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[小説]ギフト ~草むしり終了~

  結局しゃべりながらやるもんだから草むしりは一向に進まなかった。終わったら解散の掃除。今日は部活もないし、おれは早く帰りたかった。早く家に帰ってエアコンの効いた部屋でゆっくりマンガでも読みたいのだ。

 八代先生が確認に来た。

「え~まだ終わってなかったの?!もうみんな終わって帰ってってるよ~。おしゃべりばっかりしてたんでしょ~?終わらないと帰れないからね!ほら!みんな頑張れ!」

おれはがんばってるよ。あいつらがしゃべりまくってんだよ。特に山崎だよ。ほんとしゃべりすぎだアイツ。ちょっと声が高めだからキンキンキンキン余計にうるさく感じる。

「おわっ!やべー!もうこんな時間じゃんか」

校舎についている時計を見てあいつが焦った顔をする。

「悪い、今から行かないと迎えの時間に合わないからオレ行っていい?」

すると山崎が

「え~ずるいよ陽太く~ん。あたしも帰りたいよ~」

と顔を上に向け、眉をひそめた。

 いやお前大してやってないだろと思ったが、おれは黙って草をむしり続けていた。

「いや~ホント悪いけどマジで行かないと。時間に遅れると母さんに怒られる」

あいつは手を払い、額の汗を腕で拭って制服についた汚れをはたいた。

「そういえばお前1回マジで怒られてたもんな」

田中が思い出し笑いをする。山崎はまだぐちぐち言っている。斉藤はそれをなだめていた。豊中は立ち上がって中庭全体を見回し、あとどれくらいかかるだろうかと考えているようだった。

「行けよ」

おれが発言したことでみんなの視線がおれに集まった。みんなキョトンとした顔をしている。おれはその様子になんだかイラついて、

「行かなくちゃいけないなら行けよ。仕方ないだろ」

と、ぶっきらぼうに続けた。すると豊中がはじけるような笑顔になって言った。

「なんだよお前いいやつだな~!でも確かにそうだな、行けよ渡辺!先生には言っとく」

「ごめんありがと!じゃあな!」

あいつは走って行った。ふてくされる山崎に斉藤が顔をのぞき込んで草むしりの続きをやろうと声をかけていた。田中はもうどっちでもいいらしい。豊中はなんだかうれしそうに草むしりを再開した。


 結局タイムオーバーでおれ達は帰ることになった。八代先生は草むしりが終わらなかったことに関して特に何も言わなかった。終わらないと帰れないと言っていたのに、草むしりの成果も特に気にしていないようだった。やさしい笑顔で、がんばったね、おつかれさま、と手を振って去って行った。

 水道で手を洗い、シャツの肩のところで顔の汗を拭った。なんだか意味のないことをやらされたようで釈然としなかったが、とりあえず終わった、と帰路についた。



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