その手、離さないでね
芽実:〇〇…
〇〇:ん?
芽実:歩くの速い
〇〇:(苦笑)
今日は彼氏の〇〇と日向坂46のライブに来ていた。
〇〇との出会いは2019年まで遡る。
……………………………………………………
芽実:……。
芽実:……しつこいな…
このとき、私はストーカーに悩まされていた。
芽実:…もうやだ……
私は、ストーカー被害に加えてグループ改名も重なり、徐々に卒業を考え始めていた。
そんなある日、後輩の菜緒ちゃんが一枚の写真を見せてきた。
菜緒:芽実さん
芽実:あ、菜緒ちゃん、久しぶり
菜緒:お久しぶりです、あの…芽実さん、この写真の人って……
芽実:!?…何でこの写真を……!?
その写真に写っていたのは……、
菜緒:…やっぱり芽実さんのストーカーなんですね?
芽実:……うん…
菜緒:…〇〇が突然送ってきたんです
〇〇くん。確か『けやき坂46追加メンバー募集オーディション』で、唯一坂道オーディションの最終審査まで進出した男子で、二期生とは今でも親交があったはず…。
芽実:……でも、何で〇〇くんがストーカーを追ってるの?
菜緒:分からないです…
芽実:……。
そしてある日の晩、マネージャーさんの車で家まで送ってもらった後、シャンプーを切らしている事を思い出した。
芽実:…どうしよ……
少し考えた後、とあるメンバーに電話をかける。
(プルルル……)
菜緒📞:もしもし
芽実📞:もしもし、あの…、〇〇くんって今どこにいる?
菜緒📞:〇〇…、普通に家にいるんじゃないですかね?
芽実📞:〇〇くんって都内在住?
菜緒📞:いや、宮城出身で今も実家暮らしですよ?
芽実📞:……分かった
菜緒📞:何かあったんですか?
芽実📞:ドラッグストアに買い物行きたいんだけど、一人だと心配だし……
菜緒📞:…私が行きましょうか?
芽実📞:大丈夫、菜緒ちゃんを危険な目に遭わせたくないから……
菜緒📞:そうですか……
芽実📞:いきなり電話してごめんね
菜緒📞:いえ…
芽実📞:じゃあおやすみ
菜緒📞:おやすみなさい
菜緒ちゃんとの電話を切り、家に入る。
すると数十分後、家のインターホンが鳴った。
(ピンポーン)
芽実:!?
ストーカーを警戒しながらインターホンのカメラを起動すると、見覚えのある顔が…。
芽実:…〇〇くん?
カウントダウンライブの時より髪の伸びた〇〇くんが立っていた。
玄関の鍵を開け、ドアを開く。
〇〇:あっ、お久しぶりです
芽実:うん…、わざわざ来てくれたの?
〇〇:ちょうどひよたんたちと遊ぶために東京来てたので…、頼りになるか分からないですけど(笑)
芽実:ちょっと待ってて、準備するから…
そして〇〇くんとドラッグストアに向かうことに。
芽実:……いる?
〇〇:…いや、いないですね
ストーカーがいないことを確認してマンションを出る。
そしてドラッグストアで買い物を終え、帰路に着いていると、
〇〇:…Uターンしますよ
〇〇くんが急に方向転換した。
芽実:……いるの?
〇〇:はい…
私は怖くなって目を瞑って〇〇くんの腕を掴む。
〇〇:…着きましたよ
〇〇くんのおかげでなんとかストーカーと会わずに家まで帰ってこれた。
芽実:…ありがとね
〇〇:いえ…
そしてそのまま〇〇くんは帰っていった。
その数日後、マネージャーさんから突然連絡が入った。
マネ📞:柿崎、…ストーカーが逮捕された
芽実📞:えっ?
マネ📞:〇〇くんを車で轢き殺そうとして現行犯逮捕されたらしい
芽実📞:〇〇くんは!?
