紅葉の下でプロポーズされたい
俺がまだ小学生の頃、近所に5つ上のお姉ちゃんが住んでいた。
(ピンポーン)
好花:は〜い
〇〇:好花ちゃん、今日遊べる?
好花:ええよ、入って?
〇〇:お邪魔しま〜す
好花ちゃんが居間のゲーム機を起動する。
好花:マリオカートでええやろ?
〇〇:うん
ちなみに俺は好花ちゃんにマリオカートで勝ったことは無い。
〇〇:……。
好花:(苦笑)大丈夫?
もちろん、今回も全戦全敗である。
〇〇:何でそんな強いん〜?
好花:年上としてのプライドかな?(笑)
〇〇:大人気なっ!
好花:(爆笑)
◇
そんなある日、
好花:ねぇ、明日時間ある?
〇〇:あるけど…、どうしたん?
好花:△△山に紅葉狩り行かん?
△△山とは、俺たちの家から見える紅葉で有名な名所だ。
〇〇:…遠くない?
好花:自転車で1時間漕げばいける
〇〇:(苦笑)
そして翌日、両親が仕事に出かけたあと好花ちゃんの家に向かう。
〇〇:おはよう
好花:おはよう、じゃあ行こっか
ヘルメットを被り、自転車にまたがる。
好花:出発進行〜!
△△山に向けて走り出した。
そして△△山の麓まで走ってきたところで一旦休憩することに。
好花:ふぅ〜…
〇〇:ホンマ小3相手に容赦ないよね、中学生と同じ体力があると思わんといてや…
好花:ごめんて(苦笑)
息も整ったところで、再び走り出す。
〇〇:…むっちゃ急なんやけど……!
好花:ファイト…!
なんとか△△山の駐車場まで登りきり、端に自転車を停める。
好花:…こっから徒歩で登るよ!
〇〇:……でしょうね…
自転車で疲労した足を山道でさらに酷使する。
〇〇:…好花ちゃん、一旦休憩せぇへん?
好花:じゃあ△△寺行く?
〇〇:行く…
△△寺とは△△山の中腹にあるお寺だが、奥まった所にあるせいか紅葉の時期でも人がほとんど居らず、地元民の穴場となっている。
好花:よしっ、誰も居らん
〇〇:まずはどっか座ろ?
本堂の石段に腰掛け、水を飲む。上を見上げると、空を覆うほどの紅葉が紅く風に揺れていた。
好花:……〇〇…
〇〇:…ん?
好花:紅葉、綺麗だね……
〇〇:うん…
好花:……プロポーズはこういうとこでされたいなぁ……
〇〇:…じゃあ15年待ってて……///
好花:……ふふっ(笑)〇〇がかっこよくなってたらな?(笑)
〇〇:なってるから!…///
……………………………………………………
それから15年後、
〇〇:すみません、これをひとつ
花屋:はい、1800円ね
花屋で花束を買い、私たちは△△寺にやってきた。
〇〇:好花ちゃん久しぶり、元気にしとった?
〇〇:紹介するよ、婚約者のひなの
ひなの:初めまして、上村ひなのです
好花ちゃんのお墓に花をお供えする。
〇〇:……時が経つのも早いよなぁ…
〇〇:好花ちゃんが事故で亡くなってからもう11年も経つねんで?
お線香に火をつけ、2人で手を合わせる。
〇〇:……。
ひなの:……。
ひなの:…きっと素敵な人だったんだね
〇〇:……うん
立ち上がり、好花ちゃんのお墓を後にする。
〇〇:…あっ……
すると、私の肩に紅葉の葉が一枚舞い落ち、2人で上を見上げる。
ひなの:……〇〇…
〇〇:…何?
ひなの:紅葉、綺麗だね……
〇〇:…うん……
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