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❝南知多ゲストハウスほどほど❞経営、小杉昌幸さんにお聞きしました

小杉さんは、愛知県の南知多町にあるゲストハウスをご夫婦で経営していらっしゃいます。新型コロナウイルスは宿泊業界にも大きな影響をもたらしましたが、その中で小杉さんがどんなふうに過ごしていたのかお聞きしました。

ー秋になってから観光業はまた状況が変わってきた感じがしますが、ほどほどさんの様子はどうですか?

10月はややコロナが落ち着いた感じがあって、お客さんは前年比の5~6割くらいになっています。

ー 今年の状況を、時系列で伺ってもいいですか?

1月末頃、武漢が封鎖されたというニュースを見たときは完全に他人事で、中国は大変だね、日本は関係ないけど気を付けようねと言っていました。

実は僕ら、2月の中旬に台湾旅行を予定していたんです。その頃は、日本でも新型コロナウイルスの危険性が話題になり始めていて、仲の良いゲストさんたちにも「行って大丈夫?」と心配はされつつ、何とか行ってくることができました。

その2~3週間後、日本から台湾への便もどんどん減っていったので、旅行に行けたのはぎりぎりのタイミングでした。

ー その後、ほどほどさんの予約状況はどうでしたか?

3月は前年並みでした。ただ、週末はキャンセルが多くて、SNSで「空きが出ました」と書くとすぐ埋まるのですが、またキャンセルになって...この繰り返しで予約の管理が本当に大変でした。そして、3月末に志村けんさんが亡くなってから空気がガラッと変わりました。

ー それみんな言うんですよね!先日取材したライブハウスの方も言っていました。

僕らもそれまではどこか他人事だったのですが、「あれ、これは本当にやばいウイルスなのかな」という気持ちになりました。

志村けんさんのことがあって、4月1日から「当面休館にします」とSNSにアップするゲストハウスもすごく増えた印象があります。

その頃は給付金などについては、まだ情報がなかったので、うちも、コロナ対策を徹底して人数を減らしながら営業すべきなのか、完全に休館するのか、どうしたらいいんだろうとすごく悩みました。

今年、知多半島の桜がすごく綺麗だったんですよ。雨もあまり降らなかったので、長い間咲き続けていて。でも自分の脳内フィルターで、サクラのピンクが灰色に見えていましたね。

宿の方針を決めるにあたって情報収集しなきゃと思ってネットを開いても、コロナに対するネガティブな情報があふれていて、すごく精神的にまいってしまいました。

ー そうですよね。。。そんな情報ばかりでしたね。

いろいろ考えたのですが、結局4月6日頃、とりあえず5月末までは休館と決めて「当面の間休館します」という情報を出しました。

ー 休館中はどうしていたんですか?

最初は落ち着かなかったのですが、意外にこの選択は良かったとだんだん思うようになりました。3月はとにかく予約の管理がものすごく大変だったので。

うちのお客さんはリピーターの方も多いので、気を遣ってくれるんですけど、「(行くかやめるか)どうしたらいいですか」と聞かれることもよくあったんですね。

う~ん、それは自分には決められないし、腹をくくって来てもらうか、心配ならキャンセルしてもらうかしかないしなあと思うこともあって。

休館と決めたら、そういった点で悩むこともなくなったので、それからは Facebook もあまり見ないようにして、5月下旬までのんびり生活していたんです。

午前中2時間だけは、持続化給付金や愛知県独自の給付金などについて勉強していましたが、午後からは散歩やサイクリングに行ったりもしていました。やはり、持続化給付金があったことで精神的にすごく楽になりました。

僕たちは田舎の一軒家を借りているのですが、家賃も都会に比べたらかなり安いですし、光熱費なんかも一般の家庭とそんなに変わらないと思います。しかも大家さんに「今お客さんを入れていなくて家賃を払うのが難しい状況なんです」という手紙を送ったら、 「家を守ってくれているだけでありがたいので、家賃は払えるだけでいいですよ」と言ってもらえて、ありがたかったですね。

都会だと家賃も高いし、大きな施設だと人件費もかかりますしね。うちは、奥さんと2人で回しているので人件費もかからないし。奥さんは昼間は別の旅館で働いているのですが。

よく泊まりに来ていただくゲストさんからも心配してもらいました。「今は行けないけど長崎のカステラを送ります」とか「高山のお菓子詰め合わせ送ります」とか、そんな気遣いや応援グッズを頂いて、人って温かいなって改めて思いました。

あと、うちの奥さんの両親が近くに住んでいるんですが、今までは宿が忙しくてなかなか行けなかったけど、お義父さんがやっている畑を週に1日ぐらい手伝いに行ったりして、今までよりコミュニケーションが取れるようなりました。

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ー 小杉さんは、ご出身はどちらでしたっけ?

