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リーダーの荷物を大解剖!~子ども会宿泊登山の装備を見てみよう~

 子ども会ぽけっとの年間活動の中に“大菩薩ハイキング”という活動があります。1泊2日かけて標高約2000mの「大菩薩嶺」の登頂を目指すというものです。大菩薩嶺は「日本百名山」にも数えられ、山頂付近からの富士山の眺めや開けた尾根道からの眺めはまさに絶景。
 しかし、登頂までには長く険しい道のりを超えなくてはなりません。そんな山行の疲れを癒してくれるのが道中にある山小屋です。子ども会で利用している山小屋は電気・ガス・水道などのライフラインの通っていない、まさにウィルダネス(=手付かずの自然)の中にある古き良き山小屋。山小屋には昔ながらのランプと薪ストーブ、夜になれば街の中では見ることのできない満天の星を見ることができます。毎年素泊まりでお世話になっているため、食事は自炊させていただいています。
 となると、1泊2日を生き延びるためには様々な資材や道具が必要になります。活動に参加するボランティアリーダーたちは、その資材や道具を担いでいくことになるわけですが…。そんな活動時に保護者の皆さんによく聞かれるのが「そんな大きな荷物の中には一体何が入ってるんですか?」と。そりゃそうですよね、だって60~70Lのリュックサックがパンパンになるくらいまで荷物が入っているのですから(笑)

子ども会でお世話になっている「丸川荘」ランプが似合うとても素敵な山小屋です。ひの社会教育センターの子ども会とはもう50年以上のお付き合いになります。
大菩薩嶺山頂より。リーダーが背負ってリュックサックは、重いものだと20kg超え…

 今回はそんなリュクサックの気になる中身をご紹介させていただきます!
“アウトドアテクニック”とはまた違った観点になるかもしれませんが、活動の舞台裏として一読いただければ幸いです。

以前の記事では、ハイキング活動時に必要な装備について紹介させていただきました。その記事の内容に則って、宿泊を伴う登山活動に必要な資材や道具を「食事・活動・衣類・緊急時」の視点で見ていきましょう!
(👇以前の記事を参照)

“食事”という視点

◎食料・ごはん
 1泊2日を山の中で過ごそうとすると、少なくとも「1日目の夕食・2日目の朝食」が必要になります。1回の活動で子どもと大人を合わせると約25人前後。25人分の食材というといったいどれくらいなのでしょうか。
“大菩薩ハイキング”時の鉄板メニューが以下の通りです👇
【1日目夕食】カレーライス・キャベツの浅漬け・オレンジ
【2日目朝食】おにぎり・豚汁・きゅうりの浅漬け・バナナ
このメニューに必要な材料が下の表になります。

2日間の食材表。根菜にお米、どれもズシりと重そうなものばかり…
この他にも調味料なども持っていきます。

25人分×2食となると、それだけでもかなりの量になります。実をいうとあのパンパンなリュックサックの約半分が食材なのです(笑)

1日目夕食と2日目朝食は自炊します。
サブリーダー(中高生)のメンバーも自炊のお手伝いをしてくれます。

◎行動食・おやつ
 2日目の昼食や行動中の食事・おやつについては、子どもたち自身にも持ってもらいます。行動食として持っていくのは、菓子パンやゼリー、魚肉ソーセージなど手軽に食べられるものを1つのジップロックにまとめて用意しています。2日目朝食のおにぎりを少し多めに作り、余ったものを昼食用のおにぎりにしています。そのような行動食やおやつも足りなくなってしまうと非常事態なので、その予備も資材として持っていきます。

◎水分
10月の活動とはいえ、長く険しい山行の中ではかなりの体内の水分が消費されます。水分は運動するうえでは欠かせない存在ですね。山の中では、飲み水を飲むことができる水場は限られています。山行中に水が尽きてしまわぬように、ウォーターボトルを持参し、予備の水分も持参するわけです。この“大菩薩ハイキング”の活動では、必ず1人のリーダーにつき1L以上の水を常備するようにしています。また、山行中は冷え込むため、保温ボトルにお湯を入れたものも併せて準備しています。

◎調理器具
山小屋で自炊する際に、ひっそりと貸りる物はカセットコンロのみ。あとの調理機材は自分たちで持参します。25人前の食事を作ろうとすると、わりと大きめの鍋が必要だったり…。その他にもおたまや木べらといった基本的な調理機材やカトラリー系のものは、リュックサックに詰めていきます。

ウォーターボトル、保温ボトル、調理器具の他に、食後の片付けに使う道具も持っていきます。

“緊急時”という視点

 とりわけ“大菩薩ハイキング”となると、場所によってはやや険しい道があったり、危急時において助けが来るのに時間がかかったりするなど、子どもたちを引率する活動としてはリスクが多く存在しています。そんな“もしも”に備えて、様々な装備を持参しています。

