騒音問題の進捗。

「隣家からの騒音に悩まされて久しい。」
たしか以前ツイッターにポストした事もあったと思うが、騒音が出る度に通報をするような日々で、
そんな状態でかれこれ半年以上が過ぎたと思う。
騒音自体はというと、そのずっと以前から断続的に続いている。

民放テレビのバラエティのけたたましい声や、
FM波に多く生息するスカしたような話し方をするDJの声、
O瀧詠一という歌手の80年代初頭の名曲が聴こえてくる日もある。

これらが音量マシマシの大迷惑で
日常に飛び込んでくるのだ。

早朝と深夜が主だが、その限りでもない。
音が続く時間は各30分程度か。稀に45分を越える。
まあ、逆を返せばその時間を耐え凌げば
あとは日常って事だ。
皆さんだったらどうするだろうか。

そんな事の繰り返しの日々であったが、先日のこと。
遂に、というか、
僕は到着した警官に同行し、
共に隣家に向かうことを決断する事になる。
自ら通報し、警官に同行したい旨を伝え、
そして、同行した。

一大決心だったが、
我慢の限界はとうに来ていたと思う。
このまま放置すると、
自分がノイローゼになってしまう、
そう感じてもいたのだ。

通報後に自分が警官に同行するのは今回初の試みであり、
たいてい騒音が響き渡るのは早朝か深夜、
深夜は「うるせえなあ」と思いつつも外に出るのも億劫、
身支度もそれなりに整え直さないといけないのか等々、
要らぬ逡巡をしては踏み止まってしまい、
朝はと云えばいつも只々慌ただしく、時間に追われ、
さっさと出かけなければならない毎日…。

そんな理由に、生来の先送り癖も相まって、
ただそれでも、とにかくなんとかはしてほしいから、
今迄は「音が出れば警察に通報をする」、
他力本願よろしく、これを脊髄反射的に続けていた。

通報者が直接行くと身元バレから報復を受けるリスクもあるなんて電話越しに警察から言われた事もある。
ましてやドのつく近所であるからね。
可能ならば匿名性を担保した状態でやんわりと伝えるべきとも。
ご近所トラブルはデリケートな問題であり、正解がわからないものだ。


が、しかし。
これまでそんな事言う割には何度呼んだとて、
一向に(本当に全く!)、その改善の余地も見込みもなかった、
むしろ音は日に日にエスカレートしていくばかりだったので、本当に辛かったのだ。
警察という組織は一体全体どういう対応をしているのか、
それも確かめなきゃならないな、という義憤に駆られてもいた。
アンビバレントな心模様の話だが、
要は被害者に泣き寝入りを促す
警察対応そのものが碌でもないのだ。

ちなみに
その日だが、警官が到着した時点では
騒音はすっかり止んでしまっていた。
ひょっとして、
これまでの通報後の顛末というのもこんな感じで、
音が続く時間もせいぜい30分とかだ。
下手をすると、
騒音の鳴り響く現場を押さえた事すら一度も無い、
なんてオチが続いていたのかもしれない。
あいつら自転車でちんたらやってくるからね。

まあ、その辺の事も一応聞いてみたけど、
現場に臨場し僕と合流した若い警官の弁では、

「課が違ったりするから過去の対応は把握していない」。

この要領を得ない答え方。

何がどうなったら課が違ってしまうのか。
今後は是非とも統一してくれ。
その方が仕事もしやすいと思うぞ。

緊急性を感じ取ってもらえずに、
まともに扱われていなかったのか?
もっと絶叫でもしてみれば伝わったのか?

時折ニュースで聞かされる
警察の手際の悪さ、運悪く後手後手の警察対応の犠牲になった善良な被害者の事件(例えばストーカー被害に取り合ってもらえないとか)などに思いを馳せつつ、
(ああいうのは本当に気の毒で胸糞が悪いです。)
憂い、再び憤った。
まあ今は言っても仕方がないとその場は口を噤んだのだが。

       

---- INTERMISSION 幕間----



臨場した警官とそれを寒空の下待っていた僕。

二人が並んで隣家の前に立つ。

制服の警官のほうが呼び鈴を押す。

ピンポーン。

暫しの静寂の後、
玄関ドアをゆっくりと開け、
訝しげに顔を出す男。
遅れてその後ろから女も姿を現した。

我々の眼前に現れたその家の住人は70代以降と思しき男女。
老夫婦であった。
アラウンド80か。

そして、僕は事のあらまし、
何故僕があなた方の下を訪ねたのか、
その事情を丁寧に説明する。
時に聞こえにくい様子をされるので、
やや声のボリュームは上げて、滑舌を良く。
但し、決して声を荒げてはいけない。

