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【超ショートショート】(121)~愛想い 古(いにしえ)の真心 叶うなり~☆『平安神宮 月夜の宴』(2010.10.2(土)野外ライブ)☆ASKAゲスト出演☆

きみは、知ってるかい?
まことしやかに伝えられている、
あの話を・・・。

昭和のある年に、
京都の平安神宮を訪れた複雑な事情を抱えた
男女(ふたり)がやって来たんだ。

男女(ふたり)は自分たちの住まいから
遠く離れた京都の地で羽を伸ばそうとしていた。

それもあって、
人の目も気にすることなく、
腕を組んだり、手を繋いだりと、
何処にでもいる学生カップルみたいに、
イチャイチャしていた。

そんな男女(ふたり)が、
京都の桜の観光名所である
平安神宮を訪れ、大極殿(本堂)でお参りをし、
おみくじを引いてみた。

するとこんなことが書いてあった。
~~~~~
急(いぞ)がず濡(ぬ)れざらましを
旅人の後(あと)よりはるる
野路(のじ)の村雨(むらさめ)

「雨が降ってきたと旅人が、
急いで行く、村雨はすぐ晴れる、
旅人も落ち着いて居(お)れば
濡れないものを」

つまり、
「急(せ)いては事を仕(し)損じる」

人はよく目的に向かって事を急ぐが、
往々にして失敗することも多く、
何事を為(な)すにも、
余裕を持って行うのが良い。
常に先を読む心を養う事こそ
成功の早道である。
~~~~~

男女(ふたり)は、
このおみくじの言葉に驚いた!
まるで自分たちの関係を
見透かされているようだと。

さてここで、
複雑な事情を抱えた男女(ふたり)について
お話する必要が出てきたので話してみよう。

男女(ふたり)は、
「複雑」や「事情」とあるからには、
良からぬ大人な関係と誰もが予想するだろう。

だが男女(ふたり)を端から見たら、
おそらく若いお父さんと
その娘にしか見えないだろう。

つまり、
男女(ふたり)の歳は親子ほど違ったのである。

この平安神宮を訪れた時の男女(ふたり)は、
それぞれ30歳と10歳。

こんな男女(ふたり)が
大人な関係になれる訳がなかった。
それも男女(ふたり)はわかっていた。

では、なぜこんなに歳の離れた
男女(ふたり)が付き合っているのか?

それは、ふたりの前世に秘密があった。

1895年、明治28年、
ある身分の違う男女が、
京都の鴨川に身投げした。

男女は、身分のほかに歳が
10歳離れていたことから、
呉服屋の若旦那の嫁に、
農家の娘は相応しくないと、
結婚を反対されること3年の月日が過ぎていた。

そんな男女が平安神宮の桜が咲く日。
平安神宮の裏手にある神苑にやって来た。
男女が訪れたのは早朝ということもあり、
人目もなく、ゆっくり散策しながら、
ある決意を鎮めるために、
適切な場所を探していた。

男女が白虎池の近くの木の下に、
ある約束事を書いた手紙を、
土の中に埋めた。

そして、男女はこう約束を確認した。

「もしまた生まれ変わったら、
もしまた生まれ変わって再会できたら、
もしまた生まれ変わって付き合ったら、
ここに来て僕たちの運命を確認しよう。
もしこの場所をそれぞれに訪れ、
見つけることができたらならば、
今度こそ、何があっても一緒になろう。
だから、来世での待ち合わせ場所は
ここだよ!」

そんな約束の言葉を男が話すと、
女が復唱した。

そして男女は、
最後のこの世の桜を見るために、
神苑の栖鳳池(せいほういけ)へ。
ここでふたりは、泰平閣の橋の上から、
肩を寄せ合いながら、
遠くの桜と池の風景を慈しむように眺めた。


