長野県、飯山市街から野沢温泉に行く途中の山の中に、北竜湖という小さな湖がある。私の故郷の近くにある、私の好きな所。

三方を山に囲まれ、空から見るとハートの形をしているところから、最近は恋愛成就の湖と言われているんだそう。

湖畔のそばに道路があって、すぐに湖畔に降りられる。なだらかなその斜面はそのまま湖に入っているので、岸部で水を近くに感じることができる。

対岸に目をやると、弁天島が見える。静かにたたずむ湖面には、木々や山が映り、神秘的でもある。

結婚する前に「私の好きな場所だよ。」と主人を案内して湖の周りを歩いた。その時から主人にとっても好きな場所になったんだって。

子供たちが小さい頃は、両親や兄家族と一緒に食べ物をもって北竜湖に遊びに行った｡白鳥や、ヘリコプターなどの形のボートがあって、乗りたいボートが子どもたちそれぞれにあったのも懐かしい。

天気の良いときは、それはとても気持ちの良いものだけど、ガスが周りの山を隠し、湖だけを深い紺色にして見せたり、雪が降った時の景色も美しい。

結婚する前に一年間　実家で過ごしていたある日のこと。その日も一人で出かけ、ボーっと湖を見ていた。突然、対岸の山の上の方から白い霧のようなものが下りてきて、それがだんだん湖に近づき、やがて湖岸と湖面の線をぼやかしていった。

それは雨で、白いカーテンを広げたような感じで湖面を渡ってこちらに向かってきた。湖上に雨のつま先を見ているようだった。そして、ついに私の周りも白くなり、すぐ足元の水もかすかに黒く見えるだけとなった。

今も覚えている、なんとも不思議なひと時だった。

湖のほとりにキャンプ場がある。満月の夜、キャンプをしたら、どんなにかきれいだろうと思う。キャンプでなくても、そばに温泉付きの宿泊施設があるのでそこに泊まってもいいかな。

でも、誰もが見れて、誰もがきれい！と感動する季節がある。

春の菜の花の咲くころだ。

湖の水が増え、湖畔の柳の木々がまるで水の中から生えてきたかのよう。新緑の柳の木々、黄色の菜の花、それに湖。

誰もが名カメラマンになれるはず。

ずっと前、両親の金婚式を野沢温泉の旅館で祝い、翌日、北竜湖に立ち寄った。その時も菜の花が咲いていて、みんなで写真を撮った。みんなが揃ったのは、あの時が最後だった。

ハート形の小さくてかわいい湖、北竜湖。訪れたみなさんが幸せになりますように！