「というか、この老夫婦、完全に初見の顔してるよ。
そうか、警官はここに来たことすらないんだな…。」

↑その時の僕の心の声がこれである。

職務怠慢確定と言っていい。
横目で若い警官を睨み、
「なんなんだろうか。半年返せ。」
「ちゃんとしてほしい。」
「対応して下さい。」などと念仏を心で唱えた。

とは言いつつ、
①この騒音の100%の出所に現在お住い中の
②やや聴力に衰えのあると推定される高齢者
という、今回の騒音問題にこの上なく親和性のある条件を
兼ね備えた人物を今の今、目の前にしているわけで、
「すわ!犯人確保!」とおまわりさんへの不満もどこへやらで、浮足立って居たのも事実。

しかし…。

うーむ。

なんというか、
どうもこちらも暫く話をしていく(聞いていく)うちに、
彼ら(若しくはそのどちらか)が、これまで連綿と続いてきた
喧騒の出所、それを引き起こした首謀者達だと結論づけるには気が早い、
というか、なんかこの人達じゃなさそうだ、
と思い知らされる事になるのである。

なんだろう真実からまた一つ遠ざかった感というか。
なんだなんだ、明らかにテンションが下がっていく。

隣家の外観の話しよう。

ここは一見すれば、
ごく普通のありふれた日本家屋の一軒家である。

しかし。

話を聞いていくとその内部は完全に区切られており、
どうも独立した風呂付きの一室ないし二室というものが存在、
そこを何年も前から「第三者」に貸しているというのだ。
見た目は完全無欠の一軒家だから、
最初はそんな話も老夫婦の戯言、嘘松じゃないかと疑って聞いていたのだが、
よく見ると、
確かに勝手口と思しき細い通路前に備え付けられた赤いポストに、
「ハイツ〇〇」などと油性マジックで書いてある。

" 都会の無関心 "とかいうやつで、
隣家といえどそこの家主の顔を見るのも
僕にとってはこの日が初めて。
そしてその家にはどうやらもう一世帯あり、
約一名、長い期間に渡り住んでいると言う。
この事実を知らされるのもまた初めてである。

うちの親も晩年テレビを非常識に大きな音で流しながら観ていたから、テレビの騒音といえば高齢の家庭から聞こえてくるものであるという半ばそういった固定観念に
囚われていた部分がある。
しかしなるほど、この高齢の夫婦を" 犯人 "と断定するには腑に落ちないこともあるではないか。

最初は、
" 第三者である住人 "の存在など出来すぎた作り話だろうと思い、話半ばに聞いていたのだが、
突きつけられた状況証拠に、
みるみるそれが真実味を帯び、
疑いも霧散していくのである。
警官も警官で、直感を働かせ色々と状況を分析しているようだった。

半年に及ぶ自分なりの内偵調査。

音の出所であろうと僕なりに目星を付けた
「一見したら一軒家」。
その家の二階の磨り硝子の窓。
ここを僕が指差すと、
家主は
「ああ、あそこはまさに借り主の部屋の窓だ。」
と即答する。
そして曰く、
借り主は「若い」男であると。

いまもって、
その借り主が具体的には何歳の「若い」男なのかは知る由もないし、
この大家の言うところの「若い」の定義もいくつだかわからないままだが、
日々悩まされた騒音のソースである「犯人」が好み、
そして垂れ流してくれた音楽や
テレビ番組の傾向から鑑みると、
勿論例外はあるが、
ちょっと70代以上の人間が好むものとは違う
と言っていいのかもしれないと思うに至った。

大瀧A一氏歌唱の「君は天然色」という曲。
こいつが聴こえてくることがあったので、
これは改めて検索してみたが
1981年のリリースらしい。
もう40数年前になるのか。
光陰矢の如しである。
今80歳の人だとして40前とかで聴いてる計算。
改めて計算するとなんだ、まあ、あり得るのか。
「唇ツンとー尖らーせてー♪」とかの歌い出し。
そこから先の詞は知らない。
そして曲の何処かで「思い出はモノクローム」だとか
「コダクローム」だとか歌っていたと思う。
きっと世代を超えた名曲の特集なんかを放送すると
割と入ってくる部類の曲なのだろう。
とはいえ本当に若い人は聴いたこともないかもしれない。
検索してね。

