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#2 目指す世界。つくりたい未来。

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夢ではなく、目指す世界の話。

昨年12月に浜松でトークイベントに登壇させていただきました。「水曜日のヨル喫茶」というイベントで、若い人たちを中心に、おもしろいこと、新しいことに興味を持っている人が集まって、毎週テーマを変えてセッションしているのですが、自分から売り込んで宇宙の話をする機会をいただいたのです(本当にありがとうございます)。

▼ 水曜日のヨル喫茶
https://www.instagram.com/suiyoubinoyorukissa/

内容としては、そもそも宇宙ビジネスってなんだ?とか、浜松でやる意味、やれる可能性はあるのか?みたいなことと、永利は何をする気なのか?ということをお話ししたのですが、そこで一緒に登壇いただき、モデレーターのような役を担っていただいた方の言葉が印象的でした。

「ここがね、『夢』じゃなくて『目指す世界観』っていうのがいいんですよ」「目指す世界観と表現するということは、目標として捉えるということになりますからね(意訳含む)」

イベントで投影したスライド(※今はまた中身を練り直しています)

将来こうなっていたらいいなと妄想したあとに、それを夢物語で胸にしまっておくのか、実現しようと踠いてみるのか、その2つで全く違うと思います。もちろん、妄想を楽しむということも選択肢としてはありだと思いますし、小説や映画などのコンテンツという形でそれが昇華されることもあると思います。

でも、僕は実現しようと踠いてみたい。宇宙の話はどうしたってまだ夢物語の部分が大きいし、今このタイミングでは鼻で笑われる話にしか聞こえないかもしれない。何より、まだ何も達成していない、成し遂げていない自分が言っても、応援はされないかもしれない。だけど、声に出して、文字にすることに意味はあると思う。遠くにいる見知らぬ誰かの共感を呼べるかもしれないから。

言ったところで何にもならないかもしれないし、死ぬまでに実現できないかもしれない。だけど、うちに秘めたまま、その理想像とは違うことに挑戦し続けるのは、自分を誤魔化しているような気がする。

そんな綺麗事だけで生きているわけではないし、宇宙「ビジネス」なのだからお金にしていかないといけないことも分かっている。でも、目の前のこと、想像があまり外れなさそうな近い未来のことに焦点をあてすぎるのも違うのではないか。

バックキャスティング、SFプロトタイピングなんて言葉もビジネスの世界で使われるようになってきているのだから、もっと先の未来を考えて、実現しなさそう、鼻で笑われそうと思ってもそこを目指して、そのうえで、何から始めていくのか、それがお金になるのかを考えてみてはどうか。

30年後とか40年後、50年後の世界を考えようと思ったら、宇宙でなくても妄想にしかならないし、今を生きている自分たちからしたら想像もできなかったことがきっと実現しているのだから、嘘みたいな話でもぶち上げてしまったもの勝ちなんじゃないか。

だって今から50年前の日本は、セブン-イレブンの第一号店ができた年。前の大阪万博があってから数年しか経っていない。そのときの人からしたら今の生活なんて想像もつかないはず。スマホもなければ、VRゴーグルもない。まだスノウ・クラッシュの発売から20年ぐらい前なので、メタバースなんて言葉もない。

だけど、1974年といえば、「スペースコロニー」の構想がニューヨーク・タイムズ紙に掲載された年でもある。50年経った今でもスペースコロニーそのものは実現していないけど、国際宇宙ステーションは実現しているし、月近傍の宇宙ステーション「Gateway」や民間企業による宇宙ホテルなども実現に向けて構想が進んでいる。

スペースコロニーのイメージ ©NASA

昔からずっと、多くの人が未来の世界はどうなっているかを妄想し、その中で、それを本気で実現しようと思った一部の人が(ある意味ネジが外れている人が)、自分の人生をかけて実現しようと踠いた結果として、今は当たり前になっていることがいくつも生まれている。

だから、自分も50年後というレベルであっても、本当に自分が実現したいと思う世界、こうなってほしいと思う未来を言葉にし、絵に起こしていこうと思っている。妄想を夢に終わらせず、実現するべき目標として捉えるために。

、、、と、途中からポエミーになってしまいましたが、最近自分が本気で宇宙ビジネスに関わろうと思ったときに、今の宇宙ビジネスのあり方を見て思っていたことを綴りました。

技術の進歩や、ビジネスモデルとしての広がり、市場/ニーズとのつなぎ方が見出されてきたことなどがあり、宇宙ビジネスも本格的に「ビジネス」として捉えられるようになってきた今、他の業界と同じような評価のされ方をすることが増えていると感じます。

数年という時間の単位で、本当に実現するのか、ニーズはあってお金になるのか、確かに正しいことだとは思いつつも、現実的かどうかに寄ってきている、ちょっと近視眼的になってきていると思います。もっと長い目で見て、真に実現したいことを目指している途中に、今の挑戦があるという整理でもいいのではないかなと思っています。その挑戦の過程、ステップそれぞれがビジネスになることの説明がつきさえすれば。

そして、それをうまいことやっている人の1人がイーロン・マスクなのだと思います。彼は、火星移住計画にとどまらず、エウロパやエンケラドゥス、タイタンまでも進出することを見据えています。その過程にロケット開発があり、さまざまな受注を取り付けビジネスとして成立させようとしているわけです。なんならエウロパ・クリッパーというNASAの探査機の打上げロケットにSpaceXのFalcon Heavyが選定されるなど、着々と計画に向けて進んでいます。

