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逃げ水

みどりは、小学校のときは路線バスに乗って、3キロほど離れた小学校に通っていた。
田舎なので、バスの1日の本数も少なく、下校時間とバスの時間が合わないと、次のバスまで1時間以上も待つことに…
そんなときは、みどりは歩いて帰る。
一緒に帰る友達と道草をしながら。
ザリガニやクワガタやカブトムシなんかを取りながら。

真夏の炎天下、舗装道路を歩いていると、よく遠くに水たまりのようなものが見えた。
その水たまりは、なんかゆらゆらと揺れている。
不思議なことに、歩いても歩いても、その水たまりは、みどりから逃げていく…
何度やっても決して追いつくことができなかった。
みどりにはとても不思議に思えた。
家に帰ってお母さんに聞いたら、それは「逃げ水」と言うらしい。
みどりはお母さんが説明してくれても理解できなかった。

中学生になった頃、「逃げ水」というものが蜃気楼の一種だと理解することができた。
みどりの心の中から、「不思議なこと」がまた一個減った。

大人になった今でも、みどりは逃げ水を見つけると、走って追いかけたい気持ちになる。

私の夢も、逃げ水と同じで、決して追いつけないものなのかな?
それとも、いつかは追いつくことができて、夢か叶うのかな…