まあ、別にいくつの人が聴いてもいいです、勿論。
ただ、なんとなくこの人たち(高齢夫婦)を犯人とする可能性は低かったのかなーとその時は思った。根拠はないけど。
率直に大瀧詠一は聴いてないだろうな、と思った。
確かこの曲、リリース時より、ちょっと経ってからのリバイバルとかで流行ったんじゃなかったか。
CMとかで。
00年代?そんな気がする。
わからんが。

まあ、あの時点、主観全開血眼になって犯人確保モードでとっちめてやりたかった僕の中では、
大瀧詠一氏の曲を好む、話中に出てくる第三者の存在(やや若い人)というものが急速に実体を伴いちらつき始めたということです。

警官は違った見立てだったかなあ、ざっくばらんに聞いてみたい。

「畜生、音にやられて冷静さを欠いていたな、自分。」
「この大家、どうやら嘘は言っていないようだぞ。」

そんな事を思っている僕だったが、

ちょっと不可解な事を家主は付け加えて言うのだ。

いちいち混乱させてくる。

家主「ここの人、今朝は早くから出かけていると思いますよ。」

そんな馬鹿な。

僕「だってほんの3~40分ほど前に大きな音が鳴っていたから、我慢できずに僕は通報したんですよ?」

更に家主は畳み掛けるようにこうも言うのだ。
「私ら、ここに住んでいて騒音が気になったことなんてただの一度もありはしませんけど。」
奥さんの方も「そうね。」などとその言葉に相槌を打っている。

文字通りの絶句である。
というか、
これを言われた時の絶望は本当に計り知れない。
振り出しに戻る、である。
もう全然わからなくなった。
なんだ?
ひょっとして庇っているのか?

更に道を挟んで向かいの家に住む新たな人物が警官らの姿を見て、騒ぎが気になった様子で外に出てきた。
悪く言えば野次馬。というかこの人も見たことが無いな。

「どうかしましたか?空き巣か何かですか?」
男が警官に声を掛ける風で聞いてくる。

これ幸いと、僕は騒音の話をしてみる。

すると、

「音?いやあ、私も音なんて気になったことがないなあ。」

なんと。

言葉が出ない。一体どうなっていると言うのだ?

ふと警官の方を見やると、彼の僕を見る目が疑念の目へと変わったようにも思えてくる。
否、元々の疑念が確信へと変わったとも言わんばかりだ。

「警官特有の、ゾッとするような目をしていやがる。」

被害妄想かもしれないが、
そう心で叫び、なんだか気も遠くなってきた。
手前味噌だが、
出来の悪いミステリー小説でも読んでいるかのよう。
自分はオオカミ少年にでもなってしまったのか。
狐につままれたような気分で落ち着かない。
呼吸も荒い、汗が吹き出してくる。

例えば統合失調症の症例として、聞こえていない音が聞こえてくると主張するケースなんかもあるだろう。
警官は色々なケースを想定しつつ、
向こうは向こうで僕を半年にも渡りプロファイルしていたのかもしれない。
やべー奴認定されていておまわりさんも今迄動いてくれなかったのか?
いやいや、耐え難かった騒音も、ここまでの話も幾分も盛っていない、正真正銘紛れもない事実である。
おまけに僕には統失の既往も自覚も、全くありはしないのだ。
ないですよ。


さて、ここまで長々と書いたが、
結論としてはあれから数週間経ち、
騒音自体はピタリと止んでいるのである。
あくまで今のところ、だが。

色々と考える。

今一度あの日の様子を思い返してみる。

僕が指差した二階のあの窓、
確かにあの日あの時間真っ暗だった。
人の気配もなかったように思えた。

そして、
その場で右往左往していた推理も改めて思い返すと、
色々と粗もあるし、
詰めも甘かった。

再考してみるか、だんだんどうでも良くなってきたけど。

ケース1
僕の中では家の主は今でもシロなのだが、
そもそもが「架空の借り主」の作り話で、主が自分の責任をその架空の人物になすりつけたでっちあげエピソードの可能性。
警察を前にそんな虚偽の話を白々と出来るのかという疑問が残るから個人的にはやっぱり可能性は低いと思っているが。

ケース2
単純に僕が実は幻聴などを聞いているケース。
こればかりは信じたくはない。

「そうだろ!」

意地悪な読者がもし居たらそう言って
膝を叩いたかもしれない。
まあ、人知れずそういう疾患を抱えて
今まで気がつかずに生きてきたのかもしれないよ。
このケースはいずれ僕が病院などに収容されるでもない限り
ありもしない幻聴に悩み続けるという話か。
ただこれの可能性はないと断言しよう。

