見出し画像

お米をテーマにモノを売ることについて考える(6)~買い物を面白い体験に

新型コロナウイルスの感染が拡大して、もう随分と時間が経ったような気がします。もはやウイルスと共に生きる時代になりました。緊急事態宣言が続いているので、我が家も繁華街へは出かけず、地元をお散歩する日々です。

すこし前のこと、自動販売機(以下、自販機)で水を買おうとしたら、「ちょっと待って」と夫がスマートフォンを取り出しました。そしてシュッと画面を操作。すると自販機に触れることなく、ペットボトルがゴトンと出てきました。えっ?なんか面白い!「自販機とアプリが連動していて、携帯の画面から選んで買えるんだよ」と夫が教えてくれました。

自販機といえば、食べ切りサイズのお米の自販機を設置するお米屋さんが増えています。例えば川崎市のA米店では、飲料用の冷却自販機を転用してペットボトルに詰めたお米を販売しています。横浜市のB米店では、コインロッカータイプの自販機て、お米といっしょに養鶏所の卵も販売しています。

自販機はお米屋さんからすると、営業時間に関わらず商品を販売できるという利点がありますよね。他方、お客様からすれば、いつでも買えるという便利さや非対面で買えるという気軽さがあります。でもお客様が自販機を利用する理由はそれだけでしょうか。

米国FOXニュース(2020年7月20日電子版)で、面白い自販機を2つ紹介していました。ひとつは「ブレッドポット」といい、店頭で機械が食パンを製造して焼きたてを販売するという大型自販機です。店員が左端の漏斗に小麦粉をセットすると、粉の捏ね、成形・発酵・焼成が1レーンですべて自動的に行われます。この製造レーンがガラス張りで、ビジュアル的にとても面白い。パンが焼きあがると右端のブースにこれも自動的に陳列されます。お客様は購入ボタンの操作でパンを選び、自分で取り出します。いわば、工場見学付きのお買い物です。

もうひとつは、サラダ自販機の「サリー」。大きな試験管みたいな縦型の透明チューブが何本も並んでいて、中には色とりどりの野菜や具材が入っています。お客様がメニューを選ぶと、その試験官がぐるぐると回ってサラダが自動的に作られます。面白いのは、材料から調理の様子まで、すべてが見えるようになっていること。サリーは新鮮な作りたてのサラダを、非接触・非対面でカスタマイズ調理・購入できるので、学校や病院、スーパーなどで大人気だそうです。

ニュースではこの2つの自販機を、製造・梱包などの作業や配送の省人化の観点から紹介していました。が、この自販機の新しさはそれだけではありません。お客様に「見せる」ことで、お買い物をより魅力のある体験にしていると言えます。

近年、「買う」という行為は単なるモノのやり取りだけではない、と考えられています。お客様は商品に、
アクセスし(知る)→ 選択して → 購買 し→ 消費する
という一連の体験をしているのです。こうした「顧客体験」を重視する米国では、自販機にもその要素を取り入れているというわけです。

自販機は効率性を上げる一手段です。加えてコロナ禍で非接触・非対面という点が着目され、自動化の流れに拍車がかかっています。
たしかに自販機には対面販売のような、会話や笑顔といった温かみはありません。でも、例えばカプセルトイのガチャガチャを思い出して欲しいのですが、機械から買う体験には、人間相手とは別の「なんか面白い」というワクワク感があるのではないでしょうか。

画像1

お米の近未来の自販機を想像してみますね。機械に好きな玄米を入れてスイッチオン。すると、ザサッと精米が始まって、すぐさま水といっしょに釜でグツグツと炊飯される(しかもその様子が丸見えになっている)。そうして10分ちょっとで炊きたてのホカホカご飯が出てくる…そんな自販機が開発されたらどうでしょう。便利でおいしくて面白い!きっと走って買いに行っちゃうかも。ではまた次回まで、ごきげんよう。


~たにりり(お米サービスデザイナー・商経アドバイス契約コラムニスト)
「料理がわかるごはんソムリエ」として、お米に携わっている人・毎日お料理する人を応援しています! ◆著書「大人のおむすび学習帳」


※このコラムはお米の専門新聞「 商経アドバイス 」2020年8月11日号に掲載されたものを一部改編して掲載しています。最新号はぜひ購読してお読みください。お米屋さん向けに書いていますが、農家さんなど直販生産者やお米以外のモノを売っている方にも、何かしらのヒントになると思います。よかったらどうぞ続けて読んでくださいね

※題字とイラスト: ツキシロクミ


よかったらサポートお願いします!取材費に大切に使わせていただきます!