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「うざい」「キモい」とヘイトを集めていたTikTokが結局当たった理由

「うざい広告」「キモい」「黒歴史製造機」など散々な言われようだったTikTokですが先日のApp Storeでは、「写真/ビデオ」部門で Instagramに続き第2位でした。

ちなみに、ランキングはこんな感じで決まるそうです。

Q.ランキングはどのように決まるの?

A.アップルは公式には仕組みを発表していません。公式には発表されていませんが、世の中の人がいろいろと実験、調査をしておおよそのロジックの仕組みは解析されています。ただしアップルは常にロジックを更新し続けているので日々変わりますが、簡単に説明すると。

(当日のDL数 x 3)+(1日前のDL数 x 2)+(2日前のDL数 x 1)+ レビュー数と評価 + DAU (当日のアクティブユーザ数)

更新時間は約3時間に1回更新されます。

と言われています。


ーーhttps://apupnews.com/solve-the-question-of-the-app-store-top-rankings-boring-app-why-ranked/#Q

印象として浸透度合いは

YouTube
 Instagram
ーーーーー(超えられない壁)ーーーーー
TikTok

というようなイメージがまだ拭いきれませんが(僕の周りの高校生の間では実際そう)TikTokがYouTubeやInstagramと肩を並べるほどヒットしているということです。


僕はTikTokがこうしたヒットに至るまでの流れは完璧に近いものを感じています。

ターゲットとなる若者層の欲求を的確に捉え、それを実現するまでにあるハードルを徹底的に低くする工夫がなされているように感じました。


〜若者の欲求〜
自己顕示欲です。若者は自己顕示欲を満たしたくてうずうずしています。中にはその延長線上の感情として「人気者になりたい」という感情を持っている人もいます。結構います。TikTokがこのニーズを満たすためのサービスであることは明らかです。

〜若者がTikTokユーザーになるまでにある障壁〜
実際にTikTokで若者承認欲求を満たしてくれるようになるまでには、

・TikTokの存在を知ってもらう
・TikTokをインストールしてもらう
・TikTokに投稿してもらう

というそれぞれのステップにおいて障壁があります。

まず、存在を知ってもらいインストールしてもらうというステップ。YouTubeという殆どの若者が利用しているプラットホームでTikTokは広告を打ちまくってその存在を知らしめました。殆どの若者がその存在を知っていると普段の会話にTikTokが登場します。広告の形式が統一されていたので皆が共通の印象を持っていて、

「最近よく見るあのうざい広告わかる?」
「ああ、TikTokね」

という会話が自然と生まれました。

「アンナチュラルの主題歌歌ってる人わかる?」
「ああ、米津玄師ね」

と全く同じ流れです。TikTokがまだ「流行っている」とは言えなかったときでも超流行っているものと同じ形の会話を生み出しました。何が起きていたかというと、「若者がTikTokが流行っていると錯覚していた」のです。ある程度の流行はあったとは言え、明らかに本当の流行度合いを超えた「流行してるよね認識」が若者の中にありました。「流行ってるしTikTokいれよ」という流れを生み出し、多くの若者にインストールしてもらえたのです。

そして、実際に投稿してるのもらうというステップ。広告だけでは投稿してもらうというステップまでは到達できません。しかも、当時は「キモい」やら「黒歴史」やら「ナルシスト」やら、TikTokに動画を投稿する人に対して非常に低い評価が与えられていました。若者の欲求は厳密には「自己顕示欲を満たしたい」ではなく、「自分の評価を下げずに自己顕示欲を満たしたい」という欲求ですから、これは非常に大きな障壁となりました。

〜自分の評価を下げずに自己顕示欲を満たすということ〜
自己顕示欲とは自分の価値を他人に認めて欲しいという欲です。その「価値」とは、

・専門性の高いスキルがある(コーディングできるのすごい!)
・面白いコンテンツを作れる(HIKAKIN最高!)
・容姿がいい(可愛い!カッコいい!)

