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【超ショートショート】(286)~懐かしい場所、人の思い、あの日のまま~

~テレビ番組~
(男性アナウンサー)
「あなたなこんな不思議な出来事を
ご存じだろうか?
今日はその不思議な出来事を
視聴者の皆さんと一緒に
現場と中継を繋いで目撃していきます。
では、現場の◯◯さん、リポートお願いします」

「はい!こんにちは。◯◯です。
では早速現場へ向かいたいと思います。
カメラさんよろしいですか?」

《カメラマン頷く》

(リポーター◯◯)
「えっ、今日ご紹介します不思議な現場は、
かつて1年中賑わっていた
人工なスキー場“ザウス”でございます。
この“ザウス”の跡地に、
その後いろんな建物が立てられました。
しかし先月、その建物の解体が終わり、
更地になった所、
あるものが発見されて、
その更地を調査されることになりました」

(男性アナウンサー)
「それはどんな調査ですか?」

(◯◯リポーター)
「はい、ここにはずっと昔、
地殻変動を繰り返し、
地下に、まるで人がトンネルを掘ったような
空間がありました。
そのトンネルが解体時に見つかりまして、
その調査をされている所です」

テレビ画面は、
スタジオの出演者を撮影。
リポーターはそのトンネルの入り口まで
急いで歩く。

(◯◯リポーター)
「えーと、はい、
ここがそのトンネルの入り口です」

(男性アナウンサー)
「そのトンネルには
どんな不思議な事があるんですか?」

(◯◯リポーター)
「はい!このトンネルには・・・」

(男性アナウンサー)
「◯◯さん?
ちょっと音声が届いていないみたいです。
一体スタジオに戻します」

(◯◯リポーター)
「%♯*⊇∀♀≒(わかりました)」

映像がスタジオになる。

(男性アナウンサー)
「すみません。中継の状況が戻るまで、
少しお待ちください。その間に、
私から、不思議なトンネルについての
ある噂を話したいと思います」

(ゲスト)
「噂とは?」

(男性アナウンサー)
「はい!気になりますよね。
あの場所にはかつて“ザウス”という
人工のスキー場があったお話は憶えていますか?」

(ゲスト)
「はい」

(男性アナウンサー)
「その“ザウス”を
こよなく愛する男性がいたんです。
その男性は“ザウス”が閉館する時、
あまりのショックだったのかはわかりませんが、
その“ザウス”で最後の日に、
最後のスキーを楽しんで、
帰宅後に病気の発作が起こり、
天国へ行かれたそうです」

(ゲスト)
「なんかかわいそう」

(男性アナウンサー)
「そうですね。その男性と“ザウス”が
地上からなくなってから、
新しい建物に変わっていきました。
ですが、
その新しい建物では、
“ザウス”はどこですか?
と訪ねるスキーヤー姿の男の人がいると
噂になりました」

(ゲスト)
「えっ!お化け?」

(男性アナウンサー)
「そうですね。当時その男性の目撃情報は、
毎日のようにありました。
新しい建物のオーナーが、
そんなにかわいそうな人がいるのかと、
“ザウス”跡地に、
男性の供養のための小さなお寺を
建ててあげたのです」

(ゲスト)
「うわっ!良い人も世の中にはいるものですね」

(男性アナウンサー)
「そうですね。そのお寺の場所から
今回のトンネルが現れたのです」

(ゲスト)
「お寺は?」

(男性アナウンサー)
「お寺はその土地を更地にするということで、
移転しています。まだ現場からの中継には、
時間がかかるようなので、一旦CMを入れますね」

90秒のCMが終わると、

(男性アナウンサー)
「ここでやっと中継が復活したようなので、
◯◯さんに繋いでみましょう!
◯◯さ~ん、お願いしま~す!」

(◯◯リポーター)
「はっ?!はい!すみません。
音声聞こえていますでしょうか?」

(ゲスト)
「聞こえてるよ!」

(◯◯リポーター)
「はぁ~良かったです。聞こえて(笑)
では早速、気を取り直して参りますね。
えーとこちらにありますトンネルが、
先ほど
スタジオで解説されたトンネルでございます。
こちらのトンネルが、実は発見される以前から、
ある男性のある声が聞こえていると、
この一帯の地域の皆さんの
話題になっていたんですね!」

