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「自責思考」は二つある。誤った理解で落とし穴に嵌るな。

経営者やHR責任者と話していて良く出てくる、「他責思考人材」に関する悩み。

「どうしたら採用を避けられるのか」「採用してしまった場合、どう対処すべきなのか」。皆さんもきっと、他責思考の人に悩まされた経験はあるでしょう。

セルソースの行動規範でも、
ノーマル思考:他責思考、いつも誰かが悪い。
〇セルソース思考:自責思考、自分ならどうする。

という形で自責思考を是、としています。

ですが、この「自責思考」という言葉の定義、皆さんは如何でしょうか。僕は昨年、この定義に疑問を持ち、自分の整理が間違っていたことに気が付きました。

ここで自分に生まれた「新しい理解」は必ずしも一般共通理解と同じではないと思い、本日のnote記事にて綴らせていただきます。

「あれ、自分の理解間違ってる?」

2023年4月、とあるイベントを通じて僕は「自責・他責という言葉の理解に誤り、若しくは改善余地があるのでは?」と悟ることになります。

当時、セルソースのとあるメンバーが日々必死に業務に取り組み、度重なるトラブルにも全て自分事として対応していたのですが、とある事件にて心を痛め、大きく落ち込んでしまいました。

その事実を知った僕は、土曜日でしたが直ぐに手紙を書いて送り、翌営業日には社長との面談もアレンジし、二人で面談をしました。

その時、数々の温かい言葉と共に、社長が伝えた言葉が

「セルソースは自責思考を規範としているけど、Aさんは自責思考が強すぎる。なんでもかんでも抱えてしまうと、潰れてしまう。そこまで抱えなくたっていい」

でした。僕も全く同じ思いだったので自分の手紙にも似たようなことを書いていましたが、客観的にこの言葉を聞いて、僕はこう思いました。

『・・・ん?でも行動規範として推奨しているものが「過ぎたるは及ばざるが如し」的な感じなのだとしたら、「程度」という追加要素が出現し、行動規範として100点ではなくないか?』

その人は確実に「自分に関係の無いものまで抱え込みすぎ」で、このアドバイスが適切なのは間違いなく、このまま面談を終了しました(このAさんは今もセルソースで全力で働いてくれています!)

「他責」よりも「自責」の方が絶対いいし、自責は推奨したい。でも、その程度が過ぎると潰れてしまう・・・。基本的に「規範」は常に(セルソースとして)正しいものであるべきだから、何かがオカシイはず・・・。

そんなことを思いながら、解決策が見出せぬまま、7か月が過ぎました。

「自責思考は二つ種類がある」

2023年12月頭、クリアソン新宿さんが主宰する「人事合宿」に呼んでいただきました。

そして、この合宿の講師が株式会社人材研究所代表の曽和利光さんでした。

その曽和さんに「他責思考」について相談をしたところ、以下のコメントが返ってきました。

「リクルートでは、他責思考人材"しか"採用しませんでした。少なくとも、自分がやっていた時はそうです」

リクルート出身の母を持つ私は、これを聞いて「うわ出たよ、リクルート。やっぱやべー会社だ(笑)」と瞬時に反応してしまったのですが、実は意味合いが違いました。彼の説明は続きます。

「自責・他責」には二つ種類があります。「原因」と「解決」。つまり、「この問題の原因を作ったのは俺だ」という自責と、「この問題を解決するのは俺だ」という自責です。

私は、図にするとこういうことだと理解しました。

私が「自責」と思っていたのは、どちらかというと「原因自責」の方でした。もっと言うと、この切り分けが出来ておらず、「自責思考」=「自分が解決"せねばならない"」という認識を持ってしまっていました。

この「責」という単語を「責務」、英語で言えば「Duty」のように捉えてしまっていたことで、とても重苦しいものにもなっていたんですね。

一方、「リクルートが他責人材しか取らなかった理由」は、問題や課題に対して「責任」を感じることよりも、「原因は何だろうが、俺がこれを解決するんだ」という「当事者意識」に重きを置いていたから、ということでした(変に自責思考が強いと、パフォーマンスの妨げにすらなる)。

SPIでいう「自責思考」「他責思考」が「原因」に紐づいたものであったことから、「他責人材しか取らない」という表現になったそうです。

よくよくセルソース思考を読み直してみると、ちゃんと「自分ならどうする」となっていて、「いつも自分が悪い」的な言葉ではありません。

「セルソース思考22」は自分も作成に思いきり関わっていた癖に、解像度がまだまだだな、と反省しました。

間違った「自責思考」が起こしたダイハツの問題

2023年の大ニュースとなったダイハツの不正。この調査報告書が12月20日にリリースされました。

こういった調査報告書は、「生きたケーススタディ」であり、どんな書籍よりも学びが多いので、必ず読むようにしています。

幾つか「直接的な原因」として分析されているアイテムがありますが、この106ページに気になる記載がありました。

また、ダイハツには、自分の抱える問題は他者に頼ることなく自分の責任として解決する風潮があった模様であり、こうした風潮が認証試験の問題は現場レベルで解決をするしかないという思考プロセスを後押ししたと考えられる。