エウロパに着陸する「Interplanetary Transport System」©SpaceX

巨額のお金を他のビジネスで生み出したイーロン・マスクだからこそ為せる業とも言えるのですが、ビジョンや構想は自分たちだって同じようなものを描いても良いはずです。そんなのできるわけないと言われても、その人達は挑戦しているわけではないし、他に挑戦している(少なくとも掲げている)企業はそう多くはないのではないかと思います。

だからこそ、自分たちらしさという点でも、今この時点からすれば遠い未来であったとしても、実現するのか分からなかったとしても、突き抜けたビジョンをおいて挑戦していくことに大きな意味があると思っています。

では何を目指すのか?「誰もが自由に星を行き来できる時代」

そういったわけで、「近い未来を見て何がお金になるか、実現できるか」というだけではなく(それも大事にしつつ)、もっと先のビジョンを打ち立てようと考えているのですが、出てきたのは

誰もが自由に星を行き来できる時代

という言葉でした。誰もが、というのは、宇宙飛行士や宇宙で働く人たち、もしくは富裕層など限られた人たちではなく、学生やサラリーマンなど、あらゆる人のことをイメージしています。旅行先、出張先、留学先などの「目的地」として、宇宙が当たり前に存在している時代を目指したいと思っています。

皆さまは「彼方のアストラ」という漫画をご存知でしょうか。週刊少年ジャンプで、「WITCH WATCH」という作品を現在連載中の篠原健太先生の過去作で、簡単に言えば「”宇宙版”十五少年漂流記」です。

2019年にはアニメ化もされ、同クールの覇権アニメとも呼ばれた作品です。

とあるきっかけで、遠く離れた宇宙で遭難してしまったケアード高校の生徒たちが、力をあわせて母星へと帰還するというお話で、ストーリーそのものもめちゃくちゃ面白いのですが、自分はこの世界観がとても好きなのです。

物語はケアード高校の課外学習として「惑星キャンプ」に出発するところから始まります。この「惑星キャンプ」、今この時代において到底考えられないですが、彼方のアストラの世界では、人が宇宙に行くことはすでに当たり前になっており、現代の空港のような雰囲気の宇宙港も存在しています。この世界でもさすがに高校生のみで宇宙船を操縦することはほぼ想定されていないようですが、メンバーの一人でIQ200の天才、ザック・ウォーカーは高校生にして宇宙船を操縦する免許を持っています。

アストラ号の模型 ©スタジオ雲雀/LARX(ラークス)/Lerche(ラルケ)

物語では、そのザックが、「アストラ号」と名付けられた宇宙船を操縦します。アストラ号はいわゆる「ハイパースペース・ジャンプ」が可能なエンジンを積み、一定期間生活ができる設備があるなど、とても高度な技術が使われているため、さすがにこれをそのまま再現するのは相当ハードルが高いです。

でも、僕はこの世界観にとてもワクワクするのです。自分が高校生のときに、仲間と一緒に宇宙船で惑星キャンプができる。考えただけでゾクゾクします。SFの世界に留めるのではなく、おもしろい空想の話として受け取るのではなく、本気で目指すことができないか。そう思っています。

航空宇宙工学も学んでいなくて、今まで宇宙の世界で生きてきていないやつが言っても笑われるだけだなと思ってなかなか言えなかったのですが、口に出してしまおうと思うようになりました。言葉にして、それを目指そうとしなければいつまでも実現はしないし、他の誰かがやってしまうかもしれないから。負けず嫌いなのかもしれないですが、この世界をつくるときに、自分は蚊帳の外でした、はイヤなんです。その輪に入っていたい。なんなら自分がつくりたい。

まずは太陽系の中で、星々を自由に飛び回ることができたら。アストラ号だと大がかりかもしれないけど、自分たちの宇宙船があって、手軽に、気軽に星に行くことができたら。自分はタイタンという星に憧れを持ってから、行かなくてもいいかなとも思っていましたが、たぶん、心の奥底では行きたいと思っていたんだと思います。

もう1つ、口に出して、言葉にしようと思った理由があります。それは「時間」です。

どれぐらい技術が進歩するかは分からないですが、待っているだけだと、自分が死ぬまでに宇宙に行ける未来は訪れないかもしれない。自分の子供か孫世代でようやく宇宙に人が普通に行ける時代になるかもしれない。でも、それでは自分の欲求は満たされないままになってしまう。

ここだけは本当に自分よがりではあるのですが、自分が生きているうちに、宇宙に人が行くことが当たり前になっている時代になってほしい。そのためには、自分からその時代を掴みにいくしかないと思います。

だから、途方もない話に聞こえても、無謀だと言われても、そんな未来の実現をゴールとして、歩みを進めていきたいと考えています。そのゴールに向かっていくステップ1つ1つに、ビジネスチャンスを見出し、事業として成立させていくことが、自分がやるべきことだと思っています。

そして、そこにどのように仲間となる方や企業に関わっていただくか、価値と意味をつくることが必要です。ここに関しては、今まさに考え、さまざまな方とのお話の中で練り上げているところです。逆に言うと、先にその答えが少し見えてきたところがあり、実現性、事業性の観点でやや近視眼的になってしまったので、大きなビジョンを描き、そことの接続を考えていた、というのが最近進めていたことでもあります。

そのあたり、どのように仲間になっていただくのか、何をビジネスとして捉えようとしているのか、何が価値として生み出せそうなのか、といった話は次のタイミングで書ければと思います。

最後に

今回は、宇宙ビジネスを立ち上げるにあたって、どのような世界を目指すのか、大きなビジョンをつくることの大事さと、自分が思い描く世界について書かせていただきました。

むちゃくちゃなことを言っていることは分かっています。それでも、こういった話が必要だと思っています。少しでも共感いただけたり、何か響く部分がありましたら、ぜひコメントやご連絡などいただけたら嬉しいです。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

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