122 / 草原で面白くない小説を読んだ日

信頼関係。リードのついていない白いポメラニアンと、その前を歩くおばあちゃんを見てこの四文字が頭に浮かんだ。犬の散歩は飼い主がリードを握るもの。でも信頼関係があれば、必要ないらしい。

この白いポメラニアンは、何日か前に座ってるぼくのところに寄ってきた。頭を撫でてあげた。

「あら、ごめんなさいねえ。この子人のことが好きでねぇ。犬はお好き?」
「あ、はい。犬好きですよ」
「あらそれならよかった。たまに嫌いな人もいらっしゃるから」

おばあちゃんとそんな何気ない会話を交わして、「さ、おいで。」というおばあちゃんの後をつけて、白いポメラニアンは歩いて行った。

リードをつけずに散歩をしている人を他に見かけたことがなかったから、今日見かけた時も、あの時の白いポメラニアンとおばあちゃんだとすぐにわかった。

ぼくが今毎朝散歩している場所はとても広い。公園というより、草原。太陽が眩しい光を浴びせてくれて、遠くにはゆっくりと橋の上を渡っている車が見える。橋の下には大きな川が流れる。

ここに来ると、部屋に閉じこもって一日中画面を見つめていることが本当に愚かで、ばかばかしくて、人生を損しているのだと知れる。そして毎回後悔する。ああなんで今日もっと早くここにこなかったんだ、と思う。

目覚めるのが昼過ぎなので、調子がよければ13時頃ここに来る。調子が悪ければ、15時頃。体感的には朝散歩なのだけど、世間的には全く朝じゃない。この時間帯はみんな仕事をしているのだろうけど、意外とベンチで本を読んでいる人がいれば、今日みたいに白いポメラニアンとおばあちゃんが散歩していたりする。

今日は読みかけの小説を持っていって、この草原を歩きながら読んだ。たまに大きな岩に座ったり、大量の羽虫に「ああくそしね!」と叫んだり、犬と走り回る人を見て犬飼いたいなあと思いながら、小説を読み終えた。

小説が全然面白くなかったので、ふざけるなと思った。300ページほどの小説だった。途中から、面白みのない、変わり映えのない今の自分の毎日のようなこの文章を誠実に読んでいく気になれなくて、速読でビジネス書を読むかの如くストーリーだけを把握しつつなんとか読み終えた。面白くなかった。

もしかしたら、「小説家として、長めのちゃんとした小説を書き切らなければならない」という実力のない小説家志望のエゴにまんまと付き合わされてしまったのかもしれない、と思った。

これまで読んできた時間を返せ!こんなもん短編小説集の一つに収まるだろ!とも言いたくなって、この辺で我に返った。いやいや、かといって自分がまともな文章を書けるわけでもない、と少し弱気になった。

まあ自分のことは一旦棚にあげるにしろ、せめて文章を読んでもらった後に、がっかりさせたり、不快な気持ちにさせてしまうような人間にはなりたくないと素直に思った。ので、少しでも文章力みたいなものをつける努力をしようと今これを書いている次第だ。

しかしこの今書いている文章もまた、人をがっかりさせたり、不快にさせてしまうようなものなのかもしれない。読んでくれている方を、文章力をつけるためのエゴに突き合わせているだけの結果になっているのかもしれないなと思い、怯えながらカタカタとタイピングする。

いつか、自分の文章が紙の本という形にできることを夢見て、コツコツ、カタカタと自分の文章を積み重ねていきたい。

今日は駐車場で開いていないビスコを拾って、食べた。
本屋に行って、気になる本をただ立ち読みした。
時間も他人も解決してくれないのだから、結局自分が行動するしかないのだと思った。

生きているのではなくただ死んでいないだけの人生を、自分から変えにいかなくてはならない。

そんなふうに強く思った、今日の日記。


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