今年の6冊目
今年の6冊目、こうの史代著「夕凪の街 桜の国」、読みました。
夕方、海から吹きこんでくる風がぴたりとやむ時間帯がある。夕なぎ。「凪」は「和ぎ」とも書いて、物事が平らかな状態を表します。
原爆投下から10年後の広島。主人公の女性は、バラックが並ぶ集落で穏やかに暮らします。職場の同僚から求婚されても、素直に受け入れることができません。
生き延びてしまった罪悪感と原爆症への恐怖が、彼女を幸せから遠ざけています。生き残った者もさいなむ原爆の不条理を、被爆者ではない作者が描きます。
平和に見える町でも、なぎが終わればきっとまた風が吹き始める。右向きにも、左向きにも。柔らかなタッチとは裏腹に、そんな警句が聞こえる漫画でした。
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