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入門マクロ経済学(中谷):経済成長モデル、コブ=ダグラス関数

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

さて今回は前回に続いて経済成長モデル、特に生産関数(コブ=ダグラス型)について、中谷の入門マクロ経済学に沿って内容を確認してみたいと思います。

経済成長モデルでは次のような生産関数を考えるのでした。

$${Y=F(K, N)  where   K:資本投入量, N:労働投入量}$$

生産関数は一次同次と仮定します。すなわち、

$${ \lambda Y = F (\lambda K, \lambda N )}$$

さて、経済成長の源泉として重要なのは上記の資本と労働投入量に加えて、技術進歩が重要だと考えられています。この場合、生産関数は技術進歩$${A}$$を考慮して、次のように定義されます。

$${Y = A F (K, N)}$$

技術進歩は全要素生産性とも言います。このような生産関数の例として一般的なのがコブ=ダグラス型の生産関数で、次のように定義されます。

$${Y = AK^{\alpha} N^{1-\alpha}  where  \alpha:資本分配率}$$

この関数が一次同次の条件を満たしていることは次ですぐ分かりますね。

$${ A( \lambda K)^{\alpha} ( \lambda N)^{1-\alpha} = A \lambda^{ \alpha} K^{ \alpha} \lambda^{ 1-\alpha} N^{1-\alpha}  = \lambda AK^{\alpha} N^{1-\alpha} = \lambda Y }$$

さて、この生産関数から経済成長率を求めます。中谷では微分の知識を必要とするので読み飛ばして構わないとありますが、このくらいの計算はおさえておきたいところですね。中谷によると、上記の生産関数の対数をとると、

$${ \log Y = \alpha \log K + (1-\alpha ) \log N + \log A   }$$

となるのは良いですね。ここから$${A}$$が後ろにきているのは、$${K}$$と$${N}$$が内生変数であるのに対して、$${A}$$がモデルの外で決まる外生変数というお気持ちを表しているの(回帰分析をする際、$${K}$$と$${N}$$の変化率与えて、それぞれの回帰係数を求めて$${A}$$は残差として現れるイメージ、そのためソロー残差とも言うそうです)だと思います。

中谷ではこれを時間$${t}$$について微分すると次が求まるとあります。

$${ \dot Y / Y = \alpha \dot K / K + (1-\alpha ) \dot N / N + \dot A / A   }$$

ここで $${\dot x = dx/dt}$$で時間$${t}$$で微分した値を示します。物理などでよく使う時間微分の記法ですね。

この辺の説明の端折り方が中谷のいまいちなところかもしれません。$${Y}$$、$${A}$$、$${K}$$、$${N}$$は時間変化とともに変化する$${t}$$の関数と考えれるので微分できると言っています。つまり、実際は$${Y (t)}$$のように書くところを、$${t}$$を省いてあると考えるのですね。経済学だとこの辺は十八番のやり方のようです。

さて対数をとった$${\log Y(t)}$$の微分は合成関数の微分になるので、

$${ \frac{ d \log Y (t)}{dt} = \frac{dY / dt}{Y} = \frac{\dot Y}{Y} }$$

となります。同じ要領で$${A}$$、$${K}$$、$${N}$$も微分出来るので、

$${ \frac{ d \log Y (t)}{dt} = \frac{dY / dt}{Y} = \alpha \frac{dK / dt}{K}+ (1-\alpha) \frac{dN / dt}{N} + \frac{dA / dt}{A} }$$

で、両辺に$${dt}$$をかけて、$${dを\Delta}$$に書き換えると、

$${   \frac{\Delta Y}{Y} = \alpha \frac{\Delta K }{K}+ (1-\alpha) \frac{ \Delta N }{N} + \frac{\Delta A }{A} }$$

で経済成長率が資本ストック、労働投入量、技術進歩の成長率に分解できました。上式は次のような一人当たりGDP成長率の式に書き換えられます。

$${  \frac{\Delta Y}{Y} - \frac{ \Delta N }{N} = \alpha (\frac{\Delta K}{K} - \frac{\Delta N}{N} ) + \frac{\Delta A }{A} }$$

一人当たりGDPは$${y=Y/N}$$で定義されるのでその変化率は、
$${\frac{\Delta y}{y} = \frac{\Delta Y}{Y} - \frac{\Delta N}{N}}$$

となるので、上式の左辺が一人当たりGDP成長率になっていることが確認できますね。同様に右辺第一項の$${\frac{\Delta K}{K} - \frac{\Delta N}{N} = \frac{\Delta k}{k} }$$から資本装備率($${k = K/N}$$)の成長(資本の深化と言います)率であることが分かります。つまり、一人当たりGDPの成長は資本の深化と技術進歩(全要素生産性の上昇)によってもたらされるということです。

アメリカの経済成長要因の分析した結果では資本ストックの成長の寄与は小さく、大半が労働投入増と技術進歩によるそうです。ソロー(1909〜1949年)やデニソン(1929〜69年)の過去の研究によると、米国では労働投入増の寄与が1%、技術進歩が1.5%程度の寄与になるそうです。

このような経済成長率の分解を成長会計と言うそうですが、その方法論は色々あるようで今後、調べてみたいと思います。

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