◎トランシーバー
 場所によって携帯電話が圏外になってしまうところがあるため、トランシーバーを持参し、連絡事項はトランシーバーを通じて行っています。

◎ファーストエイドキット
 登山というアクティビティでは、常に危険が隣り合わせ。擦り傷や足のマメなど細かな傷やケガは登山という活動では起こりやすいものです。もちろん、そうならないようリーダーたちは活動に臨んでいますし、ケガをしないことに越したことはありませんが、もしもの時に備えて必ず持参しています。

◎エマージェンシーシート・ツェルト
 ツェルトとは、緊急時用の軽量・コンパクトなテントのこと。使い方によっては、雨をしのぐタープ(屋根)になったり、寒い時に被ってしまえばエマージェンシーシート代わりにもなります。子どもたちの活動で「遭難」なんてことは絶対にあってはいけませんが、何が起こるかわからない自然の中ですので、命を守る大切な装備として必ず準備しています。
ちなみに実際の活動では、汗冷えしやすい山頂や尾根上での休憩時に暖を取るため使用しています。

◎ガイドセット
 このガイドセットの中には、登山用のロープやカラビナ・スリングが入っています。大抵の場合は山行中の危険エリア(崖・急坂など)を安全に通過するために使用しますが、その他にも、ケガをしてしまった人の搬送時やツェルトを建てる際にも使うことができます。適切な使用ができるように職員がトレーニングし、登山活動時には必ず持参するようにしています。

◎ランタン・ヘッドライト
 上述したように、山小屋には電気が通っていないため、夜は基本的に持参しているヘッドライトをつけて生活しています。山小屋の中においては、ヘッドライトの生活は不便なため、簡易ランタンを持参して室内の灯りを保っています。

◎ガベッジバック・トイレキット
 自分たちで持ってきたゴミは自分たちで持ち帰ることはもちろん、可能な限り山中に落ちているゴミを拾うようにしています。そんな拾ったゴミたちを入れる”ガベッジバック”も、子ども会の活動では必携アイテム。また、山のなかでは、特定の場所にしかトイレがないため、山中でも環境に配慮したトイレができるよう、緊急時用のトイレキットも持ち歩いています。

”もしも”に備えたアイテムたち。安全で快適な登山をできるようにするためには必要なアイテムばかり。
突然の雨にもツェルトがあれば安心。屋根にもなるし、暖も取れるし。

“衣類”という視点

 基本的に防寒具や着替えなどは、自分の荷物として子どもたち自身のリュックサックの中に入っています。しかし、山の天気は変わりやすいため、雨で濡れてしまったり、予想以上に気温が下がってしまい、自分で持ってきた防寒具だけでは対応することができなくなってしまったりする可能性も考えられます。それに備えて、予備の防寒具や雨具も準備するようにしています。

“活動”という視点

山小屋の中で子どもたちが楽しく過ごせるように、トランプなどの簡単なボードゲームなどの娯楽用品も持っていっています。電車やバスの待ち時間にも使えますね。また、夕食後の時間には“山小屋シアター”と称して、贅沢にもみんなで集い映画鑑賞をすることもあります。それに伴い、ポータブルプロジェクターを持っていくことも。

【左】就寝前にみんなで集って”山小屋シアター”なんて贅沢なんだ。
【右】休憩がてらみんなでトランプしよう!こんなゆったり時間も山小屋ならでは。

 ここまでは、1泊2日生き延びるために、そして子どもたちを安全に登山させるため必要ないわゆる“団体装備”になるわけですが、肝心なリーダーたち自身の荷物もそこに加わります。「食器類・防寒具・雨具・着替え・洗面用具・水筒」など、団体装備とは別に個人の装備も入れなくてはなりませんね。
 これらの装備をつめるとなると、適当なパッキングでは収まり切らないのが実情です。前日までに誰がどの資材を持っていくのか話し合い、リュックサックの中に隙間ができないようにうまくパッキングしていく技術がリーダーに求められます。そして何よりも、何十キロという重さを背負いながらも、長い距離を子どもたちと歩き通す体力と忍耐力が不可欠になるわけですね…。


 さて、今回は普段見ることのない活動の舞台裏として、リーダーの装備をちょっぴり紹介させていただきました。特に登山の活動は、他の活動に比べてリスクが多様に存在するため、装備も多くなりがちです。安全で且つ楽しい活動の裏側にはリーダーの奮励があることを少しでも知っていただけると幸いです。さぁ、僕も子どもたちに負けない体力を維持しないとっ!

記事:若泉わか(ひの自然学校サステナブル レスポンシビリティマネージャー)

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