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[3]ブリヂストン防振ゴム事業売却を考える(その3) ~オープン・ソースから考える中国のサイレント・インベージョン

前の記事の続きになります。
その1:オープン・ソースから考える中国のサイレント・インベージョン ~ブリヂストン防振ゴム事業売却を考える(その1)|髙山彦行|note
その2:オープン・ソースから考える中国のサイレント・インベージョン ~ブリヂストン防振ゴム事業売却を考える(その2)|髙山彦行|note

売却の終了

残念ながら2022年5月11日防振ゴム事業の売却は完全に終了してしまいました。

(開示した事項の経過)化成品ソリューション事業の会社分割(簡易吸収分割)による当社完全子会社への承継および当該当社完全子会社株式の譲渡に関するお知らせ
https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/pdf/2022051101ir.pdf

ブリヂストン社ニュースリリースより

一部の心ある政治家は危機感を持っていたようですが残念です。

今後のことを考える

背景にあるのは政治家を含めた国民の経済安全保障に関する意識が低いことにあるように思います。売却のニュースが出た際も経済安全保障の観点から取り上げる大手マスコミの記事は見当たりませんでした。
上記のニュースリリースと同日の2022年5月11日に経済安全保障推進法が参議院で可決し成立しました。これは果たして偶然なのでしょうか?
経済安全保障推進法の施行時期は今のところ未定で、「公布から6月以内~2年以内に段階的に施行する」となっています。
では、これがもっと早く成立していれば防げたのでしょうか?残念ながら違います。この法律で重要先端技術として取り上げているのはICT、エレクトロニクス、バイオテクノロジー、航空宇宙などの分野です。日本の基幹産業である自動車は含まれていません。折角の法律も、時期も内容も問題だらけと言わざるおえません。日本を守っていくためにも、国民の意識を変えていく必要があります。

ちょっとした裏話

私が勤めていた会社はブリヂストンさんと取引がありました。ブリヂストンさんとの守秘義務を超えない範囲で、数字などは暈して説明しています。ブリヂストンさんの話はここまでにして、同僚などが体験したことを含めて裏話を致します。
勤務していた会社は、鄧小平時代に一度中国に進出し失敗しています。結局、ブランドだけ勝手に使われたような状態でその後の利益はありません。そして、胡錦濤時代に再度進出することになりました。政治的なこともあったようです。下っ端の私は当時、「あほちゃう?過去に失敗しているのが分からないの?統制経済なんだし、中国共産党の気分次第で潰されるのが分かっているじゃないか。」と思ったものです。今にして思えば、経営層の心ある少数の人達は、失敗することを分かっていて被害を最小限にしていた節がありました。当然ながら事業は失敗し、身ぐるみ剥がされた格好で早々に中国から完全撤退をします。しかし、今でも撤退できずに居る企業が多い中では英断でした。
私自身は中国のプロジェクトには直接参加はしていませんでしたが、一部の手伝いや同僚の愚痴から色々と知る機会がありました。(あの時に知り合ったウイグルの方は今どうなっているのでしょう・・・考えると胸が痛いです)中国は外資規制が有ってWTOの建前上100%の独資まで可能ですが、50%までが基本になります。50%を超える場合は特例(つまり中国共産党上層とコネクションが必要)として認められます。
よって、合弁のような共同でのスタートになります。よほど小さな会社で無い限りは中国側には共産党の幹部が入ります。これが非常に厄介なのです。彼らが了承しなければ物事が前に進まないのです。スケジュール通りに行動しようとしても遅延させてくるのです。また、様々な技術的ノウハウを教えろと要求してきました。教えなければ先に進まないという訳です。いくら日本側が頑張ったところで、共産党が承知しなければ物事は進まないということです。裏を返せば、共産党が幾らでも事業の成否をコントロールできるわけです。これは、経済安全保障について言論されている平井宏治氏が警鐘を鳴らされていることとも一致しています。
もう一度ブリヂストンさんに話を戻します。ブリヂストンが防振ゴム事業などを手放す必要が有ったのは、中国での赤字によるものです。中国タイヤメーカーの追い上げが原因であったという解説もありますが、裏事情を知る身からすれば、果たしてそうだったのだろうか?と考えてしまいます。中国共産党が意図的に赤字にすることが可能なのです。更には、西安交通大学名誉教授などという肩書まで貰っている鳩山由紀夫という媚中人物がブリヂストンに関係している点まで考えれば、この防振ゴム事業の売却騒動を単に「ブリヂストンが経営を失敗して一部の事業を売却した」で済ませることではありません。中国に進出してしまった企業は円安という口実で一刻も早く引き上げるべきです。皆さんはどう考えますか?

(了)

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