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Non:Fiction Part10“小革命”

※これはフィクションです。

ここら辺でもっと昔に遡ろう。市が計画した“地域の繋がりをもっと深めよう”のキャンプ企画があった。俺と俺の親友であるリクは親同士が仲良く、勝手に応募しやがった。

しかし俺とリクは“地域の繋がりを海底まで掘りまくった”のだ。

小学4年生の俺とリク。このキャンプでの班決めや作るカレーの具材を決めるレクリエーションの様なものが市役所の会議室で行われた。
正直言うがそんなキャンプに連れてこられる様な子供達は友達が居なく親に可愛がられて育ってきてる。いわゆる“良いとこの子”だ。反対に俺とリクは幼少期からパトカーに水風船を投げたりと小学生が思いつく悪事は全てやっていた。
レクリエーションには50人位の小学生が居た。早速、俺たちは仲間を探した。面白そうな奴、可愛い女の子、一人きりでオドオドしている奴。片っ端から話しかけに行った。市の職員から見ると凄く社交性のある2人だ。
気がつくと俺とリクはその場のリーダーになっていた。しかし、俺達はどうやって大人の目を盗んで悪巧みをするかしか頭に無かったのだ。そんな事は知らずに市の職員達は拍手と共に俺達を称えた。
班決めは率先して決めて行っていたがまさかのくじ引きになり俺達は困惑していた。しかしリクは頭が良い。リクの思惑通り俺達は同じ班になり真面目な社交性に溢れたリーダー2人を演じ続けたのだ。当時の俺は知り合いの1発芸にハマっており、キャンプ中のニックネームにしていた。“パイ〜ん”。リクは当時デスノートにハマっており、ニックネームを“デスノー”にしていた。そして俺達、いや革命の名前を“デスノーパイン”と命名し密かに暗躍していたのだ。
カレーの具材を決める時に「チョコレート!」と言う俺に市の職員は「遊ばない!」と叱ったがすかさず「いや、コクが出ますし苦味が旨味になるんですよ?知らないんですか?大人なのに……。」と茶化しまくっていた。赤面する職員に更に畳み掛けるリクが「苦いのが苦手なんですね!先生の為に甘いカレーにしましょう!」と茶化す。とてつもなくタチの悪い社交性抜群の小学4年生2人だ。ごめんねあの時は。

そんなこんなでキャンプ当日。
革命を起こすことしか考えてない俺達。安い歌で盛り上げようとするバスの道中での市の職員たち。みんなシャツをインした男の子達。ちょっと大人びいて見える女の子達。スカした目で見てるインテリ風小学生。

                     “さぁ、決行は夜だ。踊れ。”

俺達の野望は夜中だ。夜中に市の職員達は子供達を離れ屋内で飲み会を始めるのだ。そもそも屋内で飲み会を始めることも俺達は知っていた。盗み聞きしてたのだ。
そして寝静まったキャンプ場。俺とリクは叫んだ。

                   “開幕だァ!!!!!!”

その声で仲間たちが一斉に外に飛び出した。親の制約という支配に置かれていた子供達が大人の目を離れ支配から解き放たれた時、何が起こったと思う?
みんな裸で鬼ごっこが始まったのだ。すっぽんぽんの奴も居れば上裸の奴も居る。下半身丸出しの奴も入れば腕まくりをしているだけの奴もいる。これは不思議なことに女子も一緒だった。みんな自由という制約を手に入れて思うがままに笑い、走り回った。カオスだ。
俺とリクはとてつもない刺激をコイツらに与えた……。とはならなかった。むしろ俺達は興奮し、たいまつの火を振り回していた。
そりゃあ、異変に気づく。いくら酔っててもキャンプが騒がしい事ぐらいは市の職員達も気づく。近づいてくる光に気づいた子達が俺達に報告に来る。俺達は一斉に解散を命じた。
   
                            “一旦隠れろ!!”

そして市の職員達は俺達のテントへと足を運んだのだ。よくよく考えて欲しい。リーダー格の俺達に「何かあった?」と聞くのはどう考えても馬鹿だろ。目の前の可愛い男の子2人は初対面の子達にも積極的に話しかけに行き、一人でいる子達を輪に入れる。だが、俺達は裏で暗躍しているリーダー格の2人だ。“そんな子には見えなかった”。が1番お似合いな俺達だ。どう考えてもサイコパスだ。

俺達「モズの声がうるさい……。」

モズとは市の職員だ。俺達が騒いでるのは酒に酔ったモズの笑い声がうるさいからと言いがかりをつけたのだ。しかも、モズは少し強面の若者だった。

      “どうせ酔ってるから何言っても良いだろ”

俺達は眠たそうに目を擦りながらモズのせいにした。市の職員達も申し訳なさそうに飲み会に戻ったのだ。そして、またモズの酔った笑い声が聞こえてきて俺達は解放の鐘を鳴らした。
この繰り返しを2、3回は繰り返した。しかし、よくよく考えると何故市の職員達は俺達に見張りを付けなかったのか?と思ったがどうせ市の職員達も合コン気分で来てたのだろう。更に前年度には居なかった社交性抜群の男の子2人が居るのだから何か“問題”があれば連絡してくるだろうと軽はずみな考えだったのだろう。まったく。“問題”は俺達だったのに。
そんな事を繰り返していると1割位のスカした連中が怒りにくる。そりゃそうだ。夜中の2時とかだぞ。良いとこの子連中は普段100%寝ている。この1割のスカした連中のほとんどは女子だ。そして女子達も市の職員にチクる等すればいいものを俺達を根こそぎ追いかけ回しだしたのだ。

女子達「うるさい!!早く寝ろ!!」

俺「可愛いね!!今度デートしよ!」

リク「ダブルデートしようぜ!」

俺達に女子達は群がった。それを守る俺達の親衛隊。足が異様に速いリクは一向に捕まらない。策略家の俺は一向に捕まらない場所で高みの見物。まぁ……。カオスだ。そんなキャンプ場で2人のチェ・ゲバラによる革命は2人の就寝で幕を閉じた。

帰りのバスで一切の睡眠を行ってない俺とリクはサービスエリアで吐きまくった。そして、全てを“モズ”のせいにした。

本当に下手したら当時の50人程の小学生達の人生を大きく変えてしまったのでは無いのかと思う。親に世間体を叩き込まれ友達すら出来なかった子達。友達を作る為に放り込まれたキャンプ企画。そこで俺達に出会ってしまった。何よりも自由でカリスマ性もあり知識もある。嘘の付き方まで秀逸で女子人気もある。
大丈夫かな?ダニー艦長、ジョニー、オリバー、トミー、ゴテンクス(女子)。俺が覚えてるのはこの5人だけだ。生きてたらまた会おうぜ。

 『その時はまた革命を起こしてやるよ。』
 
                 


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