(男性アナウンサー)
「その男性の声とは、
どんなものなんでしょうか?」

(◯◯リポーター)
「はい、その男性の声なんですが、
人工スキー場の“ザウス”のお話に登場した
その男性ではないかと言われております」

(ゲスト)
「その話、さっきスタジオで話してるよ!
“ザウス”好きの男性って」

(◯◯リポーター)
「あっ!そうでしたから(焦)
では、どこからお話すれば?」

(男性アナウンサー)
「そうですね!その男性の目撃談や映像からで」

(◯◯リポーター)
「はい、わかりました。
では、大変長らくお待たせいたしました。
その“ザウス”好きの男性の声を今から
聞いていただきたいと思います。
まもなく夜8時頃には、毎日、
声が聞こえるということなので、
僕もしゃべりませんので、
視聴者の皆さんも耳をすませてみてください」

リポーターの声が静かになると、
スタジオも誰一人声を出さなくなった。

そして、
夜8時を示すテロップが流れると、
トンネル内部にカメラがズーム。

テレビ独特の微音に、
遠くから声らしき音が聞こえてきているように、
誰もが驚きの表情をテレビが写し出す。

夜8時4分辺りで、
スタジオから声があがる。

(ゲスト)
「今聞こえたよね?
何て言ってるかはわからないけど」

(男性アナウンサー)
「私も聞こえました。
でも何て言ってるかはわかりません。
(小声で)◯◯さん!あの~その男性は
何と話しているんですか?」

(◯◯リポーター)
「(小声で)はい!今の中継の声は、
かなり遠くで聞こえたので、
何と話しているのかわからないと思い、
実は、先日とあとこの一帯のご近所の
目撃者の皆さんにご協力してもらいまして、
男性の声と正確な言葉、台詞を
次の映像にまとめてあります。
ではスタジオさん、準備できましたら
流してください」

(男性アナウンサー)
「(スタッフに向かって話しかける)
準備できました?
(カメラ目線で視聴者に話しかける)
はい!準備が整ったようです。
では、こちらをご覧ください!」

テレビにも、
その事前収録された映像が流れる。

映像に載せられたテロップには、

〈男性の姿を見る者もいれば見えない者もいる〉
〈だが、〉
〈声だけは誰でも聞くことができる!〉
〈話しかけられた者は〉
〈会話が出来たという〉

次の映像に男性の声とそのテロップが現れる。

〈ザウスはどこでざんす?〉

スタジオ一瞬固まり、
その次の瞬間、一同に顔を見合せ、
そのまた次の瞬間には、
誰もが爆笑の入り口にいるような
ほころんだ表情を見せた。

映像が終わると、
スタジオが映される。

(ゲスト)
「今のって?(笑)」

(男性アナウンサー)
「あの~失礼ながらに、
番組スタート時にはおどろおどろしく
お伝えしたのとは、
全く違う展開で、正直、
アナウンサー生活約25年も私でも、
とても戸惑っています!」

