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年神様と正月について

【日本神話】 
 年神は、スサノオと大市比売の子として生まれ、多くの妻を持ち、大山杭などの沢山の子をもうけました。日本の神話に、年神が登場するのは、大国主命「オオクニヌシ」の国づくりの話です。当時、大国主命は、少彦名命「スクナビコナ」という右腕を失っていました。その大国主命の前に現れたのが年神です。年神は、大国主命の国づくりに協力しました。大国主命は、日本という国を作った神様です。年神は、穀物の「死と再生」を体現する神だとされています。そのため、稲作を守護するとされました。同じ穀物の神である宇迦之御魂神「稲荷神」は、兄弟神だとされています。

【穀霊】
 稲の収穫には、1年間を要します。年神の「年」は、その1年のことです。米は、日本人の主食として、先祖たちの命を繋いできました。そのため、特別なものとされています。神社に、神聖なものとして、奉納するのはそのためです。日本人は、穀物に霊魂「穀霊」が宿ると信じてきました。それを稲魂「いなたま」と言います。人間に魂があるように、穀物にも魂があると考えたからです。年神には、五穀豊穣のご利益があるとされています。その力は、稲を実らせるだけではありません。田の神が、神聖な牛を食べてしまった時には、罰としてイナゴを使い、田を枯らしたこともあります。その怒りを鎮め、豊作を祈ったのが、除蝗祭「うんか」です。

【正月の神様】 
 民族学者の柳田國男は「一年」の守り神と、農作を守護する「田の神」と、家を守る「祖霊」の三つを一つにしたものが年神であるとしました。祖霊とは、先祖の魂の融合体のことです。日本の民間信仰では、祖霊は、山にのぼり、子孫を見守っているとされています。その祖霊は、春になると、田の神となり、山から降りてくるとされました。
 年神は、新年の神様として、毎年、正月に各家々にやってくる「去来神」だとされています。正月の飾り物は、その年神を迎えるためのものです。門松は、年神が来訪するための「依代」だとされています。依代とは「宿る所」という意味です。それが神様が降臨するための目印になるとされています。門松の竹は「長寿」の、松は「生命力、繁栄」の象徴です。正月のおせち料理や鏡餅は、もともと年神さまにそなえるためのものでした。鏡餅は、依代でもあったとされています。その餅米に使われたのが、一年前に収穫されたお米です。

【行事】 
 小正月の1月15日には、年神様を見送る「どんと焼き」という行事が行われます。どんと焼きとは、火祭りの一種です。火は、穢れを清めるものとされています。どんと焼きでは「門松」「しめ縄」などが燃やされ、それによって、年神が、空へ帰っていくとされました。年神の別名を歳徳神「としとくじん」と言います。歳徳神は、方位神の1人です。その年に、歳徳神がいる方角を「恵方」と言います。そこから歳徳神は「恵方神」とも呼ばれました。恵方とは、縁起の良い方角のことです。節分に食べる「恵方巻き」は、歳徳神の恵方が由来になっています。

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