祈願上手、でも口下手でごめん
えと……口に出してから下を向く。ことばが、どうしてもうまく出ない。
祈願上手、と巷では噂されていたが、口下手なのはいつまでも直らない。
「先生!」中年女の臭い息が迫る。つい顔をそむける。
「コアちゃん、本当に帰ってきますよね!?」
迷子猫を見つけてほしい? 神頼みかよ、オメー、隣近所這いずり回って捜したんかよ? 心の中では嗤っていた。でも、私が祈ればまず間違いはない。先週この女が泣きついた時に頂いた金額分は真剣に祈った。猫に罪はない。いくら、高価な純血種でも。
「ロシア