#2309268
ララーラララララララララ。鼻歌など歌いながらHさんは、診察券を探している。予約時間の30分前。余裕は、それほどない。もう1度、財布の中をのぞく。
ララーラララララララララ。この歌、なんだったっけ。もしかして、先週、病院に忘れてきたかも。電話してみるか。そして、Hさんは、思い出す。オザキだ。
「僕が僕であるために勝ち続けなきゃならない」。そんな歌詞に臆面もなく鼓舞されていた頃がHさんにもあった。オザキがいうなら真実だ。そう思っていた。
勝利も敗北もない人生が過ぎ、何者にもならず、あんなに命の意味を探していたHさんは、今、茶の間で整形外科の診察券を探す。ララーラララララララララ。
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