まさに、この「原因自責思考」ですね。これを突き詰めると「抱え込み」に繋がり、抱え込んだ上で「解決出来ない、でも解決しなければ」となると、最後は不正しか道はありません。

ダイハツに「自責思考」という言葉そのものがあったかはわかりませんが、「自分の課題・問題は自分で解決しろ」的な考えが正当化される文化は確実にあったのだろう、と思います。

メンタルダウンにもつながる「原因自責思考」

この原因自責思考は、「自分のことは自分でやる」という表現に出来てしまうので、何となく良い感じがします。

ですが、こういう「正しく、良いように見えるフレーズ」は実は滅茶苦茶危険です。「そうではない」とか「それが正しくない時もある」ことを主張し、理解・納得せしめるのに凄まじい労力を要するからです。

特にこれが顕著に出るのが、一定以上の高給で入社した中途社員

入社直後は何でも聞けますが、結果を求められる時期になると、一気に質問がしづらくなります。更に、結果が出る前に問題が発生してしまうと、それを相談する勇気を持てない人は抱え込んでしまいます。

一度抱え込んだら、もう言えない。課題・問題が膨れ上がり、隠せないレベルになる。それに時間を取られるから、成果も出ない。後ろめたさがあるから、メンバーとのコミュニケーションも億劫になる・・・。

こういう形でつながりが無くなり、塞ぎ込み、メンタルダウンになってしまう優秀な中途社員が多いと聞きますし、とても理解しえます。

では、どうするか。

ここまで、「原因自責思考だと問題が起きやすい」ということを解説しました。

では、「原因自責にはならないけど、解決自責」な社員を増やすにはどうしたらよいのでしょうか。

①行動規範に組み込み、口癖にする

まずはこの「自責・他責」を言語化する。その上で、行動規範に組み込み、そして「口癖」にする。ホモサピエンスは元来「身を守る」性質が強いので、そこまでやり切らないと、確実に求める人材は育ちません。

特に、この最後の「口癖」が物凄い重要だと思っていて、これこそがリクルートの強みだと理解しています。

そもそも、「自ら機会を創り出し機会によって自らを変えよ」という社訓が強すぎます。これ自体が「当事者意識の塊」であり、これがネームプレートにまで入っている時点で、完成です笑

そして、リクルートの人はすぐ「で、お前はどうしたいの」とか「WILLは何?」とか聞いてきます(うちの母親もそう笑)。

また、クリアソン新宿さんの「問うな、問われてる」も最高の合言葉だと思います。これも当事者意識を促す魔法のような言葉で、これをお互い言い合っていたら、そりゃ強いチーム出来るよな、と思いました。

②リーダーが「100%」実践する

超当たり前ですが、リーダーが実践しなくては何も始まりません。ですが、何事もこの「100%」というのが大事です。

メンバーは驚くほどリーダーの一挙手一投足を見ています。仮に「1%」でも「これはいいか」となったら、その時点で「およよ」となり、信任が薄れます。

勿論、これは「俺が責任を持つから、この解決、やってみて」ということでパスするのも全然OKです。ですが、周囲から見て「これお前の管掌だろ」と思われることを少しでも忌避したら、オシマイです。

③「口癖」をリーダーにもぶつけてもらえる組織にする

とはいえ、完璧超人じゃないんだから、100%は無理です。では、どうするか。忌避した瞬間に言ってもらえばいいのです。

つまり、リーダーが問題の解決に取り組んでいなかったり、後回しにしていたら、「あれ、細田さんはこの問題に対してどうしたいんでしたっけ?」と聞いてくれる人がいればいい。

僕はこの「フィードバック機構」が組織の健全性担保、パフォーマンス向上に何よりも重要だと思っていて、これをどう作るか、はまた別のnoteで書きたいと思いますが、「心理的安全性」もその一種です。

どうやったら、リーダー含む「全員」が指摘し合える組織に出来るか。是非考えてみてください。

おわりに

皆様の「自責」の理解は、僕と曽和さん、どちらに近かったでしょうか。

「社員数>問題・課題数」という会社は無いでしょう。「問題、課題に対して各自が当事者意識を持って能動的に取り組み、ガンガン解決されていく組織」を目指して思考を続けていますが、この「自責の定義」はひとつ重要なKeyではないか、と感じました。

引き続き、「ヒト」と「組織」について深く考えていきたいと思いますので、よろしくお願いします!

では、また次回お会いしましょう。

細田 薫


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