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プッチンプリンの謎

みなさんはプッチンプリンというものを知っているだろうか。
蓋を剥がして、容器を裏向けてお皿に置き、底の棒みたいなやつをパキッと折ると、プリンが落下する、というやつだ。

 私の地元には、何故かセブンイレブンが大量発生している。まあそれは今はどうでもいい。
いつも通りセブンイレブンに入って、ふと、目に止まった物があった。
それが、プッチンプリンだった。

久しぶりに見たせいか、はたまた小さい頃以来にちゃんと見たからか、少し大きくなったような気がした。いや、どう見ても大きかった。
少し見ない間に成長したな、と1つ手に取る。おそらく、通常のプッチンプリンの3倍はあるであろう大きさだった。
1度手に取ったからには、もう引き返せない。私は、その大きく成長したプッチンプリンを手にレジへと向かった。

 手ぶらだったので袋をもらい、そのまま自転車のカゴに入れて漕ぎ出す。行きよりワクワクしてる自分がいた。プリンにワクワクしてるのではない。プッチンが出来ることにワクワクしているのだ。しかも、成長を遂げた巨大サイズだ。プッチンをして落ちるプリンは、さぞかしいい眺めだろう。そう思っていつもより少し早いスピードを出して帰宅した。
自転車をとめ、家の鍵を開ける。目前に迫る快感に、いつもより雑に動いていた気がする。
手を洗い、リビングに入る。皿を持ってきて準備は万端。蓋を開けて、あとは裏返してプッチンするだけ、、、!

事件はそこで起こった。

 ポヨン、、、。
そんな音が聞こえた気がした。容器を裏返したその瞬間、プリンが皿に着地した。
あれ、と思った。急ぎすぎて、無意識にプッチンしてしまったのかと思った。いや違う。そんなはずは無い。あれだけ楽しみにしていたプッチンの瞬間を無意識のうちに行うはずがない。案の定、プッチンの棒は容器にそびえ立っている。この棒をプッチンして、初めてプリンは皿に着地するはずなのだ。しかし、プリンはもう着地している。
私は目の前で何が起こっているのか分からなかった。なぜ、プッチンしていないのにプリンが着地しているのか。巨大サイズを買ってしまったからなのか。自転車という揺れる乗り物で乱暴に持って帰ってきてしまったからなのか。

結局私は、その謎を解明することは出来ず、虚しく、ただの棒をへし折った。
先程まで神々しく輝いていたプリンは、ただのデカいプリンへと変化していた。
私は放心状態でプリンを1口食べた。

先程までの絶望が全て吹き飛ぶ美味さだった。

途端に笑いが込み上げてきた。こんな事で一喜一憂できている。こんな馬鹿なことで笑えるのはいつまでだろうか。
このプリンをもう一度食べる頃には、きっと何もかも忘れているのだろう。そしてもう一度、こうやって笑えばいい。そんな風にも思った。


とは言ったものの、私は少々負けず嫌いな性格なので、しばらくはプッチンプリンを見かけたら買ってしまうかもしれない。

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