(◯◯リポーター)
「あの~いかがでしたか?
男性の声と言葉はわかったでしょうか?」

(男性アナウンサー)
「わかりましたが、
あの~、そうですね、一応確認なんですけどね、
お化けなんですよね、男性は?」

(◯◯リポーター)
「はい!そうですね!お化けです(笑)」

(ゲスト)
「お化けでも、
ダジャレ好きなお化けもいるんだね(笑)」

(男性アナウンサー)
「(半笑)そうですね!ウケますね(笑)」

(◯◯リポーター)
「あのですね」

(男性アナウンサー)
「はい、はい」

(◯◯リポーター)
「このお化けの男性なんですが、
この男性と出会えて話せた人、
この男性の姿が見えなくても声を聞いた人には、
実は共通点がありまして」

(ゲスト)
「共通点?霊感があるとか?」

(◯◯リポーター)
「いやいや、霊感は関係ありません。
現に今、霊感のあるなし関係なく、
この番組を見ている皆さんに等しく
男性の声が聞こえたと思います」

(男性アナウンサー)
「あー確かにそうですね」

(◯◯リポーター)
「実はこの“ザウス”好きの男性の声を聞いた誰もが、
その後、良縁や成就など、何かしらの良いご縁に
恵まれているんですね」

(ゲスト)
「えっ、何それ~」

(◯◯リポーター)
「そうですよね。驚かれますよね」

(男性アナウンサー)
「えっ、じゃあ、つまり、
今日番組をご覧の皆さんにも、
良いことがあるということですか?」

(◯◯リポーター)
「はい!おっしゃる通りです!」

(男性アナウンサー)
「では、どんな良縁、ご利益があったんですか?」

(◯◯リポーター)
「一番わかりやすいのが、結婚ですね。
その他ですと病気の回復や子宝に恵まれた、
起業が上手く出来たとか、
給料が上がったとか、
子供の頭が良くなったとか、
行きたい学校に行けたとか、
スポーツで優勝出来たとか、
ジャンルを問わず、
何でも叶ってしまうようです」

(男性アナウンサー)
「何でもというのはすごいですね。
つまり男性のために作らたお寺も
同じご利益があるんですか?」

(◯◯リポーター)
「はい!あります」

(ゲスト)
「え~行きた~い!」

(男性アナウンサー)
「今はそのお寺は?」

(◯◯リポーター)
「お寺は移転しまして、それから、
実は場所が非公開になりまして」

(男性アナウンサー)
「なぜ非公開に?」

(◯◯リポーター)
「はい!実は、この更地に、
新しい施設が立てられるのですが、
その施設の中に新たな“ザウス”人工スキーと
お寺が立てられる事になっています」

(ゲスト)
「ザウス復活?」

(◯◯リポーター)
「はい!ザウスが復活します」

(男性アナウンサー)
「それは凄い!男性の執念、
または怨念が叶うんですね」

(◯◯リポーター)
「はぁはぁはぁ、怨念って(苦笑)」

しばらくやり取りが現場とスタジオで行われた後
180秒の長いCMが流れた。
そして、
番組の終盤、思いがけない事が起こる。
CM明けは
スタジオの男性アナウンサーのワンショットから。

(男性アナウンサー)
「でも、今日は、
いくつか不思議なお話をお伝えしましたが、
ダジャレを言うお化けにはとても驚きましたね」

(ゲスト)
「なんか親近感があって、全然怖くなかった(笑)」

(男性アナウンサー)
「私もです。全く怖くない。
それどころか、お化けが
こんな楽しいお化けであってほしいとさえ
思ってしまいました(笑)
では、最後にもう一度、
現場と繋いでみたいと思います。
◯◯さ~ん?」

