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Non:Fiction Part8“Overdose”

※これはフィクションです。

ODを知っているか?Overdose。つまり薬を大量摂取して精神的苦痛から自分を解放する事。
俺にとって薬は紛れもなく酒だ。母親から17歳の時に赤ワインを飲まされた時から親友というか恋人というかセフレというか悪友というか…そんな存在。この酒の飲みすぎで死にかけた事が人生で1度ある。本当に死を直前に感じた。テキーラ飲み干した?そんな甘いものじゃない。酒の神バッカスが目を逸らしたくなるくらいだ。 

                        【1日目19:00】

両親の誕生日会を主催した俺は酒を仰いだ。ビールを6杯は飲んだ。二次会は母親と隣の居酒屋へ。そこでもビールを3杯は飲んだ。それで普通の人は終わる。というか飲みすぎだ。だが俺は違う。
その日に街で昔の友達から飲みの誘いが来た。次会えるのはいつか分からない。今だ。今が欲しい。行った。

                          【1日目23:00】

元々、俺の働いている居酒屋でバイトをしていた女の子。ギャルヤンキーは飲み方までヤンキーだ。
テキーラを指の間に3個ずつ挟む。それに一気に飲む。つまり一気にテキーラ6杯だ。これを2回する。死ぬぞ。さすがの俺もベロベロだ。

                            【2日目2:30】

                  “何故、俺は家に帰らない”

もう1件、いつものBARの横にある飲み屋でママと飲んでいた。麦焼酎の茶割り。5杯。
運良く、奢られた。と言うより冒頭の両親の誕生日会の金以外全部他人が出してくれている。つまりほとんど金を使わずにここまで来ている。ここで中国マフィアの友達がいるのだがそいつの友達のヤクザが俺の事を気に入ってくれた。
そいつは格闘技の話が好きで俺自身格闘技経験者でもありプロレスファンだった。意気投合し夜通し飲んだ。記憶にあるのは麦焼酎の茶割り5杯。その後は知らん。覚えてない。そんなこんなで何故か朝まで飲んだ俺たちは中国マフィアと共に日曜市で開かれている飲み会に誘われた。
 
                        【2日目6:00】

日曜市のお爺さんとお婆さんが仲良くやっているおでんの屋台の裏で中国マフィアとヤクザと俺は飲んでいた。正直言うとほぼ何も覚えてない。吐くか寝るか、気を使って居座るかの3択しかない。勿論…俺は居座った。馬鹿だろ。何より気がつくとヤクザとマフィアは居なくなっていた。しかしその間も俺は酒を飲んでいた。
酒を飲んでも顔色が変わらない奴の性だが一切心配されない。簡単に言うと千鳥足の具合の悪そうな男の子だ。
お爺さんもお婆さんも「よく飲むねぇ〜」しか言わない。考えてみろ。この時点で16時間ぶっ通しで酒を飲んでる。しかも全て奢りだ。それにゆっくりとした飲み方ではなくかなりスピーディーに飲んでいる。
多分だが今のところ、ビールを10杯、テキーラを12杯、テキーラボールを2杯、麦焼酎の茶割りを致死量、日曜市で日本酒熱燗を6本飲んでいる。

                                    “死ぬ”

俺はトボトボと帰ることを決意。しかし前に歩けない。道中、看板にぶつかりその看板を持ち上げドブ川に投げ捨てるという奇行を行っていた。多分だが、“俺の道に物置くんじゃねぇ”といったところだろ。なぜ覚えているのかって?覚えてるわけないだろ。ただ写真のフォルダにドブ川に浮く看板の写真があったんだよ。
そんなやつがまっすぐ帰れるわけが無い。タクシーを使う?そんなの呼べる様な状態じゃない。ギリギリ生きてるんだ。俺は路上で息絶えた。車がガンガンに通る道だ。そして不思議な事に誰も男の子が倒れていることに気づかない。見て見ぬふりなのかみんな急いでいるのか。
         
                          【2日目14:00】

スンと起きた。日差しが痛い。しばらく座り、吐いた。びっくりするぐらいの量。しかし問題は日曜市から自宅までの距離だ。5kmある。一応は息絶える前に2kmは進んでいた。
だがそもそも方向感覚がない。つまり迷路だ。頭が痛い。気持ち悪い。何より立てない。本当にしばらくそこにいた。何時間もずっとだ。水を買って飲めばいいのに。馬鹿だろ。何もしてない。

                           【2日目18:00】

ついに動き出した。4時間も道路で何してたんだよって思うかもしれないが純粋に立てなかった。ただそれだけだ。その間、俺は妹に電話して助けを求めたくらいだ。

俺「お願い。死ぬ。死ぬから助けてくれ。」

妹「ごめん、バイトだから。」

まあ、そりゃあそうだ。意味のわからない言葉を並べる兄貴なんて誰が助けに来る。しかもただの飲み過ぎに。
視界はグルグル回る。足もグルグル。思考もグルグル。ゆっくり帰った。後日談だが俺が家に帰っている風景をKTのマスターが目撃していたらしい。俺はゾンビのように歩いてそうだ。死にかけの老人。ゼンマイの切れかけたおもちゃ。
その日は仕事も休みという事もあり、本当にゆっくり歩いて家に帰ったのであった。

                            【2日目20:00】

25時間ぶりの自宅。久しぶりに横になる俺。
    
                 “このまま目をつぶると死ぬ”

と思いながら俺は床に着いた。

『要するに極度の寂しがり屋が“今”を大事にし過ぎるが故に起こったOverdose事件だが別にこの次の日も俺は酒を飲むのであった……。』

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