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泣いたって始まらないのに15

「その前にさぁ、由美は今までのわたしの話しを聞いてどう思った?」
「わたしにとってふたりは、少し眩しい存在なんだよね。全てを判り合っている感じがさ。そりゃ全ては大袈裟だとは思うけど、そう思えちゃうの」
「うーん分かり合っているかぁ?
実は分かり合う事を楽しんでいる
のかな。わたしね、旬と出逢えて幸せだと思う。大切なものにどう向き合うかちゃんと考える人だから。わたしより真面目なんだよ。
言いづらい事もちゃんと話そうっていつも言ってくれるし、話しやすい空気作ってくれる。だから、わたしも飾らずにいたと思っているんだ」
由美は胸が少し苦しくなるのを感じながら、
「こう言う話しあまりしなかったね。やっぱり爽子羨ましい。わたしは、秋之の前に付き合った人が初めての人だった」
爽子は
「全身筋肉痛ね」
と言ってゲラゲラ笑いだした。「まぁ、今日はそこ飛ばすけどね」
由美も笑いながら話しを続けた。
「うちの近所のパン屋さんの息子さんで年は6才上、カナダ留学から帰って来てお店手伝だっていてさ。パンを買いにいくうちに何となく話すよになって、いい感じの人だなぁって思っていたら、映画に誘われて、まぁそれからデートするようになって。優しいし、どんどん好きになったの。でっ! ある日初体験となったんだけどね、爽子同様散々でした!」
「なんで別れたの?そこは散々でも、相手に経験値があれば、後はだんだん上手くいと思うし、それより何より、お互い相手を想う気持ちは当然あった訳でしょ?」
由美は溜め息をつくと、
「わたしもね、そのまま、お付き合いか続いて行くと思っていたら、なんとカナダから、金髪の方が追いかけて来て、居座ってしまったのよ。結局その人を選んだって事。何が何でも、わたしじゃ無きゃだめではなかった……だから、ふたりで色々話し合う関係になる時間なんてなかった。それで次が秋之だもの。わたし男運ないねぇ」
 爽子は、旬と話したことが蘇ってくる。
由美と秋之の話しはふたりで何度か話していたが、その時旬が決まって言うことは、その男は由美を大切には思っていなかった事、
きっと由美自身、何となくその事はわかっていたはずだとおもう。
 でも、愛と言う言葉のマジックに引っかかった。
そして、もし男が去った事への未練で、今も立ち直れないなら、相当深手を追っているよね。
でも、男が並べ立てた言葉に傷ついているのなら、前に進めるのは時間の問題だね。
その男の言っている事なんて、 あくまでも主観なんだよ。
由美は、恋愛経験がないに等しく、何より自分自身をわかっていないのに、ふざけた言葉を刷り込まれただけだ。
ただ、その男がひとつまともな事言っいるのは、「錯覚」
ベタな言い方だけど、由美は恋に恋したって事。 
俺もそこは同感だよと言われていた。

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