マネ📞:……意識不明で救急搬送されたそうだ
芽実📞:そんな……!
そして後日、意識が戻った〇〇くんの病室にお見舞いに行った。
(コンコンッ)
芽実:失礼します…
〇〇:…芽実さん……
〇〇くんは痛々しい姿でベッドに横たわっていた。
芽実:…ほんとにごめんね……(涙)
〇〇:…こうなるかもしれないと分かった上で芽実さんを守ったんですから、泣かないでください……
芽実:……(涙)
〇〇:…辞めるんですか?
芽実:(コクッ)
〇〇:私のことなら気にしないでください
芽実:…周りの人が傷つくのを見たくないの……(涙)
〇〇:……そうですか…
芽実:ごめんね…?(涙)
〇〇:…大丈夫です
そう言って、〇〇くんは包帯の巻かれた手で私の手を握ってくれた。
……………………………………………………
そうして私はグループを卒業し、その数ヶ月後退院した〇〇に告白され交際を始めた。
芽実:私、四期生に会うの初めてなんだけど…
〇〇:大丈夫、たぶん四期生は芽実のこと知ってるから
芽実:そこは別に心配してない
〇〇:(爆笑)
関係者用入場口で専用パスを提示し、会場内に入る。
そして、2時間ほどのライブを堪能し、ライブ後の楽屋に挨拶をしに行った。
芽実:※※さん、お久しぶりです
スタッフ:おぉ!久しぶり!相変わらず仲がよろしいようで(笑)
芽実:(笑)挨拶いいですか?
スタッフ:いいよ
楽屋の中ではメンバーが思い思いに過ごしている。
芽実:失礼しま〜す…
史帆:あっ!芽実!
芽依:ホンマや〜!
芽実:みんな久しぶり
京子:綺麗になったね
芽実:そう?
愛奈:元気そうだね
芽実:うん
好花:〇〇も久しぶり
〇〇:おう
ひより:相変わらずラブラブな感じで?(笑)
〇〇:言うほどラブラブはしてない
久美:ともかく芽実が幸せそうで良かった
芽実:みんなのライブも良かったよ
彩花:この後二人とも予定ある?
芽実:いや、無いけど…
美玲:…二人とも、後ろ見てみ?
みーぱんに言われ、後ろを振り向くと四期生が集まっていた。
海月:挨拶してもいいですか?
芽実:お願いします
海月:私たち
四期:日向坂46四期生です!
芽実:卒業生の柿崎芽実です
久美:みんな芽実のことは知ってるでしょ?
四期:はい
〇〇:よかったな?
芽実:(苦笑)
史帆:何の話?
〇〇:四期生が自分のこと知らないんじゃないかって…(笑)
芽実:そんな心配してないから!(笑)
メンバー:(笑)
菜緒:この後どうすんの?
〇〇:…とりあえず飯食って帰る
久美:あれ今同棲してるんだっけ?
芽実:してる
メンバー:ヒューヒュー
芽実:…ぶっ飛ばしていいと思う?
〇〇:…思う(笑)
すると、
春日:トゥース!!
後ろから春日さんの特大トゥースが飛んできた。
芽実:あっ、お二人ともお久しぶりです
〇〇:お久しぶりです
若林:まさか二人が来てるとは思わなかったよ
春日:お互いに狙いあってる二人が…
芽実:(苦笑)
〇〇:もうとっくに付き合ってます(笑)
若林:どのくらい付き合ってんだっけ?
芽実:四年くらい?…ですかね
若林:じゃあまぁ仲良くやんなよ?
芽実:はい(笑)
〇〇:ありがとうございます(笑)
オードリーのお二人との会話を終え、私たちは楽屋を後にした。
芽実:はぁ〜、寒っ…
外は息が白く立つほど冷え込んでいた。
〇〇:(笑)はい
芽実:(笑)…手、離さないでね?
そう言って、私は〇〇が差し出した手を強く握った。
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