怒ることを我慢しないこと、そして誰かにその怒りをむやみに向けないこと
自分の人生は、けっこうあの新型ウイルスに影響された。
大学4年生のときで、就職活動とぶつかった。
そもそも就職せずに舞台の世界に行こうと思っていたけれど、突然方針転換をして就職をすることにした。
大好きだったバイトも契約が満了になった。
初めてアイドルのオタクをやったのに、周年コンサートはオンラインになり、翌年に解散した。推しの名前を大声で叫ぶことはなかった。
就職をした結果、創作活動に時間を傾けられたのは不幸中の幸いとも言えるかもしれない。
でも2020年からの3年間くらいに、自分の中ではっきりとした諦観が育ちきってしまった。
誰も悪くない。
怒っても何も解決しない。
ならば今できることを一つ一つやっていって、何かのタイミングを待つしかない。
そのタイミングは来ないかもしれない。
だからもういいよ
怒ったり、イライラしたりするエネルギーは、別のことに使っていこう。
いつの間にか、心が凪いでいることが良いことになっていた。
2023年。
母が突然、某大手アイドル事務所に所属しているアイドルの沼に落ちた。
そしてコンサートに行ってきた。昼夜公演で。
当時実家にいたのでその感想を聞いたら、名前を呼んだらファンサをもらえた、というものだった。
好きな人のことを大声で呼べるというのは、本当に幸せなことなのだ。ぼくだって、大きな声で、推しの名前を呼びたかった。
「呼んだらこっち見た!」の経験が欲しかった。
もう、アイドルではなくなってしまった。
その時に、3年間で初めて、かなりはっきりと
「ああ、あの感染症が憎い」と思った。
それと同時に、怒るという気持ちを忘れてしまっていたと思った。
怒ったほうがいい。
嫌なことや、嫌いなことに対して、正しく怒れるようにいたい。
そして例え誰かが原因だったとしても、その人を殴りに飛び出していかない。
人を傷つけないことや、批判をしないことと怒らないことは違うと思う。
怒らないと、心をどんどん錆びつかせていく。生きていく気力が、むしろ失われていく。
だから、憎いと思うものに対してちゃんと「憎い」と言いたい。
そしてその気持ちを誰かにぶつけないようにしたい。
SNSって、そもそもそういう場だった。
ポジティブでもネガティブでも、同じ気持ちの人と手を繋いで楽しく過ごす場所だった。自分と違う考え方の人を見つけて、仲間と結託して殴りにいく場所ではなかった。いつの間にか、怒ったら負けみたいな空気になってきた。
正しく怒って、いつも心をピカピカにしていたい。
むかついてるよ、なんだよ、
だから取り返しに行くよ、そろそろ。
いただいたサポートでココアを飲みながら、また新しい文章を書きたいと思います。