さてさて、
時代を昭和に戻すと、
親子ほど歳の離れた男女(ふたり)は、
鴨川で見投げした男女だった。

一般的に、
こんなに短い期間での生まれ変わりは
稀(まれ)。

明治時代の男女が、
あの世でどんなお願いをして、
昭和に生まれてきたのかは、
千本通沿いにある千本閻魔(えんま)堂の
閻魔様も詳細は内緒と教えてくれなかった。

だが、祇園にある恵美須神社の恵美須様が、
ある取り計らいをしたと、
舞妓衆が噂を立てていた。

昭和の男女(ふたり)は、
平安神宮でおみくじを引いたあと、
それぞれに時間をおいて神苑に入場。

最初に10歳の女が、
そのつぎに30歳の男が、
前世で約束した場所を目指して歩いた。

男女(ふたり)が待ち合わせ場所で
再会したのは、
女が入場してから1時間後。

男女(ふたり)は「一斉のせっ!」と、
それぞれの人差し指で、
あの手紙を植えたの木の下を指した。

もちろん同じ木の下に
指を指した男女(ふたり)は、
笑顔で顔を合わせ、
慌てることなく、
木の下の土を掘った。

そして男女(ふたり)は、
前世で最後に桜を見た泰平閣の橋に来ると、
肩を寄せ合いながら、
手紙を読んだ。

~~~~~
来世では、
必ず結婚することを誓う
~~~~~

とても短い文面に、
男女(ふたり)は笑った。

そして、
再び約束をする。

「またここに一緒に来よう!
そのときは絶対結婚していよう!」


それから、
10年後、女が20歳になった。
男女(ふたり)は、2月に、
平安神宮を再び訪れ、
あの想い出の神苑の泰平閣の橋の上で、
男がプロポーズをした。

そして、桜の季節の4月に、
男女(ふたり)は平安神宮で挙式を上げ、
鴨川が見渡せるホテルの一室で、
初めて男女(ふたり)だけの
特別な時間を過ごした。


最初にお話した
まことしやかに伝えられている
あの話とは、平安神宮の絵馬のこと。

あの絵馬の絵柄は、
男女(ふたり)の想い出の神苑の泰平閣。
桜も描かれている。

この絵馬に恋愛成就のお願いを書いて、
大極殿にお参りし、神苑の泰平閣を、
その願い事を祈りながら歩き、
帰りに、絵馬を奉納すると、
どんな苦難にある男女(ふたり)でも、
いつかはその恋愛を成就してくれると、
舞妓衆が噂をしている。
彼女たちにとって、
恋愛成就は容易ではない。
何世になって、世の中が巡って、
自身が生まれ変わっても、
添い遂げたい男(ひと)とは、
何としてでも添い遂げたいと
いつの世も祈り続けてきたからだ。

もし恋愛に苦しみがあるならば、
もしそんな男女(ひと)を好きになったならば、
もしこの世で叶いそうでないならば、
嘘だと想って平安神宮に来てみるのも
悪くないかもしれない。

今のきみの恋愛は?
苦しいかい?楽しいかい?幸せかい?
寂しいかい?


(制作日 2021.10.2(土))
※この物語はフィクションです。

今日のお話は、
2010年10月2日開催された
『平安神宮 月夜の宴』
このライブに、ASKAさんがゲスト出演。

その想い出の平安神宮にちなんで、
今日のお話になりました。

平安神宮にどんなご利益があると
伝えられているのか?
ちょっと忘れましたが、
ご利益を抜きにしても、
とても素敵な所です。
春の桜の季節には、
ぜひ訪れて頂きたい神社です。
またお話に登場したおみくじも、
読みやすく優しさを感じる文字です。
ぜひ記念に引いて見てください。

恋愛はいつの世も難しいものですね。
(笑)。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にしたライブ
2010.10.2(土)開催
京都・平安神宮
『平安神宮 月夜の宴』
ASKAさんゲスト出演
☆ASKAさんのセットリスト
『はじまりはいつも雨』
『C-46』
『月が近づけば少しはましだろう』
『めぐり逢い』

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