はやっぱり目を引くみたいですね。

いつも面白いなと思うのは、メキシコの友達に見せると「すごく日本っぽいね」って言われて、日本の方には「やっぱりメキシコって感じだね」って言われるんです。

東京で展示したときも、今年はすごくシックねって言われたり、別の方にはカラフルねって言われたり...

ー 日本とメキシコと、現地の伝統と村井さんの感性が組み合わさっているので、確かに見る人によって様々な印象になりそうですね。

今年新しい機織り機を買ったのですが、今までのものとはちょっと違う織り方ができるようになったんです。例えばこれは、パッチワークみたいに見えるけれど、全部つながっていて...

普通の折り方と組み合わせてできるかな?と思っていたのですが...やってみたらできました!

ー おもしろいですね!伝統なのに新しいというか。遠くから見ると染めた1枚の布に見えますね。

私は伝統とかを背負っていない分、自由に作ることができるのかもしれません。

12年続けていてできるようになったことも、もちろんあります。元々織物をこんなに続けるとも思ってはいなかったのですが。

ー メキシコにはいつ戻るんですか?

1月の終わりぐらいに戻る予定です。メキシコの冬は寒いので、私はいつもその時期に日本に帰って来るんです。

12月と1月が一番寒くて、2月になると年にもよるけど半袖で大丈夫な時もあります。

ー 一番寒い時は何度ぐらいになるんですか?

マイナスにはなります。家が石でできているので、すごく冷えるしなかなか温まらないんです。高地で砂漠気候だから、朝晩の冷え込みが激しいうえに、暖房の設備がないのが辛いですね。

私はメキシコの冬は一度しか越したことがないんです。毛布を5枚ぐらい巻いて、重い~とか言いながら寒さをしのいでいましたけど。

ー 日本のほうがもっと気温は低い時もありますが、暖房設備が整っていますもんね。

サン・ミゲル・デ・アジェンデは標高2000メートルぐらいあるのですが、耐えられなような寒さは1~2週間、長くても3週間なので、地元の人は慣れているんです。その時だけ我慢すればいいから。メキシコシティとかは都市なので、もうちょっと暖房設備はあると思うのですが。

お風呂もシャワーだけで、湯船がないんです。やはり乾燥していて水が希少なので、浸かるっていう発想がないようで...日本に帰ってきてお風呂に浸かると、やっぱりいいなって思います。

ー 今は織物だけをやって生活しているのですか?

最初の頃はバイトもしていましたが、ある年から「あれバイトしなくてもいけるぞ!?」という感じになって、ここ数年は織物だけをやっています。

でも、日本で同じように生活をしていこうと思ったら厳しいですね。今は12年間メキシコで出来たリズムが合っているなという感じがしています。

ただ、先のことは分からないし、特に何も決めていないんです。突然嫌になって帰ってくるかもしれないし。何か起きたらその時に考えると思います。

現地の友達と「今年も一年が早かった」という話をしながら今年を振り返ったとき、毎年同じように過ごしている気もするけど、今年は新しい機織り機も買ったし、引越しもしたし、たくさん出会いもあったし、何も変わってないようでいて、ちゃんと良い一年過ごせたなと思いました。

メキシコの人ってすごくポジティブだから、一緒にいるといつも前向きな気持ちでいられるんです。

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クルクル変わる表情がとても素敵な村井さん。日本人の細やかさとメキシコ人の明るさを併せ持ったような魅力は、作品にもそのまま現れていて、眺めていると懐かしいような、でも初めて見るような、温かくて不思議な気持ちになります。

村井由美子(むらい ゆみこ)
毛織物作家。メキシコのサン・ミゲルデ・アジェンデにて、12年間現地の伝統的織物tapete(タペテ)を織り続ける。自身のブランドTapetetalna(タペテラナ)は、糸を洗うところから、敷物やクッションカバーやバッグなどに仕立てるまでの工程を全て一人で制作。毎年冬季には、東京、青森、長野などで個展を開催。
【Tapetelana】
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http://tapetelana.com/
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インタビュー

2018年8月から始めたインタビュー記事です。これから、あらゆるジャンルの方々にお話を伺っていきます。
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