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電車(3)


電車の揺れに身を預けて釣り革をギシギシいわせながら、おちゃらけて話してはいても、茶髪クンの心中は、それほど穏やかでもなさそうです。

「前の課長は、無駄な資料は作らせなかったよな」と先輩クンが同情して見せます。「会議で行き詰まったときのための保険にしたいんだろうけど」と。

「でしょ。保険にするならマシだけど。「ふーん」で終わりですもん。だから、課長に作らされる資料のこと、俺の中では「ふーん資料」って呼んでんです」。

彼の絶妙なネーミングセンスにうっかり笑い掛けて、慌てて窓外に視線を戻しました。「いづくもおなじ秋の夕ぐれ」がそこにありました。

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