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【超ショートショート】(83)~線香花火の憧れ~☆ひとり咲き☆

線香花火は、
打ち上げ花火に憧れた。

一度に、多くの人を魅力する
その迫力、
到底、線香花火では叶うはずもない
空一面の大輪。

打ち上げ花火の職人が、
打ち上げ花火を作りながら、
こんな話をする。

僕らの花火は、
結局、打ち上げて見ないことには、
その美しさを確認することができない。

それは、
線香花火も同じだった。
線香花火の職人は、
一つ一つの線香花火の紙をよりながら、
どんな色合いになるのか
想像することしかできない。

打ち上げ花火は、
もともと線香花火を大きくしたようなもの。

火花があちらこちらと遊ぶ線香花火は、
打ち上げ花火からしたら、ライバル。

あんな小さな姿で、
人を和ますことができる線香花火。

とても静かな音だから、
小さな子供を泣かせない。


夕暮れが、秋の空のように、
上空を通過する旅客機の腹が見える夏の終わり。

花火職人が一同に集まり、
花火談義に花を咲かせてる。

もうまもなく日の入りの暗がり、
花火職人たちは、
我が子とも言える自分の花火たちに、
最後のお別れをする。

打ち上げ花火なら
「今年もちゃんと大輪を咲かせろよ!四尺玉!」

線香花火なら
「今年もちゃんとまず火がついたら燃えるよ!」

花火にそれぞれの役割を話し終えると、
各々職人たちは定位置にスタンバイ。

そして、
辺り一面漆黒の夜空になる頃、
最初の打ち上げ花火が上がった。

同じ頃、
打ち上げ花火を見に行けない人々には、
ささやかな贈り物の線香花火が届き、
さっそく火をつけてみた。

打ち上げ花火を見上げる者も、
線香花火を見つめる者も、
皆、花火の光に顔を彩られ、
ほわぁんと、
初恋でもしたような穏やかな笑みを浮かべる。

だが、今日は1人だけ、
泣きべそをした恋する乙女がいた。

花火たちは、彼女の気を引くために、
色とりどりのナイヤガラの滝や、
変わり種の打ち上げ花火を披露するも、
泣きべそはより一層泣きべそに。

そんな様子にしびれを切らした花火職人は、
ついに爆音のする四尺玉を、
次々に打ち上げた。

すると、泣きべその恋する乙女は、
四尺玉の爆音に自分の鼓動奪われるように、
少しずつ少しずつ肩の力を抜き、
打ち上げ花火の美しさに心を許していった。

家に戻ると、
打ち上げ花火の余韻を楽しむように、
誰かの置き忘れの線香花火に火をつけた。

四尺玉の雄大さに心が奪われていたが、
線香花火は、炎の揺らぎのように、
ぼーと見つめているだけで、
癒しが生まれ、涙を流すことを、
火が付いているうちは、許してくれた。

恋する乙女には、
四尺玉ほどの恋が、
打ち上げ花火のように燃えて散ってしまった。

でも、乙女は、
次に咲く恋の花を持っていた。

「でもね!でもね!
私、ひとりで咲きたくない!」

誰かと一緒に咲いてみたいと、
ひとり咲きの恋の夢を、
夏の終わりの夜空に
誓って見せた。


(制作日 2021.8.25(水))
※この物語は、フィクションです。

今日8月25日は、
CHAGE&ASKAのデビュー記念日!
今年で「42周年」を迎えます。

デビュー曲の『ひとり咲き』を今日は参考に、
散文詩のような話を書いてみました。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
CHAGE&ASKA 
『ひとり咲き』
作詞作曲 飛鳥 涼
編曲 瀬尾一三
(1979.8.25発売)
YouTube
【CHAGE&ASKA Official Channel】
『ひとり咲き』ライブ映像
https://m.youtube.com/watch?v=5Hy0D0MhvoE

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