理由はそうだな。
ここまでの登場人物で僕が一番マトモだから位しか思いつかない。

一点。

あの日、10cm程当該2階の窓が開いてたのを僕は見逃さなかった。
そしてどう形容したら良いか、あの時にあの真っ暗な窓の向こうで微かに響いた風呂場の洗い桶か何かの反響音。

カポーン。

思わず警官にも
「今お風呂の音聞こえましたよね?」
やや必死に、自分が嘘をついていないことをわかってほしい思いもあり、食らいつくように尋ねた事を思い出す。
警官は間違いなく頷いたし、彼の耳にも音は届いていたが、
理由は何だったろう?
なんか尤もらしい事を言って、
「これ以上踏み込むべきではない」と、
僕にそのニュアンスを伝えてきた。
あれは警官なりの直感だったのかも。
制服の効果のせいもあるのか、思い出せないその言葉は僕に確かに諦めさせた。
理由は良くわからない。

思うのだ、
あの時間我々の臨場に際し、誰かしらが実際はあの部屋に居て、風呂場で息を潜め、我々が去るのを待っていたのではないかと。
これがケース3。今、僕の考えている事だ。

悩まされていたそもそもの騒音問題に話を戻すと、
これは僕なりの内偵の最中に気がついたことなのだが、
犯人はどうやら風呂に入りながら、
水の音にかき消されないよう、
大きめの音でテレビやラジオを流していたのだと思う。

そう、いつもの大騒音の最中に混ざる、
洗い桶などがタイルに当たる微かな反響音、
少しの水が弾け落ちる音があの日とそれまでの半年間で
共通していた。
そしてあの日、警官が来た頃には騒音は止んだが、微かな反響音だけは続いていたのだ。
そしてちょっと窓を開けて風呂に入る習性が「彼」にはある。更に言えば普段は閉まっているのだ。

だからあの日もそうだった。

湿度や温度の上昇に伴い、音の伝達する速度も速くなるという。風呂場特有の音の反射、その聞こえ方は冷えて乾いた空間の場合はそのなりを潜めるのだ。
未使用時の風呂場で仮に風でも受けて音が出ていたのなら、もっと乾いた音になっていた。

あの日のそれは少し湿度を含んだ音で、
すぐ近くで鳴り響く、そういう感じがした。

やっぱり誰かしら人が居た。
風呂に入っていたのだ。

まあ、電気を消して風呂に入るとリラックス効果が高いとか昔のテレビで言ってた気もする。
今じゃテレビに映せないだろう、
セクハラ司会者のMのMんたとか。本当に気持ち悪いが居たなー。
なんだったんだろうか。

脱線した。

それに、人がどういう風に風呂に入るか。
そんなこともどうでもいい。
それに、居留守を使ってたのなら、そんなこともあるだろうと思う。

ただ願うのは


大きな音は出さないでほしい。


悪意がなくやっていた事なら、
もうそのまま音を控えめにして暮らして頂きたいのだ。

あの日起きた事に起きた事以上の意味がないのを願うだけだし、隣家の私をもし2階からひっそりと確認していたとして、どうかその者よ、逆恨みなどはしないでほしい。

なんにせよ音は止んで今は一時的かもしれないが平穏である。

しかし。

日常は突然に前触れもなくぶっ壊れるものだと考えている。
本当にそう。

だからここに書いてこの事実を残しておくことにする。
僕自身のためだ。

何もないといいが、何かがあったときにここに書かれた内容から誰かが紐解き、まだ見ぬ真実に辿り着いてくれたらとも思うのだ。
わからないことだらけだけど、わからないことをありのままにわからないと書いておくことも時には意味があるのだと思う。

いずれ状況証拠と真実とを擦り合わせてくるホワイトハットの様な存在が現れるのが現代だ。

現代は集合知の時代なのだ。
皆が広く社会を監視し、不正を正そうとする自警の側面がちゃんとあるし、機能している。時に行き過ぎのこともあり論争も呼ぶが、一方で、他愛ないと自分が思っている生き様すらも知らず知らずに誰かを助けていたりもする。
想像以上に自分の思いは伝播するからだ。
清濁を併せ呑む過渡期として面白く捉えていればいいと思っている。

時代も国境も越えて構わない、いつかどこかで集合知は繋がり、時間はかかるかもしれないが揺るがない真実や正義へと繋がっていく。もうその兆しや予兆は誰しもが感じ取っている。誰しもが薄々でも感づいているだろう。

久しぶりにnoteを書いた。
後半は何を書いているか良くわからないし、
ツイッターと連携してるのかも良くわからない。
なので取り止めなく書いた。
春になると変なのが湧いてくるので
お互いに気をつけましょう。





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