(◯◯リポーター)
「はい!◯◯です。」

(男性アナウンサー)
「今日はいかがでしたか?現場に居て」

(◯◯リポーター)
「そうですね。とても懐かしかったです」

(ゲスト)
「懐かしい?」

(◯◯リポーター)
「はい!久しぶりにザウスに会えたみたいで(笑)」

(男性アナウンサー)
「◯◯さんもザウスに通われていたんですか?」

(◯◯リポーター)
「はい!双子の兄と通っていました」

(男性アナウンサー)
「うん?双子の兄と?」

(◯◯リポーター)
「はい!双子の兄とです(笑)」

(男性アナウンサー)
「えっと、一つ確認なんですが、
双子のお兄さんは今もご健在ですか?」

(ゲスト)
「えっ、なんか怖い」

(◯◯リポーター)
「双子の兄ですか?」

(男性アナウンサー)
「はい!」

(ゲスト)
「えっ~なんか嫌だ~」

(男性アナウンサー)
「ちなみに、その、
今日のザウス好きの男性のお名前は
何と言います?」

(◯◯リポーター)
「◯◯です!」

(ゲスト)
「ギャー、嫌だいやだ」

(男性アナウンサー)
「えーと、(ゲストに向かって)慌てないで
一体冷静に整理しましょう。
ではリポーターの◯◯さんと
同じ名字でよろしいですか?」

(◯◯リポーター)
「はい!同じ名字です!」

(男性アナウンサー)
「では、リポーターさんの双子の兄さんの
したのお前は?」

(◯◯リポーター)
「✕▲です!」

(男性アナウンサー)
「で、◯◯リポーターさんのしたの下の名前は
✕■ですよね?」

(◯◯リポーター)
「はい!そうですね。兄とは1文字同じなんです」

(男性アナウンサー)
「では、今日リポートしていただきました
ザウス好きの男性の下のお名前はわかりますか?」

(ゲスト)
「えっ、怖~い」

(◯◯リポーター)
「✕■です!」

スタジオから悲鳴が上がりパニックになる。

(男性アナウンサー)
「番組の最後に大変な展開になりました!
では、あの~◯◯リポーター?」

(◯◯リポーター)
「はい!」

(男性アナウンサー)
「あなたはザウスが好きですか?」

(◯◯リポーター)
「はい!こよなく愛しております(笑)」

(男性アナウンサー)
「では、あなたは何歳ですか?
今現在」

(◯◯リポーター)
「今は29歳です!」

中継映像から完全にスタジオの映像に切り替わる。

(男性アナウンサー)
「いやいや驚きました」

(ゲスト)
「えっ?何?」

(男性アナウンサー)
「実はですね、ザウス好きの男性が
亡くなった年齢は29歳なんですよ!
ですが、◯◯リポーターの年齢は、
見た目もそうですが、手元の資料には、
70歳とあるんです」

(ゲスト)
「えっ?それって?リポーターさんが
憑依されてるってこと?」

(男性アナウンサー)
「いやいや、私は専門家ではないから、
何とも言えません。あっ!ただ、
確認できる方法が一つあるんです」

(ゲスト)
「◯◯さんがお化けかどうか?」

(男性アナウンサー)
「はい!では、ちょっと試してみましょうか。
◯◯リポーター?」

(◯◯リポーター)
「はい!」

(男性アナウンサー)
「あのですね、ザウス好きの男性が、
最期にザウスで食べた物は何かご存じですか?」

(◯◯リポーター)
「はい!もちろん!わかります!」

(男性アナウンサー)
「それは?」

(◯◯リポーター)
「あの~僕を試してもムダですよ!
だって僕は今は、皆さんの後ろに居るんですから(笑)」

ゲストの女性が振り替えると、
ザウス好きの男性が立っていた。

スタジオ中がパニックになり、
急いでCMに突入。
番組はお詫びのテロップが流れ
そのまま放送終了。

後日、
番組に出演したゲストが結婚を発表したり、
番組を見た視聴者からも
ご利益があったという歓喜のコメントが
SNSで大拡散。

それから数年後、
ザウスの場所に巨大ショッピングモールが完成。

もちろん一番の話題は、
〈会えるお化け〉

(男性アナウンサー)
「あなたも一度会ってみるといい!
そしてザウスを楽しんでざんすで
ご利益を呼びましょう(笑)」


(制作日 2022.7.31(日))
※この物語はフィクションです。

今日のお話は、
だいぶ長くなってしまいました。

お話に登場するザウスは、
CHAGE&ASKAのデビュー15周年の年の
1994年にファンクラブ会員に届けられた
〈CD〉 。

チャゲアス二人がお話してるだけの、
ラジオ番組みたいな〈CD〉 。

そのお話の中にザウスが登場したので、
今日のお話を考えてみました。

私はザウスには行ったことはないですが、
人工で室内でできるスキー場というので、
オープン時などには話題になったかと思います。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/






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