写仏部第三回は天台仏!信州伊那の薬師様を顔彩で描きます。
いつの間にか、「写仏部」発足いたしました、Himashunです。
ノリの良いあやのんさん、写仏のご経験もあられるつきふねさん(ご迷惑でなければどうかよろしくお願いいたします)、そして私の三人でやっているnote上の部活です。
部員届けはコメント欄まで♪
さて、今日は前回までとは打って変わって、天台仏を取り上げます。
天台宗の仏像と真言宗の仏像、何が違うか説明するほど知識はありません。
ただ、最澄と空海、二人の天才が創り出した「荘厳」としての美の世界には自ずと差異が生じるでしょう。
私は空海によりアーティスティックな天才というイメージを持ちますし、最澄には不遇の努力家といった感じがします。
その最澄が宗祖となる天台宗、地方にも多く寺院が建てられました。
特に近江、滋賀県は天台寺院の古刹が三井寺をはじめたくさんあります。
織田信長に敵対したことで多くが焼かれてしまったのも天台のお寺でした。
トーハクで二回行われた天台の寺宝を特集した図録です。
天台の寺院って何があるのかな、と思って見てみたら、延暦寺の他に東京の寛永寺や日光輪王寺、福岡の観世音寺、そして兵庫の円教寺とそうそうたる顔ぶれ。
仏画や仏教工芸を含め、目も眩むような美の世界でした。
さて、私がどの仏様を取り上げるのかと言いますと、延暦寺や三井寺の仏像ではなくて。
地方仏が好きなんです。
あのなんとも言えない素朴さ、地域の人たちにひっそり愛されてきた歴史。
展覧会にも多くの地方仏様がいらっしゃっていました。
その中で今回は信州の天台寺院、瑠璃寺のお薬師様を取り上げます。
下伊那郡高森町の瑠璃寺。初めて聞きましたが、大変由緒のあるお寺だそうです。
飯田の元善光寺にもそれなりに近く、中央アルプスを背にする立地のよう。
上の写真はご本尊の薬師三尊様。日光月光菩薩様が脇侍です。
図録だと見開きなせいで中尊様がどうしても見えづらい…。
そこで、秘密兵器に登場してもらいましょう。
長野市内の古本屋で一万円近くで買った、しなのき書房さんの『信州の仏像』です。
この優れものは大きな信州に点在する仏像を網羅的に扱ったほぼ唯一の写真集であり、信州仏の研究第一人者・武笠朗先生の労作になってます。
ここにも瑠璃寺のお薬師様、もちろん載っています。
こちらがそのお姿。
肉付きの良いふっくらとしたお顔立ちの中にも、人々を思いやる憂いがある気がして、とっても好きになりました。
薬師様というと、お祀りされている土地には過去疫病や飢饉が多いということを、以前勤めていた会津の農家の方がおっしゃっていました。
会津は湯川村に勝常寺のお薬師様という東北を代表する仏像が所在します。
このお薬師様のどことなく悲しげな表情にもそう言った苦難の歴史が込められているのでしょうか。
瑠璃寺のお薬師様は割矧造(わりはぎづくり)という特殊な製法を用いて造られました。
説明するとややこしいので上の図をどうぞ。
前から見たら一木でできているように見えますが、実は中は空洞であり、後ろから「蓋板」でくっつけられてあります。
一木造りのようなダイナミックさはありませんが軽量化が実現されており、織田信長に当寺が焼き討ちされた時も、そのおかげで運び出すことができました。
木肌が露出していますが、これは針葉樹のヒノキです。おそらく地元・中央アルプスの山林から伐採したのでしょう。
さて、長くなりましたが、本日も写仏といきましょう。
今日は日本画をやります。またしても初めてです。
日本画、といっても岩絵具を使うのではなく、顔彩というニカワが最初から入っていてすぐ溶かせる具材を用います。
以前披露した顔彩入れ(未だに使ってなかった…)を横に置きます。
パレット・とき皿の替わりに砥部焼を使ったり、筆洗すら無いなど、色々カオスな状態でスタートします。
まずは下描きから。
大雑把に顔や体の位置を決めていきます。
今日も全然削っていないHBのステッドラー鉛筆くんで描きますよー。
続いて絵筆で細い線を描いていきます。
絵筆は湯島の画材屋さん「喜屋」さんでセール買いした、特製のもの。
黒じゃ面白く無いので紫色の顔彩を使用しています。
一通り線が描けましたら、色を塗りましょう。
失敗が怖いので、安牌の黄色から濃い色へと塗り重ねます。
でも仏様って黄色似合いますねぇ。
だいたい塗れたらドライヤーで乾かします。
濡れたまま塗り重ねると、どうしても色同士混ざっちゃうんです。
黄土色を塗り重ね、最後に紫と混ぜて濃い色を使います。
できたら、目と眉を修正、背景も塗っていきます。
完成しました、初日本画です。
ちょっと胸の辺りベタ塗りすぎましたね…。
お薬師様の俯き加減で悩ましい感じはちょっと出ました。
もうちょっと深刻そうなお顔で良かったかも!?
もっと色々な色彩を使ってみたいです。
ちなみにこちらは呉竹筆ペンバージョン。
胴体の着色や筆捌きに満足がいかなかったので、顔彩チャレンジしました。
以上、画伯からの報告でした!
さて、最後に図録にも少し触れておきます。
三年前に開催された「最澄と天台のすべて」展、私も行きました。
展示内容のわりにはけっこうお高いなぁと思って満足はできなかったのを覚えています。
ただ、今図録で見るとすごいですね。京都会場でしか出ない仏様もいらっしゃったようで、先の瑠璃寺のお薬師様は私は拝見した記憶がありません。
東京会場で一番良かったのは上の岐阜・願興寺のお薬師様。どっしりしていて大迫力でした。
こちらは耽美⭐︎イケメン仏。
愛媛・等妙寺の秘仏である如意輪観音様。
新様式である中国・宋の緩やかに佇むスタイルを取ります。
最近知られるようになった秘仏でして、大変状態がよろしいです。
こちらも東京会場では見られませんでした。
貴公子然として岩の上に佇む秀麗なお姿。
切れ長の眼にキリッとした眉❤️
海洋堂がさっそくフィギュアにしてそう。
次回は南都・奈良の仏像を取り上げます。
何になるかはお楽しみに。
最後までご覧くださりありがとうございました。
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