#46 うすあじのちゃーはん

登場人物

奏多(20):大学3年生。友達に料理を振る舞うのが好き。

アイツら3人

百葉

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今日も家に友達が遊びにきている。ひとり暮らしの僕の家は、友達の溜まり場になっていた。みんなでオンライン授業に参加して、夜通しオンラインゲームをして、睡眠時間2時間程度で大学に向かう。そんな日々が続いていた。

ある日の朝。3人の友達が僕の家に泊まっていた。朝6時に目が覚めた僕は、二度寝に失敗し、完全に目が覚めてしまった。暇だなあ、そう思いながらInstagramを眺める。美味しそうな料理の動画を見てしまった。お腹が空いて仕方なくなった。何かを作ろうと決意した。冷蔵庫を開ける。材料が全くない。あるのは卵だけ。冷凍庫を開ける。あるのは豚こま肉とタッパーに小分けで入れたお米と大量のアイスだけ。そこでひらめいたのが、チャーハンを作ること。僕は人数分のチャーハンを作るべく、朝からキッチンに立つことにした。


まずは冷凍庫にあるタッパーに保存した3合分のお米をレンジで解凍する。その間に、卵を3つ割って溶く。きめ細やかに、空気を入れながら素早くかき混ぜる。冷凍してあった豚こま肉をレンジで解凍し、油をひいたフライパンにぶちこむ。色が変わったらご飯を投入して炒める。良きところで卵を投入し、軽くかき混ぜる。良きところで醤油をひと回しかけて、鶏がらスープの素をひとつまみ入れて再び炒める。

美味そうなチャーハンが完成する頃には、みんな目を覚まして、各々でスマホを眺めていた。みんなで机の前に座る。4人でチャーハンを食べる。ひとりが「美味いなこれ。味薄いけど。永遠に食べれるわ。」とつぶやいた。味薄いんかい。そう思ったことはさておき、朝からお腹いっぱいになった。幸せだ。

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ある日、ゼミが一緒の百葉ちゃんから話しかけられた。どうしても奏多のチャーハン食べたいから、今度家に行っていい?的なことを言われた。僕は弱々しく「あ、えーと、いいよ」と答えた。どこからそんな情報を手に入れたのか。間違いなくアイツら3人のせいだ。いや、アイツら3人のおかげだ。

僕の家に百葉ちゃんがやってくる。僕の作るチャーハンを食べにやってくる。僕は百葉ちゃんが好きだ。正直付き合いたい。一世一代の大勝負の日が刻々と迫ってくる。僕はチャーハンを研究しまくった。百葉ちゃんの笑顔を見るために。

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ゼミ終わりにダッシュで家に帰った僕は、百葉ちゃんが家にやってくるのをドキドキしながら待つ。インターホンが鳴る。外に出ると、百葉ちゃんのほかに、いつものアイツら3人がいた。なんでお前らがいるんだよ。「おいっす」じゃねぇよ。百葉ちゃんだけじゃねぇのかよ。そう思ったが口には出さず、みんなを迎え入れた。

僕は最強のチャーハンを作った。調味料にまでこだわり、百葉ちゃんの笑顔を見るためだけの最強のチャーハンだ。お皿に盛り付け、みんなに食べてもらう。みんな美味しいと言ってくれた。その中でも、特に百葉ちゃんが喜んでいた。朝ご飯で食べたいからタッパーに入れて持って帰ってもいい?と言われた。今日泊まっていきなよ、一緒に朝ご飯でこのチャーハン食べようよ、と言えるわけもなく、チャーハンをタッパーに詰めて百葉ちゃんに渡す。

百葉ちゃんもアイツら3人も、ただただチャーハンを食べに来ただけだった。それでも、百葉ちゃんがうちにやってきた。アイツら3人のおかげだ。大きな一歩を踏み出した僕は、百葉ちゃんに振り向いてもらうべく、最強のチャーハンを追い求める。うすあじのちゃーはんに彩りを加えていく。僕が百葉ちゃんと一緒に朝ごはんを食べる日は果たしてやってくるのだろうか。いつかやってくるであろうその時まで、僕は強い希望を持って生きていくのであった……。

fin.

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