見出し画像

虫好きが増えますように

私が子どもの頃は、みんな競い合うように虫を採っていました。

と書くと、いかにも形になる文章が書けそうな気がするのですが、よくよく思い返してみたら、私と同等かそれ以上に虫が好きな友達は思い当たりません。私の子どもの頃は、虫を採ることぐらいしか遊びがなかったのかもしれませんし、昔の子どもが、とりわけ虫が好きだった訳でも無い気がします。

長男が産まれてから、あらためて虫採りと向き合うことになりましたが、虫がいるであろう場所に競合相手が全くいなかったです。虫はたくさんいるのに、虫を採りに来ている子どもがいないから採り放題なんです。おかげさまで、親子でゆっくり虫採りをすることが出来ました。

何となくの肌感覚なのですが、今は虫の「排除」がかなり進んでいる気がします。ジャポニカ学習帳の表紙から虫が消えた事件には衝撃を受けました。親や教師が「気持ち悪い」と言ってるという理由との事でした。今ではジャポニカ学習帳の表紙は花ばかりです。虫好き派からの反論としては「花を見て死を思い浮かべる子どもがいたら可哀想だろ」と、トイレの中でつぶやく程度しか出来ません。

一方で世の中では「多様性多様性」とうるさいほど言われています。多様性を認めるというのは「みんな仲良く」ではなく、「自分と関係あろうが無かろうがその存在を対等に認める」が基本なんだと思います。でも、子どもたちには多様性が大事と言っておきながら、一方では「気持ち悪い」と言って虫を排除しています。多様性を学ぶのに最適なものが、身近にいる虫なのにです。

ジャポニカ学習帳の件は、「商売」という視点から見るとしょうがないと思いますが、「教育」の隣で商売しているのに残念です。

「気持ち悪い」という感覚はとてもよくわかる感覚です。私はとにかく血に関するものが苦手で、採血だろうが予防接種だろうが、ベッドで寝かせてもらってやってもらいます。血のイメージでたまに貧血を起こすからです。子どもを予防接種に連れて行っても、針を刺すところは見れません。中学生ぐらいの頃、手を滑らせた彫刻刀が手首の近くに刺さって、血が吹き出たことがあり、その時は気絶しました。こうやって血の事を書いていると、指の力が抜けて、キーボードが打ちづらくなります。だからジャポニカ学習帳の表紙が、「注射針が刺さって血が抜かれている皮膚」だったら買わないと思います。

虫が嫌いな人の中にも、そういうレベルの人たちがいるのも知っています。蛇腹の形を見ただけで気が遠くなってしまったり、ウジ虫を連想させる、白くて小さいものが大量にあるのが嫌いな人もいます。それが工場で作られた人工的なものだとしても。恐怖症のレベルだと思います。

だから「虫嫌いな人はおかしい」などとは、全く思ってないのですが、そこまで嫌いじゃないのに「キャーッ!」って言わないで欲しいのです。特に親や教師の様に、子どもたちの目の前にいる大人が。子どもが虫嫌いになるのは大人が「キャーッ!」と言うからです。

家にゴキブリが出るたびに「お、ゴキ様が出たね。今日あたり良いことあるかな。」と親が言っていたら、子どもはゴキブリを愛おしく感じると思います。食卓にタコが出るたびに親が「キャーッ!」と叫んでいたら、子どもはタコに恐怖を感じるようになると思います。

せっかく身近に「虫」という子どもたちにとっての、素晴らしき仲間たちがいるのに、もったいないと思うのです。

たまにスズメガの巨大な幼虫を見かけることがあると思います。人差し指ぐらいの、緑だったり黒だったり茶色だったりする、毛が生えてない、お尻からトゲみたいなのを出してる幼虫です。あれはイメージと違って、毒はないですし刺さないので、見かけたら勇気を出して、掴んでみると良いと思います。嫌がって体をくねらせますが、手のひらに乗せて観察すると本当に可愛いんです。道に3〜5mmの黒いものがポロポロ落ちていたら、それがスズメガの糞で、その糞の上の植物に、スズメガの幼虫がいることがあります。

そういう経験を重ねて、虫好きが増えてくれるといいなあと思います。いきなりハードルの高い例を出しましたが。

ちなみに虫にとって人間の体温は、やけどするほど熱いらしいので、ちょっと観察したらすぐに解放してあげてください。

サポートして頂けたら、更新頻度が上がる気がしておりますが、読んで頂けるだけで嬉しいです!