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【ドラフト戦線】なぜ入札1位が椋木蓮なのか?

プロ野球・ドラフト会議が行われてから2週間が経ちました(早くね?!)。

改めて考えてみると、例年の傾向からは予想もできないような指名も多かったですね。今回良い順位での支配下指名を掴んだ選手も巡り合わせによっては指名漏れしていただろうと感じますし、反対に今回は不本意な結果になった選手も、ボタンの掛け違い次第では上位指名もあっただろうとも思いました。

かくいうオリックスは、入札の1位に、東北福祉大・椋木 蓮(むくのき れん)投手を単独指名。
"高卒投手Big3" の呼び声が高かった小園 健太(市立和歌山高→DeNA①)、風間 球打(ノースアジア大明桜→ソフトバンク①)、森木 大智(高知高→阪神①)や、即戦力の先発左腕が大方の予想だっただけに、この指名には自分も『ほおおお!!w』と驚かされました。

では、なぜオリックスは1位に椋木投手を指名したのでしょうか。今回のnoteは指名に至った経緯を予想してみようと思います。


① 『先発』椋木と『中継ぎ・抑え』椋木の二面性

所属先の東北福祉大での指名挨拶にて、オリックス側が椋木を指名した理由として挙げたのが『先発・後ろの両睨みで考えた中で1番良かった』というものでした。

2つ上には津森 宥希(現ソフトバンク)が、1つ上にも山野 太一(現ヤクルト)といったNPB上位指名を受ける大エースがおり、下級生時には中継ぎとして彼らを見ながら実戦経験を積んでいた椋木。
18年春〜20年秋の2年(新型コロナでシーズン立ち消えなどがあったため)で 45.1イニング・53奪三振・自責点2 防御率0.40と地方リーグではありながらも無双状態のスタッツを残し、『中継ぎ・抑えとしての適性』を目に見える形でアピールしています。

先発でも、下級生時の中継ぎ登板での姿と変わらぬ無双状態を披露し、『先発としても起用できる』ことを証明しました。
牧田スカウトが言うように『余力を持ってストライゾーンに投げ込めているのは1つの成長』という言葉も、先発転向後の4年生での与四球率1.78 奪三振率14.72の圧巻のスタッツを見ると実感がこもります。
簡単に追い込んで三振も取るうえに四死球は殆ど出さないことの裏付けです。


もちろん、他のドラフト候補にも先発・中継ぎともに熟すことを期待できる存在は居ました。
例えば、山田 龍聖(JR東日本→巨人②)投手は、昨年のOP戦・JABA伊勢松坂大会辺りからリリーフで投げ始め、今季はプロ入りした伊藤 将司(阪神)の穴を埋めるかの如くエース格の働きで都市対抗本戦を掴んでいます。
圧巻のストレートに変化球も今年一気に良くなってきた投手ですが、それをNPB水準でも障壁なくできるか?を証明するには決定的な材料が欠けたと考えています。

黒原 拓未(関西学院大→広島①)も、下級生時から大エースとして支えた "関西No.1投手" です。
彼もまた小柄な身体ながらスムーズなメカニクスで打者を抑える好投手なのですが、軸とする変化球の球速帯(チェンジ・カット・ツーシーム)が120km/h後半〜130km/h中盤でまとまっていることもあり、現地で観たときには中継ぎに落ち着く選手なのかな?と感じました。

これに対して椋木の場合は、スライダーのように入ってくる軌道から急激に沈んでいくチェンジアップと、横変化成分が強く想像より入ってくるスライダーとの偽装術での出し入れが "先発としても中継ぎとしても通用する武器" として考えやすいですし、スピンレートが高くサイド・3クオーターの中間位置から噴き上がるように見えるストレートも、高めストレートを意図的に組み込む配球を展開するオリックス投手陣のトレンドとも絶妙にマッチしています。
本拠地の大阪ドームは比較的投手有利な球場で、フライ生産を相殺しやすい球場特性でもあり、この点でもスピン量の多いストレートは、先発・中継ぎのどちらで考えても有効でしょう。

この観点では、現時点では黒原・山田ら他の即戦力候補よりも、椋木の方が『先発としても中継ぎとしても考えやすい』強い根拠になると考えています。


② 既存の先発との棲み分け

バラエティー豊富な若い投手を複数保有し、先発防御率3.33はパリーグ1位・12球団でも2位(1位は阪神)と圧巻のオリックス先発陣。
低迷していた昨シーズンまでも、先発投手陣に関しては良い投手が揃っていると定評でしたが、今シーズンは高卒2年目の宮城 大弥が13勝で新人王決定的と更に強化された印象を受けます。

↓オリックス先発陣↓
・山本 由伸(23) 18勝5敗 193.2回 ERA1.39
・宮城 大弥(20) 13勝4敗 147回    ERA2.51
・田嶋 大樹(25)   8勝8敗 143.1回 ERA3.58
・山岡 泰輔(26)   3勝4敗   69.1回 ERA3.89
・山﨑 福也(29) 8勝10敗 116.1回 ERA3.56

