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雨、好き
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雨 ii 卯月廿一日

雨 ii 卯月廿一日

  建曆元年七月洪水慢レ天土民愁歎にせむ事を思
  ひて一人奉レ向ニ本尊ー聊致レ念と云
時により過ぐれば民のなげきなり八大龍王雨やめたまへ
               ——金槐和歌集

〝金槐〟というのは鎌倉将軍の謂で、暗殺された三代将軍は源実朝のこと。

火乃絵にはこの歌が、雨讃歌のようにきこえる。

          ⁂

雨はいやおうなしに天から降つてくる。
「天」もまた〝あめ〟だ、

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雨 i 卯月廿一日

雨 i 卯月廿一日

火乃絵は雨が好きだ。
たぶんものすごく好きだ。

雨は時間をくれる。——

          ⁂

中学生のとき サッカーは好きだけど部活はきらひの火乃絵は 雨で練習や試合が中止になるのがうれしかつた といふより そもそも予定といふものがきらひの火乃絵は それが急になくなつたときぽつかりできる 雲の孔みたいの時間 をいつでも欲してゐた とおもふ

それはおそらく 予定といふ耐へがたいものをやり過

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