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親友か?兄弟か?それとも……

お題待ち合わせの階段 2000字以内。
 お前はどうして俺を置いて行った?
「直也!下りてきなさい!危ないんだから」
「判ってる!もう降りるから」
母親は、今だに心配いてるんだよ。お前を追って飛ぶんじゃないかってさ。流石にそりゃしないでしょう。
お前が逝って暫くは、無意識に登っていたからな。
もの干し場を乗り越えて、屋根に寝そべる俺を見るたび心臓止まるかと思ったとさ。
お袋、本当ごめんな。
いやぁ話したいわ。声を聞かせろよ。俺寂しいんだ。お前に逢いたい! 逢いたいよ。
「直也!」
怒鳴り声と共に、階段を登ってくる母親の足音が腹に響いてくる。
あの人痩せねえよ、何してもぷくぷく膨らんでいくんだよ。
見せてやりてぇアハハ。
「いい加減にしてよ! 危ないし、しんぱ……馬鹿なんだから、足滑らせて落ちたらどうする?」
「はいはい」
じゃ、またな。
俺は母親に引っ張られるように一階に降りた。
 ふと気が付けば考えてる。
俊は今頃なにしてるのかな? 
雲の間をフワフワ舞ってるのか? それとも虹で遊んでるのか? 
俺なんかつまらない大学生活送ってるよ。良い大学入って、良い会社に就職してって~いつの話しだよ。コロナなんて訳わからん病気が流行って、なんか世の中様子が変わっていくよ。
 お前は良いよな! こんなウイルスに戦々恐々としなくてもいいんだから。まあそうは言っても、俺は最低限の予防しかしてないよ。そうそうマスクは、もはや常識だぞ! お前は嫌いだったな。
ひ弱な癖に、口だけしか覆ってなかったのを思い出したよ。
それで、インフルにかかって、馬鹿丸出しだっうの。
 ところで、夜はやっぱり寝るのか? いつになったら化けて出てくるの? 俺は待ってるのに。
 もう三年経つよ。あの日も星が綺麗だった。話したいことがあるなんて言うから、だったらバイト先に迎え来い!なんて言わなきゃ、お前はあんな事故に巻き込まれないですんだのに。
ごめんな……本当にごめんな。
結局何の話かは判らずじまい。
おい! 話しに来いよ! 俺話したくてウズウしてる。そうだ言い損ねたけど怒るなよ。お前の好きだったあの子、ほら七山さつき、結婚すんるんだと……相手? 知らない奴だ。早くない? 今更関係ねぇけど。 
俺なんか振られてばっか。
理由? それはね、イケメンの俺が夜な夜な屋根の上で、見えないお前とグダグダ話しているんだから、女の子は怖がるよ。
「直! いい加減にしろよ!」
兄貴だ。
「入れ!」
「おっす」  
すげぇ剣幕! また明日な。
「兄貴覚えてる? 小さい時親父が良くしてた話」
「はあ? あれだろう? 空から階段が降りてきて、登ると大好きな人と逢える。迎えの時は独りで登って、まだの時は大好きな人が降りてくるんだよって。そして一晩中遊んで帰って行く。えっと最初に約束するんだ。明日からは上ばかり見ないで、前を見て歩き出すことを。良く判らん話だな」
「それそれ、俺は俊に逢いたくて
毎晩待っているのに、あいつ来ないんだよ!」
「大丈夫、来るよ」
兄貴は小さく呟いた。
 夢か? なんて綺麗な所なんだ。箒星がそこここに落ちていく。
「直! 来てくれたの?」
俊は思いっ切り抱きついてきた。
「おいおい~俺らそうだった?」
「ハアア、近い物はあったよ。これがブロマンス」
俺は俊の顔をまじまじと見た。
「ブロマンスか? まあ何でも一緒だったし。けどお互い好きな子はいたよなぁ」
「俺たちはブロマンスなんだよ。
あの時初めで聞いた言葉でさ。
意味教えて貰ったら、まさに俺たちだよって思った。早くお前に話したくて。そしたらあれ? 気づいたらここにいた。アハハ」
笑うな、辛ぇよ。
俺はもう離れたくない。
「なぁ一晩中傍にいられるのか? 俺たち」 
「勿論。ただ約束して欲しいことある。明日からは俺を待つな。直の人生を生きて見せて欲しい。そして、俺が迎えに行く時がきたら、この待ち合わせの階段を降ろすから。おじさんの話しとは少し違うんだ。この階段の途中で俺は待ってるから登っておいで」
「俺にも見えるの?」
「勿論! 俺の声も聞こえるよ」
俊が待っていてくれるんだ。
俺は心底ほっとした。
 俺たちはあの頃のように、駄弁りに駄弁り久々に大笑いした。
楽しかった時は無情にも終わりを告げる。白々と夜が明けて行く。
 目を開けると俺はベッドにひとり。俊? 俊! 消えるなよ。
 お前が待ち合わせの階段を降ろし、迎えに来るまではがむしゃらに生きるよ。俺とお前の人生を足し、かつ倍にする。もう湿気た面なんてしてはいられない! 
次お前と逢ったとき、山ほど土産話をしてやるからな。そうだよ! 俺は好奇心の塊になって生ききってやる! みてろよ俊! 嫉妬で早く迎えにきたなんて言わせないぞ。ああ~なんだ! この気持ち! 堪んねぇ。
「直也? 最近屋根に行かないね」
「当たり前よ~そんな暇無し」
「あら、それはそれは……」
家族はなんた嬉しそうだ。

俊! たまには顔出せよ!

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