私はスーパーによく行きます。週4ぐらいは行ってる気がします。

私は魚を食べることが好きなので、その日の魚売り場にある魚のほぼ全部に目を通します。パトロールですね。毎回毎回見ているので、例えば、冷凍が多いメカジキの切り身が、たまに「生の」切り身だったりすると、喜びを感じます。

私が普段使いしているスーパーは「OKストア」になります。OKストアの魚売り場は、年間を通して置いてある魚の種類がほとんど変わりません。私は魚をまるごと料理することが多いので、魚をまるごと売っている棚に興味があるのですが、大体おいてあるのは、イサキ、メバル、チダイ、アジ、イワシ、ぐらいでしょうか。

魚好きな私としては「ラインナップ少な！」と思うのですが、これらの魚は確実に美味しい魚なんですよね。

イサキなんて、地味で目立たない真面目な陸上部、みたいな魚ではありますけど、年間を通して抜群に美味しい魚です。スーパーで売ってる魚を捌いて刺し身にはしませんが、居酒屋でイサキの刺し身があったら間違いなく注文します。旬のイサキに勝てる魚はいなんじゃなかろうかとすら思います。

私はイサキを買ってくると、いわゆる普通の日本的な甘い煮付けにしたり、鶏ガラスープやオイスターソースを使って中華風煮付けにしたり、塩と昆布ダシだけで煮るマース煮にしたりします。

メバルも美味しい魚ですが、イサキの倍ぐらいの値段がするのに、大きさは半分ぐらいだったりするのであんまり買いません。私の家では子供たちが競って魚を食べるので量が必要なんです。

そして、ここからが本題になります。

私はマイナーな魚が売れてない事にすごく悲しみを感じるんです。

私が行くスーパーは、OKストア、サミットストア、フジ、オオゼキなんですが、サミットやフジやオオゼキはOKストアよりも魚のラインナップが豊富です。

そんなOKストアにも、たまに魔が差したかのように変わった魚が売られていることがあります。例えば、アブラツノザメの切り身。サメ肉は他の魚と比べてもかなり安く売られているのに、全然売れてない状況をしばしば目にします。

サメの肉はアンモニア臭がして不味いと言われていますが、アブラツノザメは美味しいサメです。私はサメ肉を見つけるといつも買います。こんなに美味しいのに、何でこんなに売れ残ってるんだろうと悲しくなります。

私の見立てですが、今まで食べたことがない魚や、調理の仕方が分からない魚は、買われないんじゃないかと思っています。だから、もっと店頭で魚の説明や料理の仕方なんかを出せばいいのにと思います。勇気を出して買い付けてきた人の心意気を、手書きで書いて欲しいと思うんです。何なら私が書きましょうか？とすら思います。

一方で、国民的アイドルである、サケ、タイ、カレイなどの切り身が隣に置いてあります。これらのアイドルに説明はいりません。顔と名前が一致する国民的な有名人だからです。

そんな有名人たちがゴロゴロしているところで、実力はあるのに無名のアブラツノザメがどうやったら売れるのか？「説明しないことで逆にインパクトを残して売る」みたいな作戦は絶対にあり得ません。切り身はテレビの向こう側ではなく、家庭に入ってくるものですから。もっと言うと、口を通して胃袋に入ってくるものですから。

だから、説明を尽くすべきだと思います。どこで獲れたのか？どんな形をしているのか？地元の人はどんな食べ方をしているのか？どんな料理に合うのか？などは最低限見せないと売れないと思うんです。

私は監督業を仕事にしていますので、いろんな役者さんからの売り込みもあります。その中に、文章だけで熱い思いを書いてくださる方がいますが、プロフィールもなければ、参考写真や参考映像、何らかのネットのリンクも無かったりします。それと同じですね。判断のしようが無いんです。

先日、サミットストアに「サメガレイ」と書かれた刺し身が売っていました。サミットストアは魚に関してはかなり挑戦的なラインナップなことが多いので、好きな魚売り場があるスーパーのひとつです。私は食べたことの無い魚の刺し身を食べる事に無上の喜びを感じるので、サメガレイという表示を見た時に「うぉぉぉーっ！」と叫びました。心の中でですけど。スーパーのカゴを持ちながら。でも、このサメガレイが大量に売れ残っていて、すべて200円引きになっていたんです。

そして案の定、サメガレイについての説明は何もされていませんでした。見た感じ、いかにも美味そうで、実際に食べてみたらメチャクチャ美味しかったのに、本当にもったいないと思いました。特に名前の中に「サメ」という文字が入っていることで、さらに売れない圧力が働いたに違いありません。

「サメガレイは深海に住んでいるカレイの仲間で、市場に出てくる事はまれですが、その身には甘みのある脂が乗っており、歯ごたえも良く、非常に美味と言われている魚です。」というメモが貼ってあったら、もう少し売れたんじゃなかろうかと思います。

私はスーパーに文句を言いたいのではなく、もっと多くの人に、もっと多くの種類の美味しい魚を知って欲しいと思っているんです。

日本で生まれ育つと、魚が美味しいのは当たり前に思ってしまいますが、たくさん魚は獲れるのにその魚が美味しくない国もあるんです。日本の周りには、ことごとく美味しい魚が住んでいて、私たちはものすごく恵まれた環境に住んでいますから。

あ〜、刺身食べたい。

（写真は、コバンザメを捌いて、昆布締めにしているところです。）