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「探しものラン」とは、走りながら行う大喜利大会である。

私の所属するPANETSCLUBのランニング部で今月27日に開催される、「探しものラン」というオンラインイベントに参加しようと思っている。

ランニング部所属といっても、私はろくにランニングをしない、言わば「腰かけ部員」だ。ひと月に1キロも走ればいい方で、もっと走らない月もある。日によってやる気の波が激しい性格ということもあり、ランニング部で頻繁に開催されるイベントにも、毎回参加しているわけではない。気が向いた時にふらっと現れて、ちゃっかり参加させてもらっている。こんないいかげんでいいのかと自問自答することもあるが、今のところ特に誰にも怒られていないので、まぁ大丈夫なのだろう。

「探しものラン」は、これまで2回も開催されていたようだが、ちょうどやる気が最低レベルまで落ち込んでいた時期と重なり、参加したことはなかった。基本ルールはこんな感じらしい。

参加者がいくつかのチームに分けられ、事前に発表されていた複数の「お題」を、各々ランニングしながら探す
・探しものを見つけたらその場で写真に撮り、得点ゲットとなる
・お題は「公衆電話」や「雪だるま」といった、頑張れば見つけられそうなものが中心で、難易度によって配点が異なる
・最終的にチーム全員の合計点を集計し、最も得点が高かったチームが優勝

正直、「チーム戦で得点を競う」というところがちょっと引っかかった。もちろん、ただお題を見つけて終わりとするよりも、得点を競った方がゲーム性が出て盛り上がる。しかし何しろ私は、注意力散漫でそそっかしいくせに、人の足を引っ張るのが大の苦手なのだ。学生時代、部活やアルバイトでミスを繰り返す度に、仲間から幾度となくため息をつかれたことを思い出す。混雑する某パスタ屋でメロンソーダを客の洋服にぶちまけてしまった時の、アルバイト仲間の「こいつマジか」といった視線が忘れられない。あの時のように、私だけ探しものがちっとも見つけられなかったり、開始早々にスマホを川に落としてゲームに参加できなかったりして、チームメイトから「こいつマジか」と思われるのは嫌だ。もういっそ、イベントには参加せず1人で楽しむべきなのだろうか。

ややネガティブな気持ちを抱えつつ、「探しものラン」について話し合っているZoom会議をのぞいてみた。すると、すでに参加経験のあるメンバーが、過去2回のイベントの感想を興奮気味に語っていた。皆口々に、「お題をコンプリートした○○さんは神」「まさかあんな手があるとは」みたいなことを、思い出し笑い混じりに話している。この光景にはなんだか見覚えがある。あれだ、ゲームボーイの初代ポケモンが発売された翌日の、小学校の教室だ。いい大人が「探しもの」で大盛り上がりしている様子を目の当たりにし、微笑ましく思うと同時に、ちょっと羨ましくなってきた。

メンバー達の話を聞いているうちに私は、「探しものラン」において、「得点を競う」という要素があまり重視されていないことに気が付いた。確かによく考えれば、「大人が血眼になって雪だるまを探す光景」なんて、もうそれ自体が面白い。本気で取り組むのはチームを勝利に導くためではなく、きっとその方が面白いからなのだろう。

さらに、そしてこのゲームに「絶対的な強者」は存在しないということにも気が付いた。住んでいる地域や体力、頭脳など、高得点を取るために有利に働く要素は少なからずあるだろう。しかし、それらがなくてもやり方次第で十分にカバーできそうだ。私が思うに、「探しものラン」の攻略法は、3つのパターンがある。

①我こそは孤高のランナー!とにかく足で稼ぐ戦法

脚力に自信がある人向けの、パワープレイ。長距離を走りまくることで、他の人よりも広い範囲で探しものができる。難しいことは考えず、走って走って、お題をどんどん回収!

②採点者を唸らせろ!大喜利戦法

頭がやわらかい人向けの、アイデアプレイ。「四葉のクローバー」のような難しいお題も、葉っぱを1枚足せば無事クリアできる。お題が見当たらなければ、自分で作ればいいじゃない!

③手堅く勝利!ガチガチ予習戦法

真面目で用意周到な人向けの、堅実プレイ。お題が発表されると同時に最短でコンプリートできそうなルートをしっかり練っておいて、当日はその通りに走るだけ。無事全てのお題をクリアしたら、不敵な笑みで「計画通り」とつぶやこう!


頭の中でしょうもないダジャレを思いついてはニヤニヤしたり、誰もいないリビングで謎の踊りを踊ったりと、日頃からふざけることが大好きな私には、どう考えても②の大喜利戦法がベストだろう。しかも幼い頃に「マジカルバナナ」というクイズ番組が大流行していたおかげで、連想ゲームの英才教育を受けてきた世代だ。負ける気がしない。いつの間にか、「チームの足を引っ張ったらどうしよう」という不安は、完全に消えていた。どうやってふざけ倒してやろう。わたしが目指すのはもはや高得点ではない。いかに採点者をニヤッとさせられるかだ。

子供の頃から、ドロケイや人生ゲームといった「人と競ったり、勝敗を決める遊び」が苦手だった。それなのに、今こんなにも心がメラメラと燃えているのはなぜだろう。おそらく「探しものラン」には、ルールがきっちりと決まっているゲームと違って、その人に合った戦い方ができる自由さがあるからだろう。

決戦は6月27日。おふざけのウォーミングアップとして、軒下に変な顔のてるてる坊主でもぶらさげようかと企んでいる。

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