出身は石川県金沢市なんです。奥さんが名古屋出身だったのですが、ご両親が南知多に移住して南知多が実家になったので、自分は半分マスオさんみたいな感じでこっちにいます。

コロナの状況になって思うのは、田舎暮らしで本当に良かったということです。食べ物には困らないですよね。新鮮な野菜もすぐ買えますし、農家さんに頂くこともあります。

自転車で近所を散策したりもできますし、改めて南知多にもこんなところがあったんだと知ったりしました。宿を始めて今年で8年目なんですが、一カ月半も休みにしたことなんてなかったので、自分達の頭を空にしてリセットする時間にもなりました。

ー コロナの影響は、ほんとうに人によりますね。規模が大きいほど大変かもしれませんね。

6月からは週末限定で、7月以降は平日も開けるようになりました。お盆の一週間は、第二波が来たので事前にご予約をされた方限定にして、直前の予約はストップしていたのですが、お盆以外は8月も通常営業をしましたね。定員は減らしているのですが。

6月に宿を開ける時は、ちょっと夏休みが終わるような感覚もありました。笑

ー 今お部屋はどんなふうに使っているんですか?

これまで定員は1日8人だったところを6人にしています。予約の時に、今まで通り相部屋でよければ一泊3000円で、個室が良ければ一泊4000円という金額で、相部屋率を減らしてやっています。こういう状況なんで、無理をしてもしょうがないですしね。

ー 今はお客さんの動きは通常に戻りつつあるんですか?

常連さんのFacebookなどを見ていると、9月に入ってからは、みんな結構動き出してる感じはしました。うちはGo Toキャンペーンに参加していないので、それでもよければ来てもらえたらと思っていますが。

ー Go Toキャンペーンに登録するのは大変なのですか?

僕らも登録しようと思えばできますし、お客さんとしてはGo Toに登録してくれているほうがありがたいですよね。ただ、うちは今一軒家に最大6人が宿泊するという形態で、新規のお客さんをどんどん積極的に受け入れたいという感じでもないので、登録はしていません。

ニュースでも言われていますが、やはり宿泊費の高い宿ほと予約が多いみたいですね。ゲストハウスは元々の宿泊費が安いので、Go Toキャンペーンに登録した他のゲストハウスも、あまり予約は増えていないみたいです。

宿泊業界界全体で見ると、やはりゲストハウスは厳しいですね。外国人のお客さんも来なくなってしまったし、オリンピックも延期になってしまったし。自分でも名前を知っているゲストハウスが、もうやめてしまうという話もちょいちょい聞きますし。

ー ほどほどさんは、サイズがちょうどよかったという感じですね。

あまりに小さすぎると影響を受けにくいんだなとも思いました。うちに来てくれるリピーターさんは、安いから泊まるっていうよりは、うちが面白いから行きたいという人が多くて、ゲストさんにも恵まれているなと改めて思いました。

あと、僕らは宿にこもっていてもお客さんが来てくれるので、ここで交流ができるということが、自分たちにとって精神的にもすごくいいなと思っています。

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ー オンラインで何かやったりしましたか?

元々和歌山のあるゲストハウスが「オンライン宿泊」というものをやっていて、それに参加したらすごく面白かったので、自分もやってみました。

「オンライン宿泊」とは、僕のスマホで宿をぐるっと案内してチェックインした気分になってもらい、その後オンライン飲み会をして、終わった翌朝「皆さん昨日はどうでしたか」という5分くらいの動画のリンクを送ってチェックアウトした気分になってもらうという感じです。

4~5月くらいまではみんな飛びついてくれたんですよ。オンライン飲み会は週1回、6月はそのうちの1回にオンライン宿泊を組み込んでいました。でもみんなだんだん飽きてきて、笑。今ではオンライン飲み会とオンライン宿泊は、月1回ずつになりました。

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ー そういえば、宿をやっていることで周りから「都会からお客さん来るんでしょう?」といった不安の声を聞いたりしましたか?実際に田舎の宿でそういう反応をされたという話を聞いたのですが。

うちに対しては全然なかったですよ。南知多や周辺の離島って元々名古屋からかなり観光客が来るところなんですよね。東京の人が千葉の海にプチ旅行にくみたいな感覚ですよね。ゴールデンウィークの頃も結構お客さんは来ていましたし。

その頃役場では「来ないで」と言っていたけれど、地元の人は「いやお客さん来てもらわないと困るし」と言っている方もいましたね。

もちろん、個人によって考え方も違うとは思いますが、南知多はおおらかなほうなんじゃないかと思います。自分としては、その点は精神的に楽です。

ほとんど観光客がいないところでひっそりゲストハウスをやっていて、近所の方に言われて閉めたという人の話も聞きましたが。

ー 感染症対策をした上で、もし感染者が出てしまっても仕方ないですよね。もちろん、ずっと閉めていたら可能性はゼロですが、ずっと閉めているわけにもいかないですし。

そうなんですよ。感染症対策にも限界がありますしね。今も定員は減らしていますけど、「もしも」にこだわりすぎてもなと思うので、旅人さんとの交流は、対策をしながら楽しめたらと思います。

ー 私もまたお邪魔したいです!

ぜひお越しください。お待ちしています!

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南知多ゲストハウスほどほど
https://hodohodo.jimdofree.com/


いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。