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昭和23年

昭和23年、「寒い国」で、中谷宇吉郎は、「0度の水と0度の氷では、どちらが冷たいか」と問いました。「水だろうと氷だろうと、0度は0度だろう」。

昔、その本を読んだEさんは、そう思いました。でも、宇吉郎は、「熱と温度とをちゃんと区別して考えるとはっきりと分かる」といっていました。

抗がん剤治療終了後4月目の検査の帰り道、カフェでグリーンティーを飲みながら、Eさんは、長かった戦いの痕跡、副反応で変色した爪の先を眺めています。

治療の前後で、日常という温度に大差はありません。でも、根元の方から本来の色を取り戻し始めた爪のピンク色に、日だまりのような熱を感じたりもします。


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