「ニヒリズム」

文フリ東京29にて配布したショートショトです。
ヤマなし、オチなし、意味なしですが、、、よかったら呼んでください。
次は頑張って作ります。。。!

 窓から差し込む光で目が醒めることはなく、大きな携帯アラームの音がスヌーズし、何度も携帯を操作しむくりと起き上がる。この繰り返しでしかない。だけど、今日は携帯を押した途端に携帯の中に入り込んでしまった。この表現はおかしい…?
 うーん、なんて言えばいいのかな…
 僕は携帯のデバイスの中に入り込んでしまったんだ。
 この空間の歪みのような中で僕は浮遊している。景色はノイズというよりは色とりどりのオーロラのような綺麗な世界で、どちらが上で下かも分からないし、どこから始まりどこで終わるかもわからない無限の空間である。僕はよくわからないまま浮遊し、恐怖に怯えた。夢であって欲しいと思ったが、何度起きようとしても起きないというか、現状は変わらないのである。
 手足を動かしてみる。動きはするし進んでいる気もするが、景色が変わらないので移動しているのかすら分からない。時間の経過も分からない。僕はもう1日くらい経った気がしたけど、実際はどれくらいの時間が経ったのかも分からない。色が変わるわけではないし、オーロラのような無数の幾何学的な柄の空間は一定の動きをしている。
 そして、その場で眠るという概念が消失したように、眠ることもできないのである。
 永遠が一挙に虚無として襲いかかってくる。

 僕は死ぬことを考えた。まず舌を噛み切ろうとしたが、痛みの割に、深く噛み切る勇気もなく、噛み切ることはできなかった。次は首を絞めてみようと思った。自分の両手を使って首を絞めてみるが、これも絞めきれずに咳き込んで終わった。僕は死ぬ勇気すらない。
 永遠の中に閉じ込められた僕は、ただひたすらに時間が経つのを待った。
 僕の髪や髭が伸び、手足にシワが増えているのがわかる。何年経ったかは分からない。鏡もないので自分を見ることもできない。なんのための目なんだろう。そうすると、視力がどんどんと退化していく感じがする。目で何もみないことによって、不要なものと体が判断したのではないか。指と指の間には少し肉が付いてきて、ヒレのようになっているような気がする。僕が手で必死に前に進もうとしているからかもしれない。
 この醒めない夢は永遠に続くのかと思った。もう何年この中にいるのかも分からないからである。時間の経過の感覚はあるけれど、それを図るものが何もないのである。僕の体の変化以外に何かが変わったという「もの」はないのである。
 そんなある日、空間に速度が発生した。僕の体にかすかな重力を感じたのだ。僕はこの少しの重力に身を任せ、落ちていく感覚を得たことに途轍もない喜びをえた。僕は感覚を得た喜びとともに、チリとなって消えた。

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