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可愛くなったおじいさん、セーターは、履けないよ!

おばあさんが亡くなってから、認知症が進んでいくおじいさん。でも、だんだん可愛くなって楽しい思い出を残してくれた。

温泉で自分の服が分からなくなった頃から、だんだん服を着る、ということも分からなくなっていったおじいさん。

ある朝、着替えをさせようとおじいさんの部屋に行くと、おじいさんが椅子に座って一生懸命に何かを履こうとしている。

おかしいなぁ?と不思議そう。
見ると、セーターの胴の方から、セーターを履くように、両袖に両足を入れていて、そして、袖口から足が出ないので、困ったなぁと言っている。
立とうと思っても長さがないので、腰まで上がらない。

ある朝は、スラックスを頭から被って、手を入れる場所が無くて困っている。

おじいさんが一生懸命なだけに、申し訳ないけど、その姿がおかしくて、笑いが止まらない。
本当に思いがけないことをして、笑わせてくれる!!


そんなことが何回かあったある日、お陽さまが暖かくて気持ちの良いお天気。
デイサービスがない日で、おじいさんは何をしてる?と
おじいさんの部屋を覗くと、おじいさんは庭に出て、植木に水やりをしていた。
しかも、スラックスを脱いで、下はスッポンポン!
上がセーターを着て膨らんでいるのに、足が細くて、小さい子を見ているようで、その姿が可愛かった。

何かで読んだことがある、服を脱ぐのは変な意味ではなくて、気持ちが良いからだと。
そうか、おじいさんは、今、気持ちがいいんだな、そっとしとこう。

お昼ご飯で、呼びに行くと、おじいさんはこたつの中に潜っていた。
出てくると相変わらず、スッポンポン!
なんか、スースーしとるなぁ〜って。
(そりゃ、そうでしょうよ)

おじいさん、服は?と聞くと、
服?さぁ〜?ワシは知らん。
ベッドの上に脱ぎ捨ててあった服を着せると、
あきちゃんは、なんでもよう知っとるなぁ〜と、褒めてくれた。ありがと、おじいさん!

その後、風邪をひくこともなく元気なおじいさんでした。

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