見出し画像

AfterEffectsが映像の教科書だった

私は学校で専門的に映像の勉強をしたことがありません。

映像の勉強は、独学で始めました。大学生の頃に3Dのソフトを買って遊びで使っていたので、映像の仕組みは何となくわかっていましたが、本格的に仕事になるレベルで映像の勉強をしたのは、グラフィックデザイナーをやっていたライトパブリシティを辞めてからです。

学生の頃からAdobeのIllustratorやPhotoshopは普通に使えていましたが、会社を辞めてすぐに買ったのはAfterEffectsでした。確か単品で10万円以上したかと思います。映像というと、FinalCutProだったりPremiereという編集ソフトをイメージする人もいると思いますが、グラフィックデザイナーだった私と相性が良かったのはAfterEffectsだったんです。

会社を辞めて仕事も無く、お金も無いので遊びにも行けず、でも時間はたっぷりあったので、AfterEffectsのマニュアルを1ページ目から読み込みました。ソフトを立ち上げて実際に使いながらマニュアルを読み込むんです。

マニュアルには映像の基礎が書いてありました。フレームレートや解像度、フィールドやアスペクト比、ブラーのシャッター角度やドロップフレーム、などなど。まさに映像技術の教科書でした。

Adobeは教科書としてマニュアルを作ってるのではなく、映像の基礎が分からないとAfterEffectsを使えないと思って、その様な基礎的な事をマニュアルに入れたんだと思いますが、結果的に本当にリアルな教科書になりました。

特に仕事もなく、バイトをするでもなく、半年ぐらいかけてAfterEffectsをマスターしました。マニュアルを読み終えた頃には、1〜2分程度の映像を4本ほど作ることが出来ました。とにかく時間がたっぷりあったので、ブラーのかかり方の検証だけを数日かけてやったりと、丁寧に作ることが出来たので、4本の映像は私のデモリールと呼べるようなものになりました。

貯金も底をつき、羽田空港で夜中にやる荷物の仕分けのバイトに申し込もうと決意したのと同時に、たまたまその4本のデモリールを見た知り合いのCM制作会社のプロデューサーから仕事が入りました。一見、「偶然にも」「奇跡的に」というタイミングなのですが、じっくり時間をかけて自分を紹介できるデモリールがあったからこそ、その様な出会いが実現したんだと思います。映像を作ったことも無い若者に、映像の仕事をお願いする大人はいませんから。

そうして私はCM業界というところに入っていきました。

CM業界に入ったと言っても、すぐにCMディレクターになった訳ではありません。その当時、文字などが動くモーショングラフィックがもてはやされていた時代で、私もそういう仕事をたくさんしました。AfterEffectsをバリバリに駆使して仕事をしました。グラフィックデザイナーでAfterEffectsを使える人が全然いなかった時代でもありました。ある程度デザインが出来て、それを動画として動かせる、ギャラの安い若者だったので、仕事がバンバン入ってきました。

ギャラが安いと言っても、いまから20年近く前で、リーマンショック前でもあったので、テロップを動かすだけで、10万、20万、50万などの仕事ばかりでした。CMを編集している編集室に行って、手書きで文字を書いて、とっ払いで10万円もらったりもしてました。今となっては考えられない良い時代でした。

極端に言うと、あの時、AfterEffectsではなく、FinalCutProやPremiereを買っていたら、今の私は無いのかもしれません。AfterEffectsは本当に思い入れの強いソフトウエアです。

サポートして頂けたら、更新頻度が上がる気がしておりますが、読んで頂けるだけで嬉しいです!