とかです。自分の評価を下げずにに自己顕示欲を満たすには上のような価値が自分になければいけません。

YouTubeは自己顕示欲を満たすツールとしての側面をあまり持たないので比較するのはどうかとは思いますが、YouTuberとして人気を集めるにはコンテンツ力が必要でした。YouTubeを「コンテンツ力があるという価値を認めてもらうのに最適」なプラットフォームとすると、TikTokは「容姿が良いという価値を認めてもらうのに最適」なプラットフォームなのです。

しかし、「容姿が良いという価値を認めて欲しい」という欲求をあらわにすることはよくないことだとされました。「ぶりっ子きもい」的な。

「容姿を商品にする」場所として現行で最もパワフルな芸能界を見てもこれは当てはまると思います。歌を歌うアイドルや演技をする女優や俳優、非常に聞きやすく、心地よく話してくれるアナウンサー。

あくまで「容姿が良い」は歌や演技とともに提供される「おまけ価値」的な形を取られながら商品にされているのです。(もちろん実情は「容姿」がメインの商品になっていて提供者も消費者も、容姿に大きな価値があることは理解しているのですが。)最初の売り込み時にはどうしても「セット販売」でなければ「容姿の商品化」は難しく、初めから容姿を単品で商品とするケースは多くありません。

なぜなら、容姿を単品で売り込むのは「キモい」し「うざい」から。そういった評価がある中、どのようにしてTikTokは「容姿が良いという価値を認めてもらうのに最適」なプラットフォームになったのでしょうか。

その答えは「音楽」と「編集機能」、それと「流行」です。

「楽しい音楽に乗せてアクションをして楽しい動画編集をつけてみた体験」や「流行りのあのダンスをやってみた体験」とともに容姿をセット販売するという形をとりました。芸能界で容姿とともにセット販売されている演技や歌に比べて、用意された音楽や編集を組み合わせて作品を作るのは何十倍も気楽で簡単でとっつきやすいですし。そして何と言っても

曲に合わせれば様になるし!非常に楽しいサービスだと思います。

こんな感じで「楽しい音楽に乗せてアクションをして楽しい動画編集をつけてみた体験」や「流行りのあのダンスをやってみた体験」とのセット販売で容姿という価値の共有向けプラットフォームとして始まったTikTokは、芸能界で芸能人の容姿が

歌や演技とのセット販売

容姿がメイン商品

という感じでシフトしていったのと同じように今や完全に「容姿が良いという価値をシェアするプラットフォーム」としての地位を完全に築き上げました。

芸能界で容姿を売り込んでも批判されないのと同じようにTikTokで容姿を売り込んでももう批判されないのです。

TikTokには可愛い子がいる。

こういうイメージを持ってもらえたことはTikTokにとっては大成功以外の何物でもないでしょう。


長々と何度も本題とそれながら書いてしまったので最後にまとめさせていただこうと思います。

〜若者がTikTokユーザになるまでの問題点とその解決方法〜
・流行ってないとなかなかインストールしてもらえない
      ↪︎広告を打ちまくって解決!

・容姿のみを商品化するのは社会からの風当たりが強い
      ↪︎音楽や編集を用意してセット販売をさせて解決!

最終的には、、、、

「あからさまに容姿を売り込んでも批判されない、容姿が良いという価値を消費してもらうには最適なプラットフォーム」となり、「若者の間でヒットしたサービス」になりました。

「容姿という価値を認めてもらうことで自己顕示欲を満たしたい」というインサイトを見抜き、「TikTokのクリエイターになると評価が下がってしまう」という問題を見抜き「セット販売」でそれを解決する。
インサイトを見抜く力と課題発見力とその解決力、本当にすごいなと思いました。


これは書くべきかどうか非常に迷ったのですが、僕が昔TikTokアンチだった時、

「TikTokは『この音楽とか編集とか楽しいからシェアしてる』みたいな建前をうまく利用して『私可愛いでしょう?って自分を見せたい』って言うナルシストの本音捉えててほんとすごいわwwwコンテンツ力皆無でもクリエイター名乗れるしwww」

って思ってたんですよね。言葉は良くないですが結構本質捉えてるんじゃないかなって勝手に思ってます。最終的にはきちんと「容姿の良さという価値を提供、消費するプラットフォーム」として最強になったわけですから、純粋に素晴らしいサービスだなと思いました。

これでこの記事は以上です。ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。他の記事も是非ご覧ください。


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