この投手陣は、若いこともそうなのですが、バラエティーの豊富さが1番の特徴だと思っています。

エース・山本 由伸は、Max158km/hのストレートに "どの球種もが決め球にもカウント球にもなる" 変化球を武器とする本格派右腕。
そこに対になる宮城 大弥は、Max153km/hのストレートを高いコマンド能力で突き、スライダー・カーブ・チェンジと変化球も洗練されている本格派左腕。

今季は故障離脱で後半戦全休も、山岡 泰輔はスラッター・パワーカーブ(=縦スライダー)・チェンジの出し入れが絶妙な技巧派右腕。
そこに対になる田嶋 大樹は、独特なアームアングルからスピン量の多いストレートと、変化量も独特のカット・フォーク・カーブで抑える技巧派左腕。

そして球速は遅くとも老獪なピッチングで抑える左腕の山﨑 福也や、190cmの長身からのストレートで制圧する右腕の山﨑 颯一郎と "一人一人が明確な武器を持っている" 投手が控えていて、(左右関係なくとも)彼らと被らないタイプの先発投手が欲しいと考えるのは自然な思考でしょう。

椋木の、サイドとスリークォーターの中間地点から投じる、Max154km/hのストレートとスライダー/チェンジアップ/シンカーとの偽装術が魅力という投球スタイルは、既存の先発投手に混ぜても交わらない『椋木の明確な武器』であり、《オリックスに絶妙にマッチした即戦力選手を1位で獲得できるのが決定的》な状況ですから、1位椋木は個人的には強く頷ける選手です。

なお、このことを週刊ベースボールは "本命" としてオリックスに薦めており、理由もその通りとしか言えないので、脱帽ですね(;_;)
※ソフトバンク・ワイモバイルの方は電子書籍ですが無料で読めるみたいです


③ 既存リリーバーはどう思う?

一方で、中継ぎ防御率も3.33でパリーグ5位と課題が残った今シーズン。
『3連投以上は絶対にさせない』『疲労を感じたら一旦二軍でリフレッシュ』など、巧みなブルペンワークに支えられながらもこの成績であり、正直昨年からの継続的な課題と言わざるを得ないでしょう。

中でも、昨年まで抑えを務めたブランドン・ディクソン(現カージナルス)が、新型コロナウィルスの影響で入国できず退団となり、空いた椅子を誰が掴むかが1つ焦点となった今シーズン。
ともに150km/h中盤のストレートと鋭く高速落下するフォークが魅力の漆原 大晟(25)・K-鈴木(27)・張 奕(27)の3人に白羽の矢が立ち、中嶋監督は彼らに一軍抑えの機会を与えて競争させましたが、いずれも抑えの座を掴むことはなく、最終的にはオリックスに呼び戻した平野 佳寿(38)を置くことで誤魔化しました。

ただし、その平野ももう38歳と高齢で、MLB挑戦前と比較してストレート・フォークともに最速・平均ともに3〜4km/hほど衰えており、肉体的な限界で3連投も厳しい状態になるなど、いつガタが来てもおかしくない状態で抑えを務めています。
今や気合いとメンタリティーで抑えをしているといっても過言ではありません。後継者が急務となります。

もちろん、新外国籍投手に任せるという案も1つ現実的なところです。
が、同時に今季立場を掴めなかった漆原・K-鈴木・張奕らにも引き続き期待している面もあるでしょう。
ただし、彼らは今季抑えの座を掴めなかったわけですから、加齢で平野が譲る形で『消去法クローザー』にするわけにはいきません。
そこで、6位・7位指名で獲得した横山 楓(セガサミー)・小木田 敦也(TDK)とともに『椋木・横山・小木田らルーキーを抑えにしても良いんやぞ?』と強いハッパを掛けることで、競争レベルを引き上げ平野の後継者を育てる意味合いもあるのではないか?と考えました。

『先発もできる中継ぎ・抑え型』というのが椋木の当初の起用の見立てですから、競争を掻き立てるには絶好の選手でしょう。
1位で獲得した投手が少しでも素材型に寄りすぎると、今季立場を掴めなかった漆原・K-鈴木・張奕は『まだ大丈夫』とタカを括れますし、反対に中継ぎしかできないタイプを1位で獲得してしまうと、万が一失敗した時にドラフト戦略が大きく狂うことになります。

すなわち椋木は、先発ができたときのハイリターンと中継ぎ・抑えで補強ポイントを埋められるローリスクを兼ね備える理想的な人材なわけです。

これら『ハイリターンかつローリスクな選手』は椋木に限らず、3位の國學院大・福永 奨捕手や、4位の慶應義塾大・渡部 遼人外野手にも当てはまっています。
今のプロ野球に支配下選手としてドラフト指名を受けるには、ハイリターンな面もローリスクな面も示し続けないといけないという点で非常に難しくなっていると個人的には感じました。

少し雑ですが、これがぼくの椋木投手への見立てです。先発・中継ぎ・抑えのどこでもできる選手なので、個人的には期待しかないですね😘
ムックルの人形に #15 MUKUNOKI のユニを着させて観戦できる日を楽しみにしています!!(15やんな???)

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