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[小説]ギフト〜知りたい〜

 響子はスマホをスーツのポケットに入れ、まずはキッチンに向かった。引き出しから袋を取り出し、製氷室から氷を掻き出し、袋に入れる。2〜3回分氷を入れて、今度はシンクへ。蛇口を上げ水を出し、氷が浸かるぐらい水を入れた。袋の口は輪ゴムできつく縛った。次に冷凍庫から保冷剤を2個出し、氷嚢とともに脱衣所へ向かう。脱衣所の棚から薄めのタオル3枚出し、一切合切を持ち階段を早足で上る。階段を上がって一番手前の部屋をノックする。

「入るよ」

言いながら扉を開ける。陽太は学校帰りのジャージのまま、二段ベッドの下で横になっていた。

「何」

ぶっきらぼうに陽太が聞く。

「ちょっと顔冷やしなさい」

響子はベッドの頭側に両膝をつき、一旦床に持って来たもの全てを置き、陽太の顔半分にタオルを乗せ、その上に氷嚢を置いた。保冷剤2つはそれぞれタオルに包み、陽太の両手に持たせ、左右の頬に当てさせた。陽太は特に反抗することもなく響子のされるがままになっていた。

「さっき学校に電話したよ」

響子がそう言うと、陽太の体はピクッと動いた。響子は続ける。

「ちょうど顧問の先生が出たよ。細かいことは陽太も相手の子も話さなかったからわからないって言われたんだけど」

陽太は何も話さない。

「何で何も言わないの?」

響子は陽太に問いかけた。

「...何でって....、別に、ただのケンカだし」

やはり陽太は詳細を話そうとしなかった。

「ただのケンカでこんなになる?!一方的に殴られたんじゃないの?!」

響子はつい声を荒げてしまった。

「だからただのケンカだって言ってんじゃん!!」

つられて陽太も強く言い返す。響子はそれ以上陽太への言葉を持たなかった。っふぅ〜っと大きく息を吐き、

「ちゃんと冷やしなさいよ」

と言って立ち上がった。

 2段ベッドの上では光がスマホをいじっていた。響子は光の足をポンポンと叩いた。光が響子を見ると、響子は人差し指を下に向けて光に下に来るよう促した。響子が部屋を出ると光はベッドから降り、響子に続いて部屋を出た。


「何?」

光はリビングに下りて来てソファにぼすんと座り、響子に話しかけた。

「光は陽太から何か聞いてる?あの子お母さんに何も話してくれないんだけど」

ダイニングテーブルの椅子に座った響子が光に聞く。

「俺も何があったか詳しく知らないよ。部室にいなかったし。1年同士がケンカしてるって言われて見に行った時にはもう先生がいたし、陽太は保健室行くところだった」

光はまたスマホを見る。

「陽太を殴った子はなんていう名前?」

「え、タチバナユウト」

「そう」

響子はそう言いながらスマホに「たちばなゆうと」とメモをした。

「光から何があったのか聞いといてくれない?お母さんには話してくれなそうだから」

響子は光の方を向いて言った。光はスマホを見たままで